[コラム]長谷川恭久のCGM海原と共に

顧客満足を CGM 的なアプローチで向上させる方法

今回は、ネットによって生まれた「個々人がそれぞれ意見を述べられるようになった」ことを背景に、企業が顧客の声を集めて製品企画などに活かすための仕組みのお話です。
CGM海原と共に

だれでもインターネットを利用できるようになって大きく変わったことに、「個々人がそれぞれ意見を述べられるようになったこと」があります。旧来のように、数値やグラフによって「顧客」や「ユーザー」の全体像を表すだけでは、本当に顧客の傾向を理解できるとは限りません。しかし、ネットを利活用すれば、数字では見られない顧客の姿を見つけ出せるうえに、コアなファンと出会うこともできます。「製品やサービスに切実な思いを寄せているファンの声」に耳を傾ければ、大衆の声をすべて聞き入れた場合よりも、全体的な満足度の向上につながることもあるのです。

しかし、ブログや SNS を検索して顧客の声を探しても、ノイズが多く、建設的な意見が書かれているとも限りません。また、個々の意見に対して他の人たちがどのように反応しているのかも見え難いものです。こうした課題に対する解決方法は、現在2通りあります。

その1つが、顧客の声を集めた専門コミュニティサイトを利用するケース。Get Satisfaction のような、人々が利用しているサービスや製品についての不満や新しいアイデアを書き込めるサイトです。メーカーだけでなく特定のサービスや製品から探すことができ、同じものを利用している他の人の意見を、サイト内や RSS を介して読めます。このサイトの興味深いところは、メーカー側の人もメンバーとして入会しており、ページをメーカーが見ているという告知もページに表示されていることです。実際、「新しい部品に替えられるか」といった質問に対して丁寧に説明しており、メーカーの公式サイトで十分にはできていないカスタマーサービスを補う場所として活用されているといえるでしょう。

人々のサービスに関する不満や提案が集まるコミュニティサイト。ウェブ関連のものが多いのですが、家電や家具メーカーやサービス業への提案もいくつかされています。
http://www.getsatisfaction.com/

もう1つの方法は、My Starbucks Idea(スターバックス)や Dell IdeaStorm(デル)のように、メーカーが自らコミュニティサイトを立ち上げているケース。「こうしてほしい」という強い意見をもっているファンのアイデアに対して人気投票を行い、評判の良かったものを実際に製品化しています。デルのほうは、立ち上げてから2年経ちますが、サイトで出された意見を元に Linux がプレインストールされたパソコンを販売したり、限定販売のパソコンのデザインをコミュニティに相談してから提供したりするなど、いくつものコラボレーションを実現しています。良い意見かそうでないかを企業側が決めるのではなく、ファンを中心とした顧客コミュニティに決めて形にしているのです。

スターバックス(上図)やデル(下図)のように、企業が自ら顧客の声を集めて形にするコミュニティサイトも出てきています。企業サイトのわかりやすいところにコミュニティサイトへのリンクがあり、公式でサポートしている雰囲気が伺えます。

ネットといってもさまざまなチャンネルがあり、ターゲットにしている顧客のタイプによって、適切なアプローチの仕方は変わってきます。しかし、どんな形であっても、重要なのは、顧客が企業のやり方に合わせるのではなく、企業が顧客のやり方にきめ細かく合わせて行かなくてはならないことです。良い顧客との関係を築くうえで、オフラインの世界では当たり前のことですが、オンラインの世界でもそれは変わらないということなのでしょう。

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