Moz - SEOとインバウンドマーケティングの実践情報

ビジネスを(特にウェブで)作って率いていく人に贈る18個のアドバイス

今日はちょっと目先を変えて、小さなベンチャー企業を率いる者の心得について語ってみたいと思う。

SEOとは違って、こういったテーマについて話ができるような説得力や経験なんて、僕にはほとんどない。たしかに、僕は何十という検索マーケティングプロジェクトを成功に導いてきたけれど、ベンチャー企業の経営に関わったのはたった1社、つまりSEOmozだけで、僕自身の経験は限られている。だけど、僕は世界のあちこちにあるベンチャー企業で成功を収めた(あるいは収められなかった)CEOや起業家と一緒に仕事をしたり、顔を合わせたりする機会に恵まれてきたんだ。

ここでは、ベンチャー企業のCEOたる者はこんなことをしなくちゃならないとか、やっていいことと悪いことの区別なんてものを偉そうに語るつもりはない。単純に僕個人の経験、つまり僕がうまくやれた点とかしくじった点をみんなにも知っておいてもらいたいんだ。

ほかのCEOの長所や短所を見ていくことで、自分自身(や自分の会社のCEO)を見つめ直すきっかけにしてもらえればいいな。

よいCEOになるのに役立った僕の特質

  • 飽くなき知識欲
    ウェブのベンチャー企業の世界では特にそうなんだけど、情報をむさぼるように追い求める性格が役に立っている。このおかげで、トレンドの見極めや、次にヒットしそうなものに関するブログの投稿が人よりも早くできるだけじゃなく、このサイトをもっと情報を欲しがっている人の情報源にすることができているんだと思っている。これは、どこかの記者から電話がかかってきて、グーグルの最新のアルゴリズム変更や垂直検索の実装についてコメントを求められた場合にも役に立つ。

  • マルチタスク中毒
    何でもかんでも同時にやりたくなっちゃうっていうのは、厳しい締切に追われている人にとってはストレスの溜まりそうな状態なんだけど、これはCEOとってたいてい好ましい性質なんだよね。僕は自分が、メールを読んでそれに回答しながら、メッセンジャーでスタッフとやり取りをし、ドキュメントを編集して、ニュースにざっと目を通すと同時に、ブログ記事の案を練るなんてことができるとわかったんだ。これが物事を処理するのに最も効率の良い方法だとはいわないけど、完全に忘れて手つかずのままっていう作業はほとんどないし、緊急を要する問題はちゃんと優先的に処理できる。

  • 人の長所に目を向けるところ
    これはさっきのマルチタスクの話と同様、両刃の剣なんだけどね。でも僕は、これが僕の会社を取り巻く人たちやチーム内のすばらしい文化を作り上げているんだと思っている。時々、世間知らずだと思われるくらい楽天的なところが僕にはあって、それも友だちを作ったり、業界内で人脈を築いたりするのに大いに役立っている。ときには報酬をまったく支払おうとしないクライアントに騙されたり、どうでもいいような問題を片づけるのに貴重な時間を割かなくちゃいけなかったりすることもあるけどね。

  • お金ですべての物事を計らないところ
    大きな利益を上げる手っ取り早い手段ばかり考えていると、業界の全体像といったものを見逃してしまう可能性がある。マネージメントで成功するというのは、まだ満たされていないニーズがどこにあって、どうやればそのニーズに応えられるかを広い視野をもって創造力豊かに考えることだ。僕はまた、お金のためだけにビジネスをしている人と、業界全体に役立つことに注意を向けてそれを成し遂げようとしている人を見分けるのは簡単だということも、自分の経験からわかった。すごく楽天的な見方かもしれないが、たいていは後者の人たちが最もすぐれた技術革新を生み出し(最終的には利益も手にし)ていると、僕は感じている。

  • 複数の手段を用いてコミュニケーションできる能力
    文章を書く、人前でスピーチする、電話で話す、という3つは事業を築き上げるうえで必須の能力だ。僕にとってこの3つの能力は、業界内で注目を集め、この世界でさまざまな企業や人と長く続く関係を作り上げて、そしてもちろん、ブログを通じて自分の会社を売り込むのに役立った。それから、上手にメールが書ける能力の価値というのも侮れない。というのは、社外の人がCEOに連絡を取る最初の手段はメールだということが往々にしてあるからだ。うまいメールが書ければ、相手の記憶に刻まれ、ブランドとして好印象を与えることができる。

  • ユーザビリティに対する関心
    すべてのCEOにこれが必要というわけではないが、僕はウェブベースの市場に身を置いて、ウェブサイト巡りをする(あるいはそれを試みる)人たちを大勢見てきたから、その分余計にユーザーの気持ちがわかるし、彼らが何を必要としているかを理解しようとする気持ちもある。今でも、君がカンファレンスで僕と会ってしばらく一緒に過ごしていても、僕はたぶんほかの人がコンピュータでウェブを閲覧するのをじっとチェックしていることだろう。その人がどんなサイトに行って、どのようにリンクをたどるかってことをね。僕がこんなことをしてるところを見かけたら、それは僕の中にあるユーザビリティ追求の虫が顔を出していると思ってほしい。決して怪しいことをしてるんじゃない。それは約束する。

僕の苦手なこと

  • 人の才能を見出すこと
    スタッフの採用で失敗したことがあるというだけでなく、僕は雇い入れた人材を適材適所に配置するのにいつも苦労している。人の長所と短所を透視術か何かのように瞬時に判断できて、長所を活かし、短所を最も抑えられるようなポジションに配置できるCEOが本当に羨ましい。

