思わず読みたくなるようなメールのポイント
「ユーザー視点」で読み手側の思考を汲みいれよう
この記事では、特集の第2章で取り上げたPDSサイクルの中の、PlanからDoフェーズにかかる「クリエイティブ企画」「クリエイティブ制作」に該当する内容を含んでいる。理想としては、戦略の設計のうえに成り立つ作業フェーズのため、連載の始めから記事を読み進めてほしい。
ユーザー1人あたりの受信メールの数は年々増加する印象が強く、今やユーザー自身のためになる興味深いものでなければ、メールは読まれない傾向にある。そのため、企業には高いコンテンツ制作能力が必要とされている。
そこで今回は、メール制作時にこれだけはおさえておきたい注意点をまとめた。自社のメルマガが開かれもせず捨てられることがないよう、ユーザーの立場になって読みたくなるようなメール作りを心がけたい。
メールコンテンツで重要なのは「ユーザー視点」
クリエイティブ制作の重要点としてまず以下の4つのポイントを考えてみてほしい。内容はもちろん大切ではあるが、画像やコメントの元になるデータを集め、メールからのリンク先となるWebサイトを用意するためは社内の調整作業が発生するだろう。表記の統一などにも注意し、自社のブランドから刊行される制作物であることをしっかりと意識しなければならない。
- クリエイティブの最適化
- 適切な情報量や読みやすさ、件名の工夫などにより、ユーザーの反応を最大化する。
- 記号を活用して目を引くものに、1行あたり全角35文字前後を目安として3~4行で改行して読みやすく。
- クリエイティブ制作体制
- クリエイティブ制作に必要な社内外の情報を十分に収集できる仕組みや連絡経路を確保し、スムーズに編集や確認の作業を行えるようにする。
- クリエイティブごとに確認する担当を決める。配信時間から逆算して、この時間までに誰と誰のチェックを受ければよいのかを明確にしておく。
- ブランドらしさ、ブランドイメージとの融合
- その企業の商品やサービスのブランドらしさを反映したメールマガジンを制作する。
- メール内で使用するヘッダーやフッターの共通化を行う。Webサイト上の表記とも統一しておく必要があるだろう。
- ウェブサイトとのコンテンツ連動
- メール施策とWebサイトとの関係や役割分担を意識してコンテンツを設計する。
- メールからの誘導であることを確認するためのツールを活用したり、専用のURLを用意するといった手が考えられる。
また、実際にメールマガジンを制作した時に陥りやすい注意点を以下に示した。その誤解の多くは、ユーザー視点からかけ離れてしまっていることにある。一度、客観的な視点から自分がそのメールを受信したつもりになって考えてみると効果的だ。
×掲載内容の盛り込み過ぎ
!書き手は伝えたい情報をたくさん盛り込むが、読み手は、まず流し読みして、必要な情報をピックアップして読みたい。視覚的に読みづらいと離れていってしまうので、適度な分量と強調したい点を明確に伝えるように心がける。
×自社サービスの告知のみ
!単なる自社サービスの売り込みだけでは読者の飽きが早く、押し付けにもみえる。読み手が関心を惹くクリエイティブ企画を行う。
×声の大きい少数派の意見を採用する
!大抵の場合、声を出すのは少数派で、多数意見ではない。アンケートなどの継続的な実施によって、ユーザーの意見を聞くのは良いことだが、少数派の意見のみを採用することで多数派が離れるのを避けるべき。
×休眠会員は戻ってくる
!一度休眠してしまったメルマガ会員は、アクティブ会員に戻すことが難しくなる。継続的に開封させるコンテンツを提供し、飽きさせないことが重要。
メールは企業がアウトプットするマーケティングツールの1つだということを肝に銘じ、常にその先に見えないユーザーがいることを念頭に置こう。「ユーザー視点」に立って制作することが重要だといえる。
テキストメール制作のポイント
次に、メールの種別ごとに具体的な注意点をみていこう。1つずつ確実にチェックしていくように心がけたい。まずは、最も使用頻度が高いテキストメールである。
- 件名
- 件名はユーザーが読むか、読まないかを判断する最も重要なものである
- 「お得感」「限定感」などユーザーが実際に関心を示す”キャッチー”なものを取り入れる工夫が必要
- 記号やスペースなどで、少しでも目立つ工夫をする
- 日本語(漢字)を利用する
- 最初の20文字から30文字が重要
- 差出人名
- 件名と合わせ、開封を判断する重要な部分である
- ひと目で誰からの発行なのかわかるように設定する
- 発行者が特定できないと「スパムメール」と思われる可能性がある
- 目次
- スクロールの際の目安となるよう、番号を振る、見出しを振るなどして本文と連動させる
- 件名同様に、ユーザーが興味を示す内容を的確に伝える
- 罫線の使用
- 罫線を使用することで、区切り感を出し、メリハリのあるレイアウトにする
