スポーツだから聞いてみたいみんなの意見
ESPNは米国で最も人気のあるスポーツ専門のTVチャンネル。ウェブサイトにも同様に、多くのユーザーがアクセスしています。ESPNはTVやウェブサイトだけでなく雑誌も刊行しているので、多方面で多くのユーザーを抱える大手メディアだといえるでしょう。
ウェブサイトではヘッドラインニュースだけでなくスポーツに関する膨大なデータやオリジナルコンテンツを提供しており、非常にコンテンツが充実したサイトになっています。でも、最初からそうだったわけではありません。ESPNは、ウェブマガジンやスポーツ関連のサービスを提供しているサイトを買収していくことにより、徐々にコンテンツを補強してきました。大手メディアサイトということもあり、ある程度名の知れた企業を買収することが多いわけですが、最近買収したサイトは、なんと個人のブログサイト「True Hoop」でした。
True Hoopは、スポーツライターのHenry Abbott氏の個人ブログ。プロのライターとしての経験があり、有名なスポーツ雑誌の巻頭記事の執筆経験もあるので、ブログエントリーといっても内容はすばらしいものばかり。Forbs.comから2005年度のBest of the Webにも選ばれたこともあり、知る人ぞ知る良質のスポーツブログという存在だったといえます。このTrue Hoopが2月に買収され、Abbott氏はESPNのライターとしてチームに加わったそうです。ブログによれば、ESPNの買収後も変わらない運営を行うということですが、取材費用もESPNから賄われ、過去の記事や写真も利用できるようになるようなので、今後何かしらの変化が見られるかもしれません。
変化と言ってもAbbott氏のブログ読者にとって悪い変化ではありません。多くの読者を抱えるAbbott氏を取り込んだことでESPNが新たなユーザー層を誘導できるようになるだけでなく、ESPNのリソースを利用できるようになることでAbbott氏の記事の質が高まる可能性も出てくるのです。True Hoopsがもつ独立感を好んで読んでいる読者もいるはずですから、ESPNのコラムニストとTrue Hoopのブロガーという2つのスタイルを上手に使い分ければ、2つのブランドを守りつつ共にメリットを得ることができるのではないでしょうか。ESPNもそのあたりは理解しているようで、True HoopにはESPN色がまったく見られないところが注目です。
ブロガーをESPNのネットワークに取り込んだわけですが、ESPNではさらに一般ユーザーにも手を広げ始めています。ESPNが提供しているヘッドラインニュースすべてに「ESPN Conversation」というコメント機能を実装し、公式のニュースに直接コメントが書き込めるようになっています。話題のニュースになるとコメント数は2000件にものぼり、早くも効果が出ているようです。ここ1年ほどアクセス数が下降気味になっているESPN.com。個人の情報発信を尊重し、それを上手く取り込むことによってアクセス数や登録メンバー数を伸ばすことができるのでしょうか。こうしたオープン戦略が鍵を握っているかもしれません。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウvol.5』 掲載の記事です。
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