  • 部下に注意をすること
    これはおそらく、僕の最も苦手なことだ。部下が良い仕事をしてくれたときに褒めるのは大得意なんだけど、人の努力にケチをつけるが大の苦手なんだ。そういう事態を避けるために、最近になって僕は、徹底した完璧主義の人間だけを雇うことにした。もし君が自分に対して最も厳しい人間だったら、僕のこの身に染みついた欠点もなんとか補えるだろう。

  • 会社の業務を徹底的に分析すること
    ベンチャーキャピタルの投資を受けている会社のCEOで、とにかく測定してテストし、厳格に物事を1つ1つ改善していかなきゃ気がすまないっていうタイプの人を知っていたんだけど、その人はあるカンファレンスで「とことん分析好きな人間以外はみんなクビにするべきだ」と言っていた。僕の会社では、クライアント相手の仕事については統計の調査や解析も徹底してやるけど、こと自分たちの会社の伸びについては、可もなく不可もなくという程度の測定しかしていない(この3か月はずっとましになってるけど)。

  • 心ない批判にも冷静に対処すること
    僕にはいつも自分に言い聞かせておかなきゃいけないことがある。それは、批判が非常に激しくなったとしても、それは所詮インターネット上のことに過ぎず、オフラインの世界に比べると、そこではだれもがずっと大胆で攻撃的になりがちだということ。以前に比べれば、自分自身や自分の会社に対する批判を無視できるようになってきた。けれども、友人が厳しい非難にさらされているのを見ると、いまだに胸の鼓動は激しくなるし、耳がカッと熱くなってくるのがわかる。まだまだ修行が必要だな。

  • 企業は民主主義社会ではないと認めること
    企業なんて独裁社会だ。厳しい決断を下さなければならないとき、それは僕の責任において成される。どんな些細なことでも、社員の賛否を問えば、反対意見や苦情が続出するってことがわかったんだ。もし似非民主主義に基づいて会社を経営したいというのなら、全員の意見を聞いて、それを取り入れた決定をしてみればいい。それでうまくいかないときは、その責任を取る覚悟ができてなくちゃいけない。「内部圧力に屈しました」なんてのは言い訳にはならないのだから。

僕が目にした指導者についての固定観念と俗説

  • 指導者は人の後追いをしない
    こんなものはまったく真実ではない。指導者はトレンドに追随するし、業界の著名な人の意見にも従う。スタッフの意見に耳を傾けることさえある。優秀なチームを組織して優れた指導者になるためには、人の能力を見抜いて他人の仕事から新たな発想を得る能力も必要なんだ。他人が考えたものだからというだけの理由でアイデアを低く評価したり、すでに使われている方法だからという理由で、同じことをするのを拒んではならない。革新は確かに大事だけども、プライドに固執して自らの選択肢を狭めるのはとんでもない間違いだ。

  • 強烈な個性の持ち主だけが指導者になれる
    僕は過去5年間で、非常に控えめな感じの指導者に何人も会ったことがある。それに僕自身も、精力的なやり手よりも、深い知性を持った人の方が結局は尊敬できるように思う。もしかしたら、ウェブのベンチャー企業のような風変わりな世界だけのことかもしれないけど、強烈大胆な個性が必ずしも指導者にとって最も望ましいとはかぎらない。

  • 指導者は身長が高くなければならない
    これまでに、大半のCEOは飛びぬけて背が高いっていう調査をいくつ目にしたことだろう。188cm以上の人が多いってなってたかな。でも、ベンチマーク・キャピタルのビル・ガーリー氏(厳密にはCEOじゃないけど)を除けば、ウェブのベンチャー企業の世界でそういった背の高いCEOに僕は会ったことがない。

大事な教訓

  • 日常業務に疎くなり過ぎてはならない
    自分の会社の日常的な業務から離れすぎ、そのために苦労をしたCEOを何人か見てきた。スタッフのしている仕事や顧客が利用しているものに興味をもち、他人がそれをどのように見ているのか考えられないようなら、うまく会社を率いる能力を失いかけているおそれがある。ときには自分で出張の手配をし、月に数回はカスタマーサービス宛ての電話やメールを自分でも処理してみることだ。

  • 変化を恐れるな
    少しばかり優れた技術や能力、製品に恵まれたおかげで今の地位を掴んだとしても、いつまでもそれにしがみついている必要はない。僕がこの教訓を得たのは、大規模で儲かるコンサルティングのプロジェクトを数多く手がけるか、それとも有料コンテンツに基づくビジネスモデルの開発に取り組むかで、苦しい選択を迫られたときのことだ。今でもお金になるプロジェクトを少しだけ手がけてはいるが、有料コンテンツモデルに賭けて正解だったことは言うまでもない。

  • 仕事を任せられる人材こそ最大の味方
    自分の仕事を肩代わりしてくれる人間の力を忘れてはいけない。いい人材を雇って最高の能力を引き出すことがうまくできるのならば、その人間に重要で難しい仕事を任せてみるべきだ。多くの場合、状況が厳しいときこそスタッフの本当の価値がわかる。

  • 人間万時塞翁が馬
    世界が自分の周りでガラガラと音を立てて崩れていくような気がして、あと1日持ちこたえられるかどうかという思いをしたことは何十回もある。状況は感じているほど悪くないし、朝になれば太陽が再び昇り、思った以上に時間が解決してくれることもあるんだ、という境地に達するまでに、2度や3度はこういう経験をしてみないといけないんじゃないかな。数か月間も懸命に努力してきたスタッフが、その仕事を片付けてくれるかもしれない。報酬を支払ってくれないクライアントも、あと一押しというところまで来ているかもしれない。なかなか売れない製品が、あとちょっとの手直しで大ヒットする可能性だってある。

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