中国のライブコマース市場は、100兆円に迫る勢いで成長しています。アパレルやコスメにとどまらず、不動産やBtoB製品にまで枠組みが広がるそのダイナミズムは、まさに「オフライン流通を超える」規模へと成長しています。この裏側には、KOL(キーオピニオンリーダー)依存からの脱却やAI活用など、手法の大きな転換がありました。日本市場との違いを見比べながら、今後世界でライブコマースがどのように進化するのか詳しく解説します。
巨大化を続ける中国ライブコマース市場の現在地 中国のライブコマース市場 は、コロナ禍の巣ごもり需要を契機に爆発的な急成長を遂げました。市場規模は数年で数十兆円規模へと拡大し、専門調査機関「網経社(100EC.cn)」の分析によると、2023年1-12月に100兆円を超えています 。
中国のインターネットユーザーの半数以上がライブコマースを利用しており、EC全体における普及率も非常に高い水準です。2024年9月に経済産業省が発表したレポートによると、2023年の中国のEC市場規模は約418兆円 (レポートでは2兆9,875億米ドル※1米ドル=2023年の平均レート140円で計算) となっています。 そのなかで、ライブコマース市場は4.9兆元規模(日本円100兆円規模)にまで成長 しています。この結果、EC市場全体に占めるライブコマースの割合は約2~3割に達しており、単なる一過性のブームから、消費者の生活に根ざした主要な販売チャネルへと完全にシフトしました。
また、中国のインターネット利用者数約11億人に対し、ライブスコマースを含めたライブストリーミングの視聴・利用者数は8億人 にのぼっています。
アパレルやコスメといった定番ジャンルだけでなく、日用品、食品、高級車、果ては不動産やBtoBの製品紹介にいたるまで、あらゆる商材がライブ配信を通じてリアルタイムに売買されています。
中国版インフルエンサーのKOLによる商品紹介の一例 この光景は、2021年から2024年の中国国内でEV自動車の普及が一気に進んだ時のようなダイナミズムを感じさせます。たった数年間で、中国国内での自動車の主流はガソリン車だけでなく、約半数がEVを選ぶほどになりました。まさに、既存のオフライン流通を飛び越えて成長する「リープフロッグ(蛙跳び)現象」そのものです。
「やり方」の劇的な変化――KOL依存からAI活用へ 市場の拡大に伴い、中国でのライブコマースの手法やプラットフォームの機能も大きく進化しました。初期の「お祭り騒ぎ」的な売り方から、現在はより「持続可能で質を重視した運営」へとシフト しています。
トップKOL依存からの脱却と「店播」の台頭 従前は、一握りのトップKOLが1晩で数百億円を売り上げるスタイルが主流でした。しかし現在では、トップKOLの不祥事リスクや手数料負担の重さから、企業が自社スタジオから配信する「ブランド直営型配信(店播:ディエンボー)」が主流 になっています。これにより、ブランド側はブランドメッセージの一貫性と利益率の確保が可能になりました。
AI・バーチャル技術の融合 2020年代半ばから急速に進んだのがテクノロジーの活用です。24時間ノンストップで配信可能な「AIバーチャルインフルエンサー(アバター)」の導入が進み、事業者は深夜や早朝の配信コストを劇的に改善 しています。
また、AIによるリアルタイム同時通訳機能 により、中国国内だけでなく海外へ向けた配信のハードルも下がっています。もちろん、AI配信に関する規制やステマへの懸念など課題はありますが、進化のスピードはとどまることを知りません。
AIが生成したバーチャルKOLによるライブコマースのイメージ なぜ中国でこれほど伸びたのか?日本との決定的な違いとは 日本でもライブコマースに挑戦する企業は増えていますが、中国のような爆発的な広がりには至っていません。この差はどこにあるのでしょうか。理由は「消費者心理」と「環境」の違い にあります。
偽物リスクへの懸念が生んだ「信頼経済」 中国でライブコマースが支持される最大の理由は、「配信者という『人』を介することで、品質をリアルタイムに確認できるから」です。日本と比べて、中国の消費者はテキストと画像だけのECに対する不信感が高い 傾向があります。その不信感を、ユーザーとの双方向の関係が成立するライブならではのインタラクティブ性が解消 しました。
一方、日本はもともと配送や品質への信頼度が高く、「ライブで品質を確認しないと安心して買えない」という動機でライブコマースを視聴する人が少ない 傾向にあります。
衝動買いの文化 vs 慎重検討の文化 中国の消費者 は、ライブ配信中の「限定オファー」や「時間限定の割引」に対して敏感で、エンタメを楽しみながら勢いで購入する「衝動買い」に抵抗がありません 。
対して日本の消費者は、スペックやレビューを慎重に比較検討する傾向が強く、ライブの熱量だけでは財布のひもが緩みにくい のが実情です。日本は世界のなかでも特に保守的で、若年層でさえ慎重な購買行動をとる傾向があります。
決済・物流インフラの「即時性」 中国ではワンタップ決済が完全に浸透しており、ユーザーはライブ画面からのタップによって1秒で購入が完了 します。注文から数日で届く高度な物流網が整備されているため、熱量が冷めないうちに商品が届くエコシステムが完成しています。
VIDEO 中国版Instagram「小紅書(RED)」におけるSNSからの購買の一例
対する日本では、ライブ画面からまずECサイトに遷移し、購入フローを踏んで......という手順を踏むケースが多く、配送のスピードも事業者によっては数日以上かかることがあるため、購入の熱量は中国と比較すると下回ってしまう と言えるでしょう。
これからの世界トレンドはグローバルな越境EC 成熟した中国モデルは、今や世界市場へと急速に波及しています。今後の展望は次の3点に集約されます。
東南アジア市場の急爆発 :若年層が多くモバイルファーストな東南アジアでは、中国の手法を現地化する形で普及が加速しています。欧米での「エンタメ型EC」の模索 :AmazonやYouTubeなどが機能を強化しており、Z世代を中心に「ソーシャルコマース」への移行が進むと予測されます。越境ECのスタンダード化 :AI翻訳や国際物流の進化により、「日本の職人が工房から直接、海外へライブ配信で売る」といった越境ライブコマースが一般化します。日本企業が「次世代の購買体験」を作るために 中国の事例が示すのは、ライブコマースとは単なる実演販売ではなく、「データ、エンタメ、信頼、決済・物流が融合した次世代の購買体験」 だということです。
今、消費者はブランドの価値観や「誰から買うか」を重視しています。日本企業が今後成功を収めるためには、単発の売り上げを追うだけでなく、ライブ配信を通じて顧客と直接コミュニケーションを取り、ファンを育成する「関係構築」の視点が不可欠 です。市場が拡大する今こそ、中長期的な視点での戦略 が求められています。
最初にピックアップするのは「企業・ブランドの幸福度調査」です。
顧客対応でもAIが普及し、お客さんとの接点強化の重要性、企業と人の関係性にも変化が起きています。そのなかで、商品・サービスに触れることによって、お客さんに幸福度を感じてもらえることは企業冥利に尽きるのではないでしょうか。
上記調査の上位は大手に限らず、地方発から全国進出した企業も多いです。有料会員限定記事も多いですが、非常に読み応えがあるのでオススメの記事です。
3回目の調査では、業界などを大幅に拡大して実施。大手4大メーカーが圧倒的シェアを誇るビール市場において、ヤッホーブルーイングが首位になりました。大手各社が「品質」で支持を集めるなか、ヤッホーブルーイングとオリオンビールは「高揚」「楽しさ」で高い支持を得ています。