グーグルは言う「検索エンジンの表示順位を上げる目的のトリックは使わないようにすること」と。もちろん、グーグルは本気で言っているわけはない。そうでなければ、私たちは全員失業してるはず。
私たちは、自分たちが何をやっているのか人に説明するとき、「戦術」「方法論」「戦略」みたいな言葉を使いがち。なぜなら聞こえがいいから。たとえば、サーチエンジンストラテジーズ(SES)のカンファレンスがロンドンで開かれているけど、これをサーチエンジントリックス(SET)と言ってしまうと、いかにも胡散臭く聞こえてくるでしょ。本当はその方がおもしろそうなんだけど、SETに出張してくるわ、なんて言ったら経理の人たちはきっと良い顔はしないでしょうね。
オンライン用に作るコンテンツには、たいていの場合リンクベイト的な要素がある。そして、そのどれもが、検索エンジンで順位を上げるためのトリックだと見なされる「可能性がある」ものでもある。
ところで、検索順位を上げるためにリンクベイトの人気を集めるうえで、どんな手法を使うことが多いかしら(私はクールエイドを飲んだけど)。検索結果を思い浮かべつつリンクベイトの要素をいじくることは、通常、人間の訪問者ために行うアクションではないわ。そしてこれは、グーグルの規定にも完全に違反している。グーグルが求めているのは、「これは自分のユーザーの助けになるか? もし検索エンジンがなかったら、自分はこれを行うだろうか?」と自問自答することだから。
検索エンジンが存在しないならばやらなかっただろうことなんて、いくつもあるわ。だけど、それでもリンクベイトは作っていると思う。私がリンクベイトを作るのは、別の目的があるのよ。私は、nofollow属性付きリンクとそうでないリンクを慎重に使い分けたりなんてしない。だれも見ないようなメタタグのdescription属性の内容を改善するために、私の人生の貴重な35秒を無駄使いする、なんていうこともしない。キーワードがどこにあろうと気にしないし、複数のページでキーワードをまったく入れ忘れても、おそらく気づきもしないでしょうね。
リンクベイトの各要素がどれだけ効くかは、リンクベイトとそのリンクベイトを設置したサイトとの関連性で決まることがある(ここでは、バイラルマーケティングまで含めた話じゃなく、もっぱら単一のおもしろいコンテンツで大量のリンクを獲得する試みについて話すわね)。
でも結局のところ、テーマから外れたリンクベイトの成果は、お金を出してリンクを買おうとする場合と同程度で、サービスの改善を全然やらなくても、まったくの無名な会社が超有名になったりする。でも、リンクベイトの場合、操作やトリックを仕掛けるのはもっとまずい。というのも、その行為がリンク先ドメイン名の強さを高め、そのドメイン名が推す商品が何であろうと、最終的にその検索順位向上を手助けしていることを、リンクを張る人の多くは知らないから。グーグルがこれを見逃さなければならない理由が1つあるとすれば、それは、リンクを張ることが自由意思によるものだということ。強制はしていないし、お金を払う訳でもない。
検索エンジンは、どのサイトがリンクベイトで利益を上げているか調べることができるし、おそらくそうしている。リンクの増加は、うまく隠しきれなかった有料リンクキャンペーンとそっくりに見えるわ。リンクベイトの取り組みを罰したり、あるいは少なくともその価値を下げることについて、グーグルがどうやってそれを正当化できるのか、リンクベイトのエバンジェリストであるこの私(間違いなくそうよ)が説明するのは、ちょっと奇妙な話だってことくらいわかっているわ。
でも、このグーグルのウェブマスター向けガイドラインが支配している空想の世界では、リンクベイトには沢山の非倫理的な側面がありそうに思えるの。
グーグルがリンクベイトに関して何か言うとしたら、リンクベイトは許容できる行為だったという以外ないと思う。質の高いコンテンツであることには違いないのだから。
あるサイトが、大統領候補のそっくりさんを使ったリンクベイトを展開していたとして、そのサイトが「格安航空チケット」みたいなキーワードで検索順位のトップを直ちにとれないとしても、リンクベイトで得たPageRankは要検討対象とされてしかるべき。もしグーグルが、リンクベイトでPageRankを集めることを許容しつつ、リンクベイトの関連性のなさを取り締まるとしたら、いったいどうやってその関連性を判断するのかしら? リンクベイトで得た大量のリンクによって生み出される、ドメイン名の基本的な強さ(そのリンクベイトで特定のキーワードでの順位が上がるとかじゃなくてね)まで、厳しくチェックされるべきってこと?
