コンテンツ提供がネットキャンペーン成功の鍵/デジタルインセンティブに関する調査
Webマーケティングガイドでは、インターネット調査会社の株式会社ボーダーズと共同調査のもと、デジタルインセンティブに関する調査を行った。
『インターネット白書2007』によれば(2007年3月調査時点)、インターネット利用者数は8226.6万人、世帯内の誰かがインターネットを利用している「世帯浸透率」は83.3%であり、インターネット環境の普及率の高さが伺える。また、TCAの調査によると、携帯電話の契約数も全体で1億52万4700件(対前月比0.6%増)となっており、ユーザーがより簡単にインターネットへアクセスできる環境が整ってきている(※参照:TCA、2007年12月の携帯電話契約数を発表)。
また、インターネット利用者の増加と共に、スクリーンセーバーや壁紙を使った、オリジナリティのあるPCや携帯電話が求められるようになっており、電子ブックや着メロなどを取り入れるユーザーが多くなっている。
そんなデジタルコンテンツの利用状況を把握するため、今回はデジタルインセンティブに関する調査を行った(※デジタルインセンティブとは、販売促進などのキャンペーンでスクリーンセーバーや壁紙、ゲーム、音楽、着メロなどが無料で提供されるサービス)。
※調査概要に関しては、記事の末尾に記載している。
認知・利用と共に、「1年以上前から」が半数以上
財団法人デジタルコンテンツ協会が発刊した『デジタルコンテンツ白書2007』によれば、2006年のデジタルコンテンツ規模は前年比8.3%増の2兆7,699億円で堅調な伸びを示しており、分別では「映像」が25.7%、「音楽」が28.3%、「ゲーム」が22.1%、「図書・画像・テキスト」が23.9%となっていた(※参照:デジタルコンテンツ市場規模は2兆7699億円で堅調に推移)。そして、この成長はしばらく続き、2007年には3兆663億円に達すると予測されている。
成長が続くデジタルコンテンツ市場であるが、ユーザーはデジタルインセンティブをいつごろ認知したのか、そして利用し始めたのはいつかを尋ねた(Q1)ところ、認知した時期と利用し始めた時期共に「2年以上前」が最も多い結果になった。
さらに、認知した時期が半年以上前であるユーザーは57.4%となっている。
また、認知した時期と利用し始めた時期がほとんど変わらないことから、ユーザーはデジタルインセンティブで提供されるサービス(デジタルコンテンツ)に対して、抵抗なく受け入れているのではないかと考えられる。その理由としては、デジタルインセンティブの商品が無料であることや、短時間でダウンロードできることが挙げられるのではないだろうか。
PCからダウンロードするユーザーが75%弱
PCと携帯電話のどちらからデジタルインセンティブのサービスをダウンロードすることが多いかを尋ねた(Q2)ところ、「PCでのみ利用している」が45.2%と最も多く、次いで「PCでの利用が多い」が27.8%と続く結果になった。
今回の調査がPCのインターネットを利用する世代が中心であることを考慮しても、PCをメインにしてデジタルコンテンツをダウンロードしているユーザーは73%おり、大半がPCから利用していることが伺える。
近年、携帯電話による「モバゲータウン」などのオンラインゲームや「魔法のiらんど」などでの電子書籍のダウンロード数が増加していると言われているが、デジタルインセンティブ(はPCでの利用が主流であると考えられる(※参照:国内デジタル・コンテンツ市場は11%増の2兆5000億円に,iTMSの登場で音楽配信が躍進)。
ただし、今回の調査ではPC世代を中心にしたアンケート調査のため、別途携帯世代のみを対象にした調査が必要であろう。
なお、PC世代とは、1999年のiモード登場以前から携帯を利用していたユーザー(20代後半~30代以降のビジネスマン)のことを表す(※詳細:『大人が知らない携帯サイトの世界 ~PCとは全く違うもう1つのネット文化~』/佐野正弘著)。
今後欲しいのは壁紙(待ち受け画面)や音楽、ゲーム
次に、普段デジタルインセンティブでどんな商品をダウンロードするか尋ねた(Q3)。その結果、「壁紙(または待ち受け画面)」が79.0%で圧倒的に多く、次いで「スクリーンセーバー」が51.4%と続いた。
また、今後どんな商品を欲しいと思っているか聞いた(Q4)ところ、壁紙(または待ち受け画面)が51.4%と最も多く、次いで「音楽」が40.6%、「ゲーム」が39.4%と続く結果になった。
