柔軟で使いやすく各担当者がマーケティングを実践/Just MyShop+SiteCatalyst
Just MyShop/株式会社ジャストシステム
Powered by SiteCatalyst/ソフトバンク・テクノロジー株式会社
野本 幹彦(フリーライター)
使いやすさと柔軟性の高さを活かして
担当者それぞれがマーケティングを実践
Just MyShopサイト概要
https://www.justmyshop.com/
ジャストシステムが運営する直販サイトで、同社製品のほか、関連するソフトウェア/ハードウェア、書籍やDVDなども扱っている。各種キャンペーンや会員限定企画なども催されており、低価格で購入できる。
コーポレートサイトに加えてオンライン直販サイトを開始
株式会社ジャストシステムは、日本語ワードプロセッサ「一太郎」や日本語入力システム「ATOK」が多くのユーザーの支持を得ていることで有名な、日本を代表するソフトウェア会社だ。
ソフトウェア会社として長い歴史を持つ同社では、ホームページ開設も早く、アクセス解析にも注目していたようだ(図1)。
「サイト立ち上げ当初から、サーバーにインストールしてログファイルを読み込ませるタイプのアクセス解析ツールは導入していました。しかし、現在のような使い方ではなく、サーバーの帯域調整やサーバー増強のための総量的な動向を把握する計測しか行っていませんでした」(Web企画・推進グループ 斯波綾子氏)
また、ジャストシステムは、自社製品を含むソフトウェアやハードウェアを販売する直販サイトを運営している。2001年6月に開設された直販サイト「Just MyShop」は、この5年の間に大きく事業として成長してきたサイトであると、コンシューマ事業本部ダイレクトサービス課の井坂知加子氏は言う。
「元々はジャストシステム製品の登録ユーザー様がバージョンアップするためのサイトを運営していたのですが、もっとバージョンアップしやすく、また、新規のお客様も弊社の製品を購入できるようにしたのが直販サイトの始まりです。現在は、他社のソフトウェア製品からハードウェア、ホビー製品まで扱っており、ECサイトとして独立した事業を展開していけるようになってきたところです」
ログの肥大化による解析時間の増加が課題に
この直販サイトでもコーポレートサイトと同様に、ログ型のアクセス解析ツールを利用していた。では、従来使っていたアクセス解析ツールにはどんな問題があったのだろうか。
「もっとも大きな問題となったのは、ログデータのサイズです。サイトを続けてきて、訪問者も増えてくるようになると、ログが大きくなりすぎて解析に時間がかかったり、長期の解析ができなくなったりしてきたのです。年単位の解析はムリな状態でした」と斯波氏が言えば、Just MyShopを担当している井坂氏は「週単位や月単位のデータが必要となるのですが、たびたびログが取得できないといった事故が発生していました」と言うように、解析をスムーズに行えなくなったことが最大の問題であったようだ。
パケット取得型を検討するもASP型のSiteCatalystを選択
3~4年前にアクセス解析ツールの変更を検討し始めたジャストシステムでは、最終的にページにJavaScriptを埋め込むタイプのASP型のSiteCatalyst(サイトカタリスト)を選択しているが、その経緯はどのようなものだったのだろうか。
「クラスタリングで複雑なサーバー構成となっていたため、ログを一本化できず、解析結果が出るまで時間がかかってしまうというのもネックでした。ログが手元に届くまでに時間がかかり、アクセスを解析するために時間がかかっていたので、解析結果が出る頃には企画や制作の作業が終っているような状態だったのです。
アクセス解析ツールを変えようと検討を始めた3~4年前はパケット取得型の製品が出てきていて、市場での評判も良く、リアルタイムに解析できることが話題となっていました。当時は、ASP型のツールは選択肢に入っておらず、パケット取得型へ変更しようといくつかの製品を比較して実際に導入目前でした」(斯波氏)
パケット取得型が最良の選択と考えていたジャストシステムだが、同じころに米国で評判の高かったSiteCatalystの日本語版がもうすぐリリースされるという情報を耳にする。「ASP型に興味はなく、スクリプト埋め込み作業などが発生するというマイナスイメージしかなかったのですが、“見るだけなら”とデモを見せてもらったことがキッカケですね」(斯波氏)
しかし、実際にデモを見てみると、その操作性の高さに驚き、導入を検討し始めたようだ。
