メールマーケティング基礎講座

メールを活用してユーザーとコミュニケーションを取る3つの施策―メールマーケティング特集(3)

顧客を飽きさせないコミュニケーション
多彩なメールで優良顧客を囲い込め

この記事では、前回の記事のPDSサイクルの中のPlanフェーズにあたる、「コミュニケーション戦略立案」の部分を掘り下げて解説していく。理想としては、前回の記事を読み、メールマーケティング全体の流れを理解したうえでこの記事を読み進めていってほしい。

図1 コミュニケーション戦略立案
この章で説明する範囲はPlanフェーズの中の「コミュニケーション戦略立案」である

メールが持つ特性やメール配信に関する基礎知識を持ったうえで、次に考えなければならないのが、メールを使ってユーザーとどのようにコミュニケーションを図ればいいのかということである。メールコミュニケーションのプランニングを考えるときに重要なのは、ベース、スポット、フォローの3つのプログラムを組み合わせ、長期/短期、企業やサービスのブランディング/プロモーションのバランスを取ることだ(表1)。

表1 メールコミュニケーションのプランニング ユーザーに対してどのようなアプローチをするかでメールの内容が大きく変わってくる
プログラム目的と展開
ベースプログラム
  • 企業やサービスに対する安心感、信頼感の醸成を目的とする。
  • 商品、サービスの告知は少なめにし、読み物として役に立つ、また、おもしろい内容のメールを長期的・継続的に配信する。
スポットプログラム
  • 商品、サービスのプロモーションを目的とする。
  • 各商品、サービスに興味のあるユーザーをどのように抽出するかがポイント。
フォロープログラム
  • 新規登録や購買をトリガーに商品やサービスを利用してもらった人のフォローを目的とする。
  • 新規登録者や商品購買者に知りたい情報、購買した商品に関連する情報などを配信し、満足度向上、クロスセル、アップセルにつなげる。

以下、3つのプログラムの違いや、効果的な活用法について紹介していく。

ベースプログラム
―長期的なブランディングを目的としたメール

ベースプログラムは、ユーザーに対して、企業やサービスに対する安心感・信頼感を醸成することを目的としたメールである。

商品・サービスの告知は少なめにし、読み物として役に立つ、また、面白い内容のメールを長期的・継続的に配信することを心がけたい。あくまで目安だが、ベースプログラムの場合、コンテンツ内のブランディングとプロモーションの比率は、ブランディング:プロモーション=8:2とするのがよいだろう。ただし、ECにおけるメールでは、ベースプログラムであったとしても商品のプロモーション情報は掲載してもいいだろう。

メーカーが定期的に配信しているメールマガジンを例に説明しよう。単純に新製品の発売を告知して訴求するのではなく、その企業の社長のコラムや製品担当者が語る開発秘話、広報担当者の製品レビューなどそのメルマガだけを読んでも十分に楽しめるコンテンツが効果的だ。なおかつ読者がその企業に興味を持ってもらえる内容を含ませ、ファンになってもらうことを目標にすると良いだろう。

スポットプログラム
―単発のプロモーションを目的としたメール

いくらユーザーとの関係構築ができたとしても、メールを配信する最終ゴールは、関係構築ではなくやはり自社の商品・サービスを利用して(購入して)もらうことのはずである。

そのために、ベースプログラムでユーザーとメールコミュニケーションを行う関係を築いた次のステップとして、スポットプログラムを配信していく。スポットプログラムは、商品・サービスのプロモーションを目的としたメール配信だ。

コンテンツ内のブランディングとプロモーションの比率は、ベースプログラムとは異なり、ブランディング:プロモーション=2:8でプロモーション中心とする。スポットプログラムはサービス・商品のプロモーションが目的のため、各商品・サービスに興味のあるユーザーをどのように抽出するかがポイントとなってくる。

日々のブランディングの延長線上で、ユーザーをセグメンテーションしたスポットプログラムを配信し、商品・サービスの利用促進を狙うことが重要になってくる。過去に、メルマガから商品を購入したことがあるユーザーやベースプログラムとして送付している日々のメルマガをアクティブに読んでいるユーザーなどは、効果的なセグメント対象と言えるだろう。

フォロープログラム
―新規登録/購買などを起点としたメール

フォロープログラムは新規登録や購買をトリガーに、商品やサービスを利用してもらった人をフォローすることが目的となる。

新規登録者へのフォロープログラムの例として、保険の資料請求後に配信されるメールを例に説明してみよう。資料請求者は自社の保険商品への興味・関心を持っているため、その資料請求者へ週1回の頻度で、全3回のフォローメールを送るとしよう。その場合、たとえば次のようなフォローメールを送り、成約への後押しをするのである。

  1. 1回目では、保険へ加入することの必要性を理解してもらうことを目的として、なぜ保険に加入することが必要なのかという内容を中心に訴求する。
  2. 2回目では、他社ではなく自社の保険商品を選んでもらうことを目的として、自社の保険商品のメリット、資料請求者に最適な保険商品の選び方などを訴求していく。
  3. 最後のフォローメールとなる3回目では、実際に自社の保険商品を選んでもらう際の注意事項などを記載し、スムーズに申込みをしてもらうことを目的とする。

次に、購買を起点とするフォロープログラムとして、主にECサイトで活用されているステップアップメールを例に説明してみよう。あるECサイトで化粧品を1つ買ったと仮定しよう。その場合、次の例のようにして、利用者の立場となって知りたい情報や購買した商品の関連情報などを配信していくことで、満足度向上やクロスセル・アップセルを狙っていく

  1. まずは商品購入時点で、注文した商品や金額、配送予定時間などが記載された内容確認のメールを配信する。一般的なECサイトであれば自動返信機能で対応している場合が多い。
  2. その後、商品が配送されるタイミングを見計らって「ご注文の商品は届きましたでしょうか」、「まだお手元に届いていない場合は○○までご連絡下さい」といったフォローのメールを配信する。
  3. さらには、継続して商品を購入してもらうことを目的として、買った商品が使い終わるタイミングで次の購買を促すメールを配信する。化粧品のような日用品で定期的に購入するようなものには効果的な手法だろう。
◇◇◇

メールコミュニケーションでは、ベース、スポット、フォローという3つのプログラムをうまく配置し、コミュニケーションプランニングを検討していこう。現在配信している自社のメールマガジンは、このフレームワークのどれに該当するだろうか。自社のメールマーケティング施策を振り返るときに、ぜひこういった視点を加えてみてほしい。

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