上司を説得できる企画資料の作り方講座

上司を納得させるための企画

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上司を納得させるための企画

ここまでで述べたような要素を取り入れた、良い企画書の例を見てみよう。

図:EC/ネットショップ構築に関して上司を納得させられる良い企画書の例
図3 EC/ネットショップ構築に関して上司を納得させられる良い企画書の例

正直なところ、今回のネットショップ構築の企画は、1枚だけでは説明が不十分である。収益を生む施策となるため、記述するべき内容が本来は多岐にわたるが、まずは、重要なポイントのみを1枚に記述した。詳細は後で説明する。

まず、課題と目的を書く。そして現状データの説明だ。楽天やヤフーショップの売上は、現在何もせずとも若干ではあるが増加傾向にある。そして月間のユニークユーザー数やコンバージョン数なども明記する。

なぜ増加傾向にあるかは、海外食品の度重なるネガティブなニュースにより、国産商品の需要が喚起され、結果的に以前から国産をアピールしている商品が注目されているからだ。

そこで、楽天ユーザーとヤフーユーザー以外の顧客を獲得するための施策として、自社のネットショップ構築その後の売り上げアップ施策を記述する。この施策の内容は重要だ。ネットショップは立ち上げただけではまったく意味がない。ユーザーは放っておいてはネットショップに来ない。どのようにして集客を行うかがポイントなるため、それを明確に記述する。

ここでは、SEO内部施策による集客をまず記述した。SEOの企画については、SEO対策の予算をゲットできる企画書を読んでほしい。キーワードを決めてシミュレーションを行うことで、どれくらいの集客が現実的かを把握することが可能だ。

次に、自社ですでにメールアドレスを収集しているユーザーが2万人いるため、そこに対してのメルマガを実施することを明記する。これがあるのとないのとではかなりの差がでるため、ユーザーが確保できている場合は必ず利用しよう。

また、販売管理システムを入れることで人件費や手間が減るのであれば、それも立派な利益確保の施策なので、これも具体的に記す。

そして、重要となるのが「成功へのカギ」だ。ここでは、まず、Yahoo!ショッピングに出店しているショップの月間ユニークユーザー1200人を目標とする。上記のSEOのシミュレーションにより、それが非現実的でないかどうかは必ず確認する。

そしてメルマガ配信である。ここでメルマガの落とし穴について話そう。メルマガ会員の質、ユーザー層、ユーザーカテゴリーによってかなりの幅があるが、新しくできたネットショップへの新規誘導および販売目的で、1万人に対してメルマガを配信した場合、一体何人の方が購入に至ってくれるだろうか。これを「5%」「3%」「1%」など、一桁パーセントのコンバージョン率で想定・算出する例をよく見かける。そもそもそれが失敗の要因につながる。私の経験からすると、特殊な場合を除いて、購入率(コンバージョン率)は0.03%~0.08%程度だと考えていい。それ以下のコンバージョン率の場合も実際にある。ここでいう特殊な場合とは、かなりアグレッシブな価格設定をする場合や、ソフトウェアのアップグレードのように通常よりも高いコンバージョンが見込まれる場合だ。メルマガ配信のみに多大な期待をすると、それが失敗したときの影響は大きい。今回は、メルマガ1回の購入率を0.05%と想定して、週1回、4週間にわたり実施することで、2万人の読者から月間40コンバージョンを得ると想定した。

こうすることで、ダメな企画書と比べた場合に、現状データの記述なども含め、より具体的な内容となっていることがわかるだろう。

より精度の高い企画立案のために

前述したが、企画の精度を上げるためには、より詳細な戦略や具体的内容を記載する方がいい。究極には、「ネットショップを立ち上げる」企画書ではなく、「ネットショップを成功させる」企画書となっていることがベストだ。

そのためには、良い企画書の構成要素の中の“ネットショップ構築とその後の売り上げアップ施策”と“成功の指標”の部分をさらに具体化していくことだ。

ネットショップを成功させるために考えなければならないことは、集客だけでなく、

  • 商品のネーミング
  • メインとなるメッセージ
  • 商品の写真
  • 生産者や原材料の写真
  • 魅力あるページ作り
  • トップページ構成
  • 商品ページまでの導線
  • ユーザーの囲い込み

など、多くの要素がある。それらの項目において、ターゲットを考慮して具体的に記すことで、より精度の高い企画書にできるはずだ。

ネットショップ成功のためのノウハウについてはWeb担の他の記事でも紹介されているのでそれを参考にしてこの企画に厚みをもたせるといいだろう。

企画の実現を念頭におくこと

本コラムは、「上司を説得できる企画資料の作り方」としているが、企画書とは単に直属の上司だけを説得できればいいものではない。このコーナーでは第一段階として避けて通れない上司へのプレゼン・説得に絞って書いているが、その後には当然、企画の実現というさらに高いハードルが待っている。

企画の実現性がなければ上司を説得することはできない。そのための現状分析であり、そのためのROIである。企画が実現してそれが実際に成功するか失敗するかは誰もわからないが、Web担当者の方は、その企画を自分が中心となって実施していくことをイメージして、成功させるためには何が必要かを常に考えて企画を立案してほしい。そうすれば、自然と何を考え、何を立案すべきかわかってくるはずだ。

それを本コラムの考え方や手法に当てはめていけばいい、それが上司を説得できる企画資料となるはずだ。

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