「デモを見て、これまで検討してきたどの製品よりも操作性が高いことに大きなインパクトを感じました。心配していたスクリプト埋め込みの手間に関しても、共通のヘッダーやフッターにスクリプトを埋め込むことによって作業が軽減されるという説明を受けたので、大きな負担とはならないことがわかりました」(井坂氏)
「ほかの製品は、どうしてもシステム寄りのユーザーインターフェイスだと感じる部分が多かったのですが、SiteCatalystは元々マーケティングツールとして出てきただけあって、Web担当者にもわかりやすく、親切なユーザーインターフェイスになっています(図2)。
デモを見せていただいたときには“おぉ!”と声が挙がるほどのインパクトがありました。デモの時点では“多少コスト高でも何とかしよう”という声も挙がっていたのですが、後から実はコスト面でのメリットもあることがわかりました。パケット取得型の場合はどうしても初期導入コストがかかります。また、維持コストを試算したところ、われわれのサイトではSiteCatalystのほうがコスト安となる結果となりました」(斯波氏)
効率よい広告展開によって担当者の意識も変わってきた
SiteCatalystを導入して1年以上経つが、どのような機能が使いやすく、どのような効果を得られたのだろうか。まず、Just MyShopを担当している井坂氏にうかがった。
「コマース分析の機能によって、SiteCatalystからどの商品がどの程度売れたのかもわかるので、リアルタイムでの販売数やアクセス数などを日常的にチェックしています。また、メールを配信したときにはダイレクトにどれだけのアクセスが発生しているかも注目しているデータです。販売が好調である製品や不調である製品に注目して、販売経路やサイトのデザインを確認するためにも利用していますね。
選定時に多くのアクセス解析ツールを利用してみたのですが、機能的な部分はどれも似たり寄ったりで、特にSiteCatalystだけに利用したい機能があったわけではありません。SiteCatalystの魅力は、現場の担当者の誰が使っても直感的にすぐに利用できて目的の結果を得られるというところですね」
ジャストシステムでは、ツールにアクセスできる権限を担当者全員に渡すことで、企画者や制作者自身がその効果を確かめることができるようになっている。
「企画担当者は自分が立てた企画の効果を見るために、制作担当者はデザインの見直しとヒントを得るためにアクセスの解析結果が必要です。企画や制作は、訪問者の動向などの“仮説”を元に作られているので、その仮説に沿ってうまくいったのかを担当者がいち早くリアルタイムで知る必要があります。そこに問題があるのなら、いち早く解決することでその後の訪問者をスムーズに受け入れることができるようになりますから」(井坂氏)
また、広告の出稿などのプロモーション活動でもアクセス解析は非常に重要となっていると井坂氏は言う。
「広告などの媒体効果をさまざまな切り口から測定できるので、出稿の目的に合った媒体選定を高い精度で行うことができるようになりました。これらの情報やノウハウを蓄積することによって、効率のよいプロモーションが行えるのは便利ですね」
一方、コーポレートサイトを担当する斯波氏は、以前のツールとSiteCatalystの違いがシステム系のツールであるか、マーケティングツールであるか、という点にあると語る。
「私たちは、ソフトウェアの会社ですから、サイト開設時点ではシステム的な視点からアクセス解析ツールを見ていました。したがって、これまで使っていたログ型のアクセス解析ツールのような、システム管理者が見てわかるツールを選んでいました。しかし、サービスが広がっていくことによって、次第にサービス側の視点やマーケティング的な視点が必要となってきたのです。
さらにサービスが拡大してきた最近では、すべての担当者に対して私たちのグループが情報を提供することはできません。経験値があれば、以前のログ型のツールで分析を行って新たな“仮説”を導き出すことは可能ですが、現場の担当者が使いこなすのは難しい。こういった問題があったからこそ、使いやすくマーケティングにも活かせるツールが必要となったのです」(斯波氏)
担当者が使いやすくなるようにダッシュボードを活用
事前に予測していた効果だけでなく、使ってみたら実感できた効果もあると斯波氏は言う。
「コーポレートサイトでは、すべてのページをアクセス解析しているわけではなく、一部の古いページなどは調べる対象から外してJavaScriptを貼っていません。調べなくてもよいページを最初から除外することで、解析対象を絞り込めるというASP型の特徴は、使い始めてからわかったことです。