それとリンクベイトからどこかに向けて張るリンクも、明らかに要検討対象とされてしかるべき。内部リンクにするのか外部リンクにするのか、nofollow属性を付けるのかどうか、すべてあなたが自由にできる。でも、「リンクベイトから外部サイトへリンクすることは、PageRankの操作である、なぜなら、そのPageRankは潜在的に作為的な行為を通じて得たものだからだ」なんて、どうやって論証するのかしら? PageRankは、人気だけでなく想定される権威を暗に示すもののはずではないの? 何をどうしたら(短期決戦型人気獲得コンテンツの)リンクベイトが権威を受け渡せるというのかしら。
ウィジェットやブログパーツを使ったリンクベイトについて、グーグルは最近次のように述べている。
作成したサイトに対するバックリンクを備えたウィジェットの配布は結構だ。しかし、これをさらに進めてリンクを第三者に販売すると、われわれの品質ガイドラインに反する
この件で挙げられた事例は、実際のところは「第三者へのリンク販売」に関与していなかった。
これが何を意味するかというと、これまで一般にリンクベイトで許されていたことまで、検索エンジンは取り締まり始めるかもしれないということ。それを考えると、恐ろしくなっちゃった。
ここで検討したいのは、ウィジェットやブログパーツに問題があるかどうかじゃなくて、「グーグルがリンクベイトについて、非常に利益性の高いリンク構築戦略と認識している」という事実。そうした利益性の高いリンク構築戦略に対し、グーグルがどういう対応に出てくるかってことは、みんな知ってるわよね。
私たちがリンクベイトでしていること(あるいは、見聞きしてきたこと)は、検索エンジンの立場から見てみると、ちょっと怪しく思えてくる。301リダイレクトを使って、ミニサイトから商業サイトにトラフィックを送るのは、一般的には良い考えだとされている。コンテンツの良し悪しにかかわらず、人は企業のウェブサイトにリンクしたがらないものよ。そこで、どこか別の場所にコンテンツを設け、被リンク数が臨界量に達したら、企業サイトにトラフィックを送り込むようにするのは、かなり標準的な手法になったわ。
キャメロン・オルシウス氏がSearch Engine Landでこのことについて書いていたわ。この話には、これまでもずっと倫理面の問題がつきまとっていたんだけど、だからといってこの行為でペナルティを受けることはなかった。こういうコンテンツを外部で運用することは、おそらくユーザーの目に留まりやすくなり、企業のブランドで固めた状態や企業自身のURLに押し込めた状態よりも「楽しめる」という点で、ユーザーの「助け」になることだといえた。でも、ひとたび賢い301リダイレクトの方法を使い始めると、何かユーザーを「助け」ているとはいえず、単にリンクを得ているだけになってしまう。この場合、コンテンツはそのまま据え置かなければならない。コンテンツを変更すれば、それはコードスワッピングの手法になる。そうなると、もう本当に弁解の余地なしね。
ページにたくさんのリンクを集めて(もし頭が冴えていて、なおかつ幸運なら、ちょっと美味しいアンカーテキストのリンクをね)、それからコンテンツを実利を生む別のものにすげ替えるか、商業目的のページにリダイレクトしてしまう。これはまさに魅惑の地だわ。こんな手法を使うべきじゃないのはわかっていても、これでだれもペナルティを受けたことがないのなら、誘惑に打ち克つのは難しい。検索エンジンはそのうち、コードスワッピングを行っているサイトを罰するようになるのかしら?
話を膨らませすぎ? 今回はちょっと仮説的な領域にかなり迷い込んでしまったのは自覚してる。でも、優れたコンテンツを作ったことが理由で、ペナルティを受けるなんてことは決してあるはずがない。私の想像力を刺激するのは、自分のサイトやページが新たに得た強さや露出度で何を成すべきなのかについて、検索エンジンが思いつくかもしれない、規則ガイドラインの可能性なのよ。
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