今回の調査内容が、無料で企業から提供されるデジタルコンテンツに関することである点を考慮すると、今後いかに既存の商品に飽きたユーザーを満足させられるような斬新でオリジナリティのある商品を提供していけるかが、更なるユーザーニーズの獲得につながると考えられる。
認知のきっかけは、「なんとなく」が78%
デジタルインセンティブ、またはデジタルコンテンツを知ったきっかけを尋ねた(Q5)ところ、「サイトを見ていたら、何となく」が78.2%と最も多く、次いで「友人・知人」が18.2%、「ブログ」が12.0%と続く結果になった。
この結果から、ユーザーはそのキャンペーンが目的でサイトを訪れているというよりは、自分が興味を持っていた商品のサイトを訪れた際に、たまたまデジタルインセンティブの情報を入手したという傾向が強いと考えられる。
一方で、「友人・知人」や「ブログ」などのバイラルが要因となり、サービスを知ったユーザーも30%以上おり、魅力やおもしろみのある商品に対して、非常にアクティブであるユーザーの姿勢が伺える。
流行りのキャラクターやメーカーのコンテンツを利用する傾向
また、今までデジタルインセンティブで得た商品で最も気に入っているものを具体的に尋ねた(Q6)。その結果、ネスレの壁紙やコカ・コーラのQooの壁紙、キリン生茶パンダの壁紙といったメーカー系アイテムから、外国の風景の壁紙といった広範囲に渡るジャンルの商品が挙げられた。
具体的なデジタルコンテンツ名 | 性年齢 |
---|---|
ANAの壁紙 | 男性18歳 |
JRAの壁紙 | 男性19歳 |
ディズニーの壁紙 | 女性19歳 |
キングダムハーツ2のスクリーンセーバー | 女性21歳 |
ドコモダケのスクリーンセーバー | 男性23歳 |
NHK紅白歌合戦の審査員任命証 | 男性23歳 |
そんぽ24のハナコアラの壁紙 | 男性25歳 |
トヨタヴィッツの壁紙 | 男性31歳 |
おしりかじり虫の着うた | 男性32歳 |
auの着うた | 女性32歳 |
コカコーラのiTunesキャンペーン着うた | 女性34歳 |
外国の風景の壁紙 | 女性36歳 |
ビヨンセのスクリーンセーバー | 男性41歳 |
コカコーラの合格Qoo壁紙 | 女性41歳 |
ビヨンセのスクリーンセーバー | 男性41歳 |
海の写真 | 男性42歳 |
キリン生茶パンダの壁紙 | 女性43歳 |
ネスレの壁紙 | 男性48歳 |
「覚えていない」や「特にない」といったユーザーが半数弱いるものの、NHK紅白歌合戦の審査員任命証やおしりかじり虫の着うたなど、話題性や流行のキャラクターを取り入れているユーザーも多くいると考えられる。
また、今回挙げられた回答以外に、話題を集めたものとしてユニクロの「UNIQLOCK」がある。UNIQLOCKでは、女性ダンサーが時報の音に合わせて踊る「CLOCK DANCE」を披露する様子と時計を交互に表示するブログパーツを公開し、世界的規模で話題を集めている(※参照:「UNIQLOCK」ブログパーツ公開)。
このほかに、任天堂の「漢検DS」ではゲームのブログパーツを無料でユーザーへ配布し仮想体験させ、各県対抗のバトル形式にすることによって、15万人以上のユーザーへプロモーションを行うことに成功している(※参照:漢検DSプレゼンツ都道府県対抗漢字バトル)。
上記のような成功例からも、デジタルコンテンツは企業のネットキャンペーン成功のポイントに大きく関わっていると言えるだろう。
30%弱が、1か月未満のサイクルでデジタルコンテンツを変える
デジタルコンテンツをダウンロードしたら、どの位の期間利用するかを尋ねた(Q7)ところ、「1か月以上3か月未満」が18.4%と最も多く、次いで「2週間以上1か月未満」が11.2%と続く結果になり、1か月未満を合わせると29.0%と全体の約3分の1を占めている。これらの層はデジタルコンテンツに対して、非常にアクティブな層であると言えるだろう。
Q6で最も気に入っているデジタルコンテンツで、スクリーンセーバーや壁紙などの回答が多い結果だったが、ユーザーにとって毎日の生活に不可欠となったPCや携帯電話に、企業が上記のようなデジタルコンテンツを提供していくことは、最もユーザーもより効果的に商品・サービス認知を与えられると言えるのではないだろうか。
現在、コンテンツ産業全体で見ても、インターネットや携帯電話などの新たなメディアで流通しているデジタルコンテンツの伸びは著しく、今後デジタルコンテンツ+αの商品をユーザーへ提供していけるかどうかが、ユーザー認知や満足度の高さにつながっていくと考えられる(※参照:ネット流通のコンテンツが市場を拡大、デジタルコンテンツ白書2007)。
