HCD-Net通信
「人間中心設計 (HCD)」を効果的に導入できるよう、公の立場で研究や人材育成などの社会活動を行っていくNPO「人間中心設計推進機構(HCD-Net)」から、HCDやHCD-Netに関連する話題をお送りしていきます。
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ユーザビリティデザインと審美的デザインは両立しないのか/HCD-Net通信 #2

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人間工学や認知工学を応用して高いユーザビリティを達成したデザインというのはどうも美しくない、ユーザビリティと美しさや魅力的なデザインというのは両立しないのではないか、という発言をときどき耳にする。いや、僕自身、それに近いことを感じていない訳ではない。しかし、もしそのロジックが正しいとすると、一般に美しく魅力的なデザインは商品性が高いと思われている傾向があるから、結果的にユーザビリティなど考慮しなくても良いのではないか、ということになりかねない。

まず審美的デザインの特徴を考えてみたい。僕は、デザイナーにはある種の共通した志向性があると思っている。たとえば、余計なものがなくてすっきりしたデザインを好む傾向、対称性を好む傾向、幾何学的な形態や図的なおもしろさを好む、何らかの自然物の形のメタファを導入する傾向などだ。

すっきりしたデザインを好む傾向からは、ときに機能の違うボタン類を1か所にまとめてしまうデザインが生まれる。すると、機能群によってボタンがまとまっていないため操作に迷うことになる。また背景とのコントラストの低い文字を使って文字を目立たせなくするため、照明を明るくしないと何のボタンかわからなかったりすることが起きる。ロータリースイッチがどの位置にあるかを示すライトがごく小さくしか表示されておらず、現在の状態がわかりにくくなっていることもある。対称性を好む傾向もボタン配列に適用された場合には、ボタンの機能に関係なく配置が決定されていて、押す頻度や重要度などに関係ない配置となってしまうことがある。幾何学的形態として円形や同心円の操作部や円環状のボタン配列が使われることもあり、形や色のおもしろさのためにわかりやすさや操作性が損なわれてしまっていることがある。このように見てくると、別に審美的デザインが悪いと言う訳ではないのだが、審美性を重視しすぎると、往々にしてユーザビリティの損なわれることがある、という傾向はあるだろう。

反対にユーザビリティデザインの特徴はどうだろう。人間工学を応用したと称して手の形に合わせたようなエルゴノミクスデザインというジャンルがあるが、これは奇妙な外見をセールスポイントとしているようにしか見えないものもあり、必ずしも使いやすいとは言えない。手指を特定の形にしたときにはすっぽり収まるものの自由度がなく、手指の形が固定されてしまう不自由さはユーザビリティの高いデザインとはいいがたい。ユーザビリティの高いデザインと言っても、ユーザビリティという概念が多様でありレベルがさまざまなので一概には言いにくいが、使いやすいデザインと平たく言ってしまうと、その典型例は最近の携帯電話の一部の機種に見ることができる。高齢者にも使いやすく、という方針でデザインされたその携帯電話は、文字表示が大きく、ボタンも大きくデザインされており、見やすく操作しやすいデザインになっている。ただ、地味な色彩や材質感のため全体にくすんだ印象を与える。これってもっと違う作り方もあったろうに、というのが僕の印象だった。高齢者が主対象だからと、地味な色遣いや素材の利用を考えたのかもしれない。しかし高齢者には使いやすさだけが重要だと考えているとしたら、それは思いこみというべきだ。

ユーザビリティの高い製品はダサいデザインで、カッコいいデザインは使いにくい。さてどちらがいいのだろう、という前に、それらを両立させるデザインをつくりだす努力をすべきではないか。こうした実態が生まれてしまう裏には、デザイン作業のチーム編成とプロセス管理が適切になされていないことが関係しているように思う。

チーム編成では、チーフデザイナの意向を重視したデザインをしてしまうような編成になっていないかどうかを反省する必要がある。正反合という言葉があるではないか。異分子を排除して、己の感性の主張をするだけではいけない。むしろ異分子を取り込むこと、自分のデザインへの批判を歓迎することが大切だ。相手の意見を取り入れることはデザインを汚すことにはならない。異なる主張を両立させる道をともに考える姿勢が大切だ。

プロセス管理も重要なポイントで、利用実態の把握、要求の明確化と目標の設定、デザインの案出とレビューの反復、ユーザーを取り込んだ評価の実施などをきちんと実施することが必要だ。自分の感性を信じるあまり、プロセスを短絡させてしまってはいけない。他方、プロセスを信奉するあまり、感性の重要さを過小評価してはいけない。

最終的にはユーザーが何を求めているかによるわけだが、一方だけを重視して他方を無視するようなユーザーはいないと考えるべきだろう。両立しにくい方向性ではあるが、そこを何とか頑張るデザインに向け努力を続けることが大切だ。

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