- 内容により“かたまり感”を出すことで、よりわかりやすい構成になる
- 使いすぎるとくどくなるので、適度な使用を心がける
- 本文
- ユーザーはメールを「スクロールして流し読みする」ことを念頭に置く
- スクロールしながらでも、瞬時に必要な情報がわかるよう、見出しなどを活用して読みやすい構成にする
- 1行あたりの文字数は、全角35文字前後が適切
- 文書は3~4行程度で改行し、読みやすい構成にする
- 行間を多めに取り、「ユーザーの思考の流れに合わせる」ことも大事
- 「今すぐクリック」「限定」などのキラーワードをちりばめ、ユーザーへアクションを促すナビゲーションをわかりやすくする
- 注釈の記載は必要最低限に留める
- 機種依存文字
- 特定のパソコンだけでしか読むことができないため使用を避ける
- 丸囲い文字・ローマ数字・単位記号
- 半角カタカナ(厳密には機種依存文字ではないが特に電子メールでは文字化けの原因となるため、使用は避けるべき)
- 携帯電話用の絵文字
- 機種依存文字を含んだメールを送ると、相手の使用しているパソコンによっては、メールの内容が判りにくくなり、意味がまったく伝わらなくなってしまう可能性があるので注意が必要
- 特定のパソコンだけでしか読むことができないため使用を避ける
- フォント
- フォントには「等幅フォント」と、「プロポーショナルフォント」の2種類があるが、プロポーショナルフォントは文字によって横幅が違うため、アスキーアートや表のレイアウトがずれて見えてしまう
- MSゴシックなどの「等幅フォント」を利用するのがセオリーだが、最近のメールソフトでは「プロポーショナルフォント」がデフォルトで設定されているものもある。メールの本文内に等幅フォントで見るよう注意文言を挿入したり、プロポーショナルフォントで表示させてもレイアウトが大きく崩れないように、センタリングや文章を記号などで四角く囲むことは避けたりする工夫が必要(詳しくは次章で説明する)
- アスキーアート
- 記号などの文字を組み合わせて作成した絵のことで、ユーザーの注目を引くのに有効
- 等幅フォントで機種依存文字を使用しない形式で作成する
- ヘッダーや囲み枠などで使用すれば効果的である
- アスキーアートエディターを用いることにより、容易に作成することが可能である
- 編集後記
- 編集後記やコラムは開封率の向上に一役買うポイント
- ただし、多少の好き嫌いがでたり、思いのほか労力がかかるという側面もある
HTMLメール制作のポイント
画像などの装飾を施すことでリッチコンテンツを提供できるHTMLメールならではの制作のポイントも存在する。
メールは流し読みされるが、HTMLメールでは特に画像や見出しに目がいく
特にHTMLメールは、画像や見出しを見て、興味に近いコンテンツを探すという行動をとる1人あたりのクリック率は平均1.5~2回くらい
一般的にテキストメールよりもクリック数は増えるが、すべてのコンテンツを読むことは“まれ”。何を最もクリックしてほしいのかを考える必要があるメールに掲載する情報の整理が重要
コンテンツ企画も重要だが、画像や文言をどう組み合わせて配置するかが読みやすさを大きく左右するテキストメール制作よりも長めの工数を設定
盛り込む要素(文章、画像、配置要素、色味など)が増え、修正ポイントが増加するためスケジュールを長めに取る必要がある。HTMLなどの専門知識も必要
本文中でのポイントとしては、下記のような項目に注意する必要がある。
- ファーストビュー
- HTMLメールの場合、メールソフトをパッと見たときに最初に目を惹く場所は、やはり本文の冒頭部分である
- ファーストビューで、興味を惹かないとスクロールして読もうとは思わない
- 最初のアイキャッチでいかに興味を惹くかが勝負の分かれ目となる
- クリックの誘導のさせ方
- クリックをさせたい場合には、クリックできることを明示的に表示する必要がある
- 大き目のボタンを利用する
- 商品名やURLを明示する
- クリックをさせるメッセージも、明示的に表示すると効果的
「こちらをクリック」「詳細はこちら」「……応募!」など
モバイルメール制作のポイント
PC向けのメールとは異なった独自の側面を持つため、実際の端末で確認するなどの入念なチェックを行う必要がある。
- 基本は半角カナ、半角英数字を使用する
- 長いメールは好まれない傾向にあるので、視覚的にわかりやすいものにする
- 絵文字入力ができるメール配信ASPも多いが、テスト配信を行い、必ず実機で表示の確認をすること
- モバイルHTMLメールは、機種により10KB制限、100KB制限とかなり幅があるため、実機で確認をする。絵文字同様に各キャリア、各端末によって表示が変わるため、実機でのチェックは必須となる
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