プロ向けの電動工具・資材ECのBtoB-ECを手がけるビルディの2025年5月期売上高は前期比20.8%増の35億1900万円。増収要因の1つに、デジタルコンテンツの強化によるECへの流入がある。その旗振り役となり、2025年の「ネットショップ担当者アワード」で「SNSマーケティング賞」を受賞した戸田夏海氏(コンテンツ部 クリエイティブチーム リーダー)に、CaTラボの代表でオムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎氏が、受賞を振り返るアフターインタビューを実施した。
ビルディ コンテンツ部 クリエイティブチーム リーダー 戸田夏海氏 株式会社CaTラボ 代表/オムニチャネルコンサルタント/日本オムニチャネル協会 理事/「ネットショップ担当者アワード」選考委員 逸見光次郎 氏 「SNSマーケティング賞」受賞を振り返って 逸見光次郎氏(以下、逸見氏) :BtoB事業とSNSの相性は費用対効果の面で判断が難しいもの。戸田さんはその推進を担い、TikTokで100万回再生を超えたショート動画の内製化、フォロワー数36.6%増を実現したSNS運用 などを手がけた。ECへの流入につながるデジタル戦略が増収に貢献 している。「SNSマーケティング賞」後の社内・社外での影響はどうだったか。また、受賞して良かったことを教えてほしい。
戸田夏海氏(以下、戸田氏) :社内では「おめでとう」と声をかけられたり、社外からは受賞したことを投稿したSNSに「いいね」をいただいたりと反響があった。SNSのフォロワーはビルディのお客さまで、電動工具を扱うプロの方々。意外にも、商品以外の投稿も見てもらえているとわかった。SNSの運用に力を注いでいることを社内外で認めてもらえた ようで嬉しい思いだ。
個人の取り組みにフォーカスしていただいたことは、担当者として大きな励み になった。これまでのSNS運用の取り組みや、今後の運用方法を見直すきっかけにもなった。自分の担当業務をより良くしていくための貴重な機会を得られたと感じている。
アワードではほかの受賞者の取り組みも掘り下げられ、EC業界で活躍する人のさまざまな事例が紹介されることも興味深い。これから表彰されていく受賞者にも注目していく。
戸田氏が実践するSNS運用の成功事例 逸見氏 :動画を活用したSNSマーケティングの運用について「敷居が高い」「どのように企画し、何から始めたら良いかわからない」というEC担当者は多い。戸田さんが乗り越えたハードルや、後進へのアドバイスを聞かせてほしい。
戸田氏 :SNS施策で綿密な企画を練るのはもちろん大事だが、私の場合はまず、自分が発信したい情報やお客さまに知ってほしい情報にフォーカスした投稿を継続 した。きちんとフォロワー増加につながるか心配になったが、継続していくこと自体が大事だと考えた。現在、ビルディの公式SNSアカウントとして運用しているTikTok、Instagram、X、YouTubeの総フォロー数は、約4万人(2026年3月現在) 。堅調に増加 している。
Instagramのフォロワーは直近1年強で36.6%増の約7000人(2025年9月時点)。5月18日現在は8155人となっている 逸見氏 :SNS運用には担当者のタイプがあり、計画的に進めることが得意な人と細かいスケジュール管理をせずに進める人がいるが、戸田さんはどうか。
戸田氏 :自分はスケジュールや発信内容を計画的に決めて継続するタイプ。SNS運用を始めた当初は「週に何回投稿するか」「どのような内容を発信するか」を明確に決め、1か月単位でスケジュールを組んで運用 していた。
しかし、ビルディの業務特性上、急に決まる案件や突然の告知依頼が多く、計画通りに進められない場面が増えた。そのため、だんだんと綿密なスケジューリングにとらわれすぎないようになり、ある程度柔軟に運用 するようになった。
逸見氏 :何を投稿すべきか悩むことはないか。
戸田氏 :取扱商品数が非常に多いため、それが投稿する“ネタ”のストックになる。そのため、季節に合わせて投稿内容を選ぶ ことが多い。たとえば、夏に向けてはスポットクーラーや空調服など、涼しさを感じられるような商品を優先して紹介するようにしている。
また、トレンドの商品同士のスペックを比較するような、ストックには向かない内容については、より多くの人に見てもらえる可能性が高い週末に向けて金曜日に投稿 するなど、戦略的にタイミングを調整 している。
季節商品の一例 逸見氏 :SNSに投稿する具体的なタイミングは。