また、コーポレートサイトの場合は、製品担当から人事担当まで、さまざまな部門の人がサイトから情報を発信しています。アクセス解析ツールの閲覧権限を与えて自分たちで効果測定できるようになったことで、情報を伝えることに対する意識が高まったという点は、思いがけず良い効果となりました」(斯波氏)
しかし、以前は斯波氏や井坂氏が分析結果を伝えていた体制を、担当者自身がツールを操作して調べるような体制に変更するときに問題は生じなかったのだろうか。
「SiteCatalystを導入するにあたって、以前のツールはすべて廃止し、もう後には戻れないという状態にすることから始めました。導入後は、人海戦術でミーティングなどを開いて説明したり、使い方をレクチャーしていきました。また、イントラネットでテンプレートや使い方などの情報を提供する仕組みも作っています」(斯波氏)
また、効果的なテンプレートを作成することなどで担当者を支援する体制も構築しているという。
「SiteCatalystには、ダッシュボードというレポートをカスタマイズして格納できる機能があるのですが、これがとても役立っています(図3)。
ECサイトでも製品担当者、企画制作担当者、プロモーション担当者の3つの視点があります。それぞれの担当者が必要なレポートをダッシュボードで作成して定型化していけば、担当者がツールを操作できなくても、それを見るだけである程度の情報を得ることができます。解析に対する新たな要望が出てくれば、またダッシュボードを利用して要望を反映させることで、手間をかけることなく担当者へ情報を提供できるようになっています」(井坂氏)
アクセス解析に限らず、IT系ツールを使う場合の扱うスキルや理解には、担当者ごとに差が生じてしまうものだ。また、企業サイトのように多様なコンテンツがあると、必要なレポートの内容の内容も異なってくる。ジャストシステムの事例は、SiteCatalystの柔軟性によってそれらをうまく解決した好例といえるだろう。
株式会社ジャストシステムの選んだアクセス解析
世界的に評価の高いアクセス解析ツールの王様
SiteCatalyst(ソフトバンク・テクノロジー株式会社)
http://www.sitecatalyst.jp/
SiteCatalystは、米国オムニチュアが開発したアクセス解析ツールで、2005年に日本語化されている。米国ではフォーチュン200社でもっとも利用されるなどの高い評価を受けていたツールだ。
最大の特徴とも言えるのが、「リアルタイムレポーティング」「強力で直感的なインターフェイス」「売上やキャンペーンと連動したEC分析」の3つ。特にEC機能では、売上金額や販売製品を軸にした分析ができ、ページやリンク別の売上貢献度やキャンペーン効果も測定することが可能だ。
一般的なアクセス数やユニークユーザー、リファラーなどの取得はもちろん、さまざまな機能も提供されている。任意に指定したサイトの離脱率を分析できるほか、サイト内の複雑な導線を経路分析する際には、前後の遷移をわかりやすく表示する設計となっている。また、コンテンツ分析では、サイト内のリンクごとのクリック数や注文数、売上貢献度などをリンクに重ね合わせて色の濃さで視覚的にわかるようになっているので便利だ。
さらに広告媒体ごとの費用対効果を調べられる広告分析、ランディングページの最適化(LPO)、Excelツールバーによるデータ取り込み、設定値を超えた場合に自動的に知らせてくれるアラートメール、複数のレポートを1画面にまとめることができるダッシュボードなども提供されており、効果的なマーケティングが行えるようになっている。
ソフトバンク・テクノロジーでは、国内代理店としてSiteCatalystの販売を行っており、「アイティメディア」や「オールアバウト」といった大手メディアサイトへの導入実績なども持つ。また、米オムニチュアが行っているユーザー向けの公式トレーニング「オムニチュアユニバーシティ」の日本語化も手がけており、日本で唯一のSiteCatalyst公式トレーニングコースを提供している。マーケティング担当者、ウェブマスター、ウェブ制作担当者を対象に、2日間/10万5000円のプログラムで構成されている(詳細や申し込みについては、同社のウェブサイトを参照)。
なお、SiteCatalystの販売価格は公開されていないので、ソフトバンク・テクノロジーに直接問い合わせてほしい。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウvol.4』 掲載の記事です。
ソーシャルもやってます!