YouTubeがプラットフォームになったとき
YouTube(ユーチューブ)は、2006年に最も影響力をもったサイトだといっても過言ではないでしょう。
ただ、YouTubeにはなつかし映像やTV番組がアップロードされていたりするので、違法サイトとたいして変わらないと感じる方も少なくないでしょう。無法地帯のようなイメージのYouTubeを不快に感じていたコンテンツプロバイダも少なくなく、法的な処置がとられるという話も何度かありました。しかし、GoogleによるYouTube買収前後から、コンテンツプロバイダは一転してYouTubeという名のプラットフォームを使ってビデオを積極的に配信するようになりました。
たとえば、アイスホッケーリーグのNHLがYouTubeと提携して、2006年12月から試合のハイライトや舞台裏のシーンを専用ページで観覧できるようになっています。この提携の背景には、広告収入の一部がNHLに入るだけでなく、不法に使われたビデオコンテンツを削除する権限をNHL側に与えたことがあるようです。
一見、NHL側の一方的なビデオ配信のようにみえますが、ユーザーのコメント(動画によるものも含めて)もトップページに掲載されるようになっていて、ユーザーのNHLに対する思いがリアルに伝わってきます。特に試合のビデオクリップとコメントが連動しているので、試合に関する熱いディスカッションも展開されていたりします。ビデオコンテンツのコントロールはNHL側にあるものの、ユーザーのコメントはNHLに対するネガティブなものも含めて掲載しています。YouTubeというユーザー中心のコミュニティサイトであるという文化を理解しての配慮でしょうし、今も増え続けている購読者数をみる限り、NHLの認知度を高めるというブランドページの目的は達成していると言えるのではないでしょうか。
最近では大手テレビ局もYouTubeにブランドページを設置してコンテンツを配信しています。それぞれのTV局のウェブサイトでも積極的に音声や動画配信は行われていますが、それとは別にYouTubeにもチャンネルを用意しています。
iTunes StoreのTV番組ディレクトリの充実度をみてもわかりますが、米国のテレビ局は自社の枠の中に留まらずより多くのチャンネルを使ってコンテンツを配信する傾向が強まっています。テレビ、パソコン、携帯デバイスなどにより、視聴者は自分の好む場所と時間でメディアを楽しむようになってきています。iTunes Storeという自分たちのサイト以外からのコンテンツ配信やYouTubeでのブランドページは、そういった視聴者の要望に応える1つの形でしょう。
もし不正な目的や利益を得るためにコンテンツが使われているならば、何かしらの規制は必要でしょう。しかし、過剰な規制を行うと、せっかくのコンテンツを見てもらえないことにもなりかねません。できる限り多くの人にコンテンツを届けたいのであれば、さまざまなチャンネルを使う必要があるでしょうし、YouTubeという圧倒的なユーザー数を誇るプラットフォームを利用するほうが、ユーザーにより近づけると考えるべきでしょう。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウvol.4』 掲載の記事です。
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