メール配信の基盤となる配信システム
ASP型とサーバー導入型は何がどう違う?!
この記事では、特集の第2章で取り上げたPDSサイクルの、PlanからDoフェーズにかかる「システム設定」「システム運用」に該当する内容を含んでいる。理想としては、戦略の設計のうえに成り立つ作業フェーズのため、連載の始めから記事を読み進めてほしい。
ただメール配信を行うのであれば、Outlook Expressなどの日常業務の中で使用しているメールソフトでも可能である。しかし数千~数十万件という配信リストへ、確実かつ事故なくメール配信を行い、その結果を取得し効果検証を行うことを考えるのであれば、専用のメール配信システムの利用が必須となる。そこで、今回はどのようなメール配信システムがあり、どういった視点で自社に最適な配信システムを選べばいいのか、そのポイントについてみていこう。
メール配信システムはASP型とサーバー導入型が存在
メール配信システムは、大きく2つの種類に分類できる。1つはASP型、もう1つはサーバー導入型だ。日常的に使うメールソフトを利用する手もあるが、ここでは取り上げない。
ASP(Application Service Provider)とは業務用のアプリケーションをインターネット経由で顧客にレンタルする事業者のことを指す。顧客はブラウザなどを通じて、ASP事業者が保有するサーバーにインストールされたアプリケーションを利用する。ASP型のサービスというのは、そもそもメール配信に限ったことではなく、今日ではその他多くの分野で利用されている。一方、サーバー導入型とはその名の通り、自前で配信システム用のサーバーを構築し、運用していくことを意味している。
以下の表は、メール配信システムでのASP型とサーバー導入型の特徴をメリット・デメリットに分けてまとめたものである。それぞれに関して詳しくみていくことにしよう。
項目 | ASP型 | サーバー導入型 | |
---|---|---|---|
機能 |
|
| |
費用 | 初期 | 初期費用が比較的安価 | 初期費用は比較的高価で負担が大きい |
運用 (サーバー管理) | 課金体系に応じた支払いが定期的に発生する。保守管理はASP業者が行ってくれる | 外部に支払うシステム運用費は比較的安価だが、保守管理を自社で行う必要がある | |
セキュリティ | 自社のポリシーではなく、ASP提供会社のポリシーに従う | 自社のセキュリティレベルに調整可能 |
機能
まずASP型は、比較的更新がしやすい共有型システムのため、システム改良を随時行っているようなASPの場合、常に最先端の機能を利用できるというメリットがある。多くの利用者によるフィードバックが、改良を促進するという面もある。反対に、デメリットとしてはASPが提供する機能しか利用できない点があげられる。サーバー導入型のメリットともなる自社独自のデータベースとの連携など、独自の要件に完全に対応させることは難しいといえる。
その一方で、サーバー導入型の最大のメリットは、自社のリソースに合わせて、必要な機能をすべて実装できる点であろう。初期費用や管理費用を抑え、広く、多くの企業に利用してもらうことを前提としたASP型では決して真似できない点である。デメリットは、サーバー導入型は、文字通り、サーバーへパッケージの導入を行うため、システム更新には個別のバージョンアップが必要となること、ハードウェアの運用管理を自社で行う必要があるといった課題がある。
費用
続いて費用面をみていこう。初期費用と運用(サーバー管理)費用の両面から検証していく。ASP型の場合、専用のソフトウェアを購入する必要がないため、初期費用は比較的安価であることが多い。一方、自社サーバー導入型は、ハードウェア・ソフトウェアの初期導入費やサーバー費用が必要となり、ASP型と比べると初期費用は高くなる。
では、運用(サーバー管理)費用はどうだろうか。ASP型はASP事業者に対し、料金体系に応じた運用費用を支払う必要がある。料金体系はデータベースのレコード数に応じた従量課金から配信通数に応じた課金まで幅広く存在している。一方、サーバー導入型は社内にシステムを構築しているため、外部会社へ運用費用を支払う必要がない。ただし、サーバー運用費は自前で供給する必要があり、サーバー保守のための人的なリソースが必要となってくる点には注意したい。また、基本的にバージョンアップは別料金になるので、保守契約でバージョンアップに対応できるのかなど、内容をしっかりと確認しておこう。
セキュリティ・サポート
最後に肝心なセキュリティやサポート体制だ。ASP型は、ASP事業者がサービスの稼働状況を監視しているため、メンテナンス費用が必要ないのがメリットだ。一方で、何かトラブルが発生したとしても、自社で対応できないので、サポート体制がどうなっているかは必ず確認しておくことだ。また、メールアドレスという個人情報をASP事業者のサーバーへ保管する(社外で個人情報を管理する)ため、社内のセキュリティレベルによっては導入が困難な場合も考えられる。
自社サーバー導入型の場合、自社のセキュリティレベルに合わせた管理が可能だが、定期メンテナンスが必要となる。自社管理ゆえに、人的リソースさえ確保できれば(対処可能な)トラブルにはすぐ対応できるだろう。また、多くのASPは、サポート専用の窓口を設けており、多くの企業をサポートしているので非常時でも対応がスピーディである。サーバー導入型は、基本的に社内で対応する必要があり、場合によっては対応に時間がかかることもあるだろう。
最適な配信システムと提供会社を見極めよう
以上の結果を踏まえると、導入しやすさという点で言えば、マーケティング担当者のみでサービス利用が可能なASP型に軍配が上がる。サーバー導入型はマーケティング担当者だけではなく、システム部門も巻き込み導入を進める必要があるからだ。導入・運用時の作業工数の軽減やサポート体制を考え、少ない人手でコンパクトにやろうとする場合はASP型のほうがサーバー導入型に比べて優位だといえる。
一方、数百万件以上の大量配信を連日行うような場合は、運用コストやセキュリティという点から考えて、サーバー導入型の方が優れている。もちろん、配信に耐えうるスペックのサーバーを用意する必要はある。また、社内基幹システムが構築されていたり、セキュリティポリシー上、個人情報の管理を外部委託することができなかったりする場合も自社サーバー導入型の方が適しているだろう。
最後に代表的なメール配信システム提供会社をリストアップしたので参考にしていただきたい。
サービス名 | 提供会社 | 初期費用 | 月額費用 |
---|---|---|---|
AltoBase|ASP | 株式会社アルトビジョン | PC向け配信:10万円 Mobile向け配信:20万円 (3キャリア) | 2万5,000円~ 33万円(レコード数による) |
AltoBase|SPOT | 0円 | 2万円+1通あたり1円 | |
MailPublisher Mobile | エイケア・システムズ株式会社 | 5万円 | 1万5,000円~ |
MailPublisher Smart | 別途見積もり・問い合わせ | 別途見積もり・問い合わせ | |
WEB CAS ASP | 株式会社エイジア | CSVインポートメール:3万1,500円 DB連携メール:10万5,000円 | 1万500円~ 16万8,000円(レコード数による) |
Synergy!POEM | シナジーマーケティング株式会社 | 3万円 | 1万円~ 17万円(ユニークアドレス数による) |
AUTOBAHN | トライコーン株式会社 | 10万円 | 5万円~ 35万円(レコード数による) |
スパイラル | 株式会社パイプドビッツ | 別途見積もり・問い合わせ | 別途見積もり・問い合わせ |
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