81.6%が自宅のPCでデジタルコンテンツを利用している
現在使用しているスクリーンセーバーや壁紙はどのような場所のPCに利用しているか尋ねた(Q8)ところ、「自宅のPC」が81.6%と圧倒的に多い結果になった。一方、会社のPCで利用しているユーザーは13.2%(「会社のPC:5.2%」と「自宅と会社どちらも:8.0%」)と非常に少ない結果が出ており、ユーザーは会社のPCにオリジナルティやおしゃれ感を求めていないことが伺える。
また今回の調査対象者は、デジタルインセンティブ(ノベルティ)を利用しているユーザーに限定しているが、「スクリーンセーバーや壁紙を利用していない」と回答したユーザーはわずか8.2%にとどまっており、デジタルコンテンツとして幅広く普及していることが伺える。
有料のデジタルコンテンツをダウンロードしたいユーザーは、わずか4.4%
デジタルインセンティブのように制限つきだが無料で商品をダウンロードできることと、有料でも自分が気に入った商品をダウンロードするのでは、どちらが良いか尋ねた(Q9)。すると、「無料で商品をダウンロードできること」が82.6%となり、「有料でも自分が気に入ったものをダウンロードすること」はわずか4.4%という結果になった。
以前、Webマーケティングガイドでは「第2回20代男性のモバイル利用に関する調査」で20代男性の加入しているコンテンツについて調査したところ、無料のコンテンツを利用しているユーザーが圧倒的に多いことが分かった(この傾向は20代女性も同様)。
携帯のコンテンツにかかわらず大半のユーザーは、できればデジタルコンテンツに費用はかけたくないという気持ちがあると考えられる。
また、『インターネット白書2007』によれば、今後購入したい有料コンテンツのジャンルとして、「音楽ファイルダウンロード」と回答しているユーザーが18.9%いる一方で、「特になし」は67.9%に上っていた。
ユーザーにとって何らかの付加価値(ポイントなど)が付いたり、商品に余程魅力がなければダウンロードする可能性は低いと言えるだろう。
ブログ開設者とブログ閲覧者は、デジタルコンテンツの利用度も高い
今までブログを利用または閲覧したことがあるか尋ねた(Q10-1)ところ、「自分のブログを開設している」は40.8%、「自分のブログを開設していないが、よくブログを閲覧している」が25.2%と続く結果になった。
『インターネット白書2007』によれば、インターネット利用者(個人、n=2000)のブログ開設率は25.7%となっており、デジタルインセンティブ利用経験者は一般のユーザーよりもブログ開設率が高いことが伺える(※今回の調査はデジタルインセンティブを利用したことのあるユーザーのみが対象)。
さらに、Q10-1とQ1(利用し始めた時期)をクロス集計したところ、ブログ開設者とデジタルインセンティブを利用し始めた時期が2年前以上であるユーザーは、少なからずブログを閲覧しているユーザーであるという結果になった。
ブログに日常接触しているユーザーは、新しいもの好き・情報に敏感であることが言えるのではないだろうか。
国内デジタルコンテンツ市場の規模が2007年に初めて3兆円を突破し、その中でも音楽配信や電子書籍、ゲームなどは順調な伸びを見せており、今後より注目していく必要のある市場と言えるだろう(※参照:拡大続くデジタルコンテンツ 今年は3兆円市場)。
調査概要
- サンプル数:500
- 調査期間:2008年1月11日~2008年1月15日
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査機関:株式会社ボーダーズ
- 対象者:PCまたはモバイルから、デジタルインセンティブを利用したことのある16歳~49歳までの男女
- 割付:男女50%の均等割付
今回の調査対象は、16歳~49歳までのデジタルインセンティブ(ノベルティ)を利用したことのある男女500人。
男女比は50対50、年齢比も10代25%、20代25%、30代25%、40代25%の均等割り付けで行った。
- 本調査は、業界の全般的な調査であり、あくまでも指標となるものですので、参考データとしてご活用下さい。業種や取り扱っている商品、またユーザーの属性によっても調査結果は大きく異なると考えられます。
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