戸田氏 :フォロワーの通勤時間を見計らい、午前9時頃にはセール情報を流す。商品紹介の投稿は平日の昼ごろや15時ごろなど。フォロワーは工具を使う職人が多いので、彼らの休憩時間に合わせている 。
商品の比較検討のような長尺のコンテンツは、金曜日の夕方、フォロワーの仕事が終わるタイミングを見越して夕方17時~18時ごろに投稿している。
逸見氏 :静止画、テキスト、動画の使い分けで工夫していることはあるか。
戸田氏 :新商品の投稿は画像とテキストのみで、スピード感を意識してアップ している。動画は、商品同士の比較など、ディテールを細かく伝える必要があるときに活用 している。多少時間をかけてでもしっかり作り込んでいる。
動画では商品の特長をていねいに伝えている。TikTokでは2万1100人を超えるフォロワーを獲得している(2025年9月時点) 逸見氏 :数多くある商品の知識はどういうタイミングで覚えていくのか。
戸田氏 :「商品をユーザーに理解してらい買ってもらいたい」という思いから動画コンテンツを企画しているので自然と詳しくなっていく。
商品ページやメーカーの公式ページには詳細な情報が豊富に掲載されているので、そこを読み込んでいる。そして、ビルディには社内に“工具博士”と呼ばれる工具の知見が豊富なスタッフがいる ため、わからないことはそのスタッフに相談して商品知識を得ている。
たとえば「注目するべきインパクトドライバーを5機種ほど撮影したい」と伝えると「このメーカーのこの型番が良い」といった具合に候補を選定してくれる。その上で自分でも商品ページを確認しつつ、「どこを押し出すべきか」というポイントを整理し動画の構成を組み立てている 。
VIDEO 工具の比較動画の一例。社内スタッフと連携し、戸田氏が指揮をとってSNS配信用の動画を制作している
めざすのは「疑問や悩みが解決する」アカウント 逸見氏 :SNS運用で、戸田さんは「親近感」を大切にしているように見える。ファンを醸成し、増やすためのアクションとして実際に意識されている点や工夫があれば教えてほしい。
戸田氏 :これまでは、詳細なスペックをテキストで丁寧に説明する、あるいは高画質な映像で細かなディテールを見せることに注力してきた。画像や動画は自社で撮影し高いクオリティをめざしてきた。
しかし最近は、商品の情報だけでなく、温度感や“人の気配”といった要素も大切にしたい と考えるようになった。そこで自社のSNS投稿をフォロワーがシェアしたり、Xで引用リポストしてくれたり、Instagramのストーリーで紹介してくれたりしたときにはできるだけ早くリアクションする ようにしている。
足元では、投稿へのコメントにも返事をするようになった。たとえば「このドライバーにこういう形状の先端はさせますか」といった投稿というか問い合わせにもできる限り返信コメントをしている。
カスタマーサポートにも似た“おもてなし” 逸見氏 :現代では、発信した内容に顧客、あるいは潜在的な顧客が問い合わせをしてくるのは当然の反応 だ。そして、コメントにレスを返すのは内容にかかわらずサポート業務 とも言える。ECにおいてはSNSマーケティングとカスタマーサポートは表裏 一体だ。
戸田氏 :カスタマーサポートまで問い合わせをしてくれるECユーザーはほんの一部で、同じ疑問をもつユーザーはたくさんいる はず。だからこそ、「自分の疑問や悩みが解決する」と身近に感じてもらえるSNSアカウントをめざしている 。
担当者の幅広いアンテナが良いコンテンツにつながる 逸見氏 :戸田さんはSNSの企画・コンテンツ作り・投稿だけにとどまらず、物流などECの運用全体に広くアンテナをもっている 。
戸田氏 :ビルディでは、物流担当やカスタマーサポートなど、さまざまな業務のスタッフが同じフロアで働いており、すぐに話を聞きに行ける環境が整っている。小規模な組織であるからこそ、業務の距離が近く、EC運営のさまざまな業務を知ることができる 。
見栄えだけが良いクリエイティブを発信すること自体は、作り方や見せ方を覚えればある程度できる。しかし、クリエイティブ以外の業務や、どれだけの人がECを支えているのかを理解したうえで投稿・発信する内容には別の厚みが出てくる と感じている。
SNSの運用はとにかく継続が大事。現在の施策をコンスタントに継続していく。
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上記調査の上位は大手に限らず、地方発から全国進出した企業も多いです。有料会員限定記事も多いですが、非常に読み応えがあるのでオススメの記事です。
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