EC業界で活躍する個人の功績や取り組みを表彰する「ネットショップ担当者アワード」において、2024年に「サブスクリプション賞」を受賞した、コーヒー豆のサブスクECを展開するPOST COFFEEの下村祐太朗CCOに、選考委員長であるネクトラスの代表取締役・中島郁氏が、サブスクリプションECの成功ポイント、EC業界で活躍できる人材像、今後の展望を聞く。
POST COFFEE株式会社CCO 2024ネットショップ担当者アワード「サブスクリプション賞」受賞 下村祐太朗氏 ネクトラス株式会社 代表取締役 ネットショップ担当者アワード 選考委員長 中島 郁 氏 「サブスクリプション賞」受賞を振り返って 中島郁氏(以下、中島氏) :下村さんはECサイト「PostCoffee」で、スペシャルティコーヒー豆のECサイトとサブスクリプション を手がけており、ECに関連する業務を広く管掌している。サブスクリプションの解約率は驚異の3%以下 。こうした実績や、顧客のエンゲージメントを高める取り組みが「サブスクリプション賞」受賞の評価ポイントになった。改めて、受賞後の感想を教えてほしい。
下村祐太朗氏(以下、下村氏) :従前、メディアからは「コーヒー業界内で凄い」という角度で注目されることが多かった。今回はEC事業そのものや、展開しているサブスクリプションサービスという切り口で評価されたことは社内でも喜びの声があったし、モチベーションが上がった。
企業単位ではなく、ECに関する取り組みに注目し、個人を表彰するアワードである点もユニーク だと思う。
賞を獲得したことは、顧客に「PostCoffee」を利用してもらうための説得材料になる 。また、受賞は株主もチェックしていると思う。
「PostCoffee」サブスクリプションサービスのトップページ 成功のカギは「データドリブンな施策」「飽きさせない仕掛けづくり」 中島氏 :「PostCoffee」は、他社と比較しても突出した優位性を持っている。ユーザーのフィードバックによって次回以降のお届けのテイストを変え、各ユーザーの好みの味わいを可視化。ユーザーは「マイページ」に記録されている自分のコーヒージャーニーを振り返ることができるなど、ユーザーを飽きさせない、解約したくならない工夫 がめぐらされている。
サブスクリプションサービスの解約率はわずか3%。平均の半分以下となっており、注目すべき数値だ。これに貢献しているデータドリブンな顧客コミュニケーション、商品提案の精度の高さが受賞のポイント となった。現時点で考えられる顧客とのコミュニケーションの究極形が実現されていると思う。
ユーザーが自身のコーヒージャーニーを振り返ることができる「マイページ」 商品詳細ページでは、味わいや香りを視覚的にわかりやすく見せている。ユーザーが好みに合うコーヒーを選びやすくする工夫の1つになっている 下村氏 :サービスの在り方は、試行錯誤して現在の形になった。「PostCoffee」は、もともとコーヒーに強いこだわりを持つ人々向けのサービスだった。しかし、ユーザーインタビューを通じて、コーヒーに詳しくない人々が「どれを選べば良いかわからない」という課題を 抱えていることに気づき、こうした人々に焦点を当てることにした。
結果、これらの人々の入り口になり、サービスをサブスクリプション型にする方向へと変更した。この点が、サービス初期の設計から大きく変化した部分だ。
中島氏 :現時点で考えられる全ての手法を駆使しており、AIの活用も積極的に行っている ことから、さらなる進化が期待できる。これほど素晴らしい顧客体験の構築に成功していることを改めて称賛したい。
AIの活用例の1つ、「PostCoffee」内でユーザーが利用できる「コーヒー診断」。診断内容を基に、ユーザーの好みに合うコーヒー豆を提案する 中島氏 :サブスクリプションで成功するためには、どのような点に注力し、取り組みを強化したのか。改めて聞きたい。
下村氏 :先にも触れた通り、ユーザーインタビューを繰り返し行い、コーヒーに対する課題を深掘りして、その課題を解決するサービスを提供 しようと考えた。何より、自分自身が欲しいと思うものを提供することが最も効果的で、ユーザーが無意識に使いたくなるような使いやすさを追求することも大切にした。
とにもかくにも、ユーザーとの接点を増やすことが大切 。事前に知り合いや少数の人々に意見を聞いたり、駅前に立って実際にサービスを提供してみたりした。お金を払ってくれる顧客がいることを確認し、その反応をもとにサービスを改善していくことを重要視している。
受賞後の変化 中島氏 :社外からは、受賞後にどのような変化があったか。
下村氏 :店舗にメディアからの取材が入ると、「ネットショップ担当者アワード」受賞時にいただいた盾が注目され、それが取り上げられたりしている。
中島氏 :受賞したことが波及し、顧客に期待される効果は。
下村氏 :EC利用者においては、6~7割がサブスクリプションサービスのユーザー。受賞歴が後押しとなり、EC利用者がさらに拡大することを期待 している。
また、「PostCoffee」はECだけでなく、実店舗も展開しているが、店舗に来てくれる顧客の中にはサブスクを展開していることをまだ知らない人もいる。受賞がフックとなり、そういった顧客にはサブスクを知ってもらえる機会が増えている と見ている。
店舗とサブスクの両方で購入するようになると、顧客接点が増える。ECで直接購入しなくても、Webサイト上のコンテンツを見てもらえるだけでもプラスになる。オンライン上で生まれる熱気がリアルの場に広がっていく と期待したい。
2024ネットショップ担当者アワード受賞時の下村氏。「サブスクリプション賞」の盾を手にしている 個人を表彰するアワードの意義 中島氏 :「ネットショップ担当者アワード」はEC業界の人に光を当てる、業界で活躍する人を増やすなどの目的で開催している。受賞者としての意見をもらいたい。
下村氏 :光栄だし嬉しい反面、「自分が選ばれて良いのか」という気持ちもあった。いち会社員である運営者個人を露出する機会は少ない と思うので、業界の内外から目を向けてもらえる 「ネットショップ担当者アワード」は素晴らしいと思う。
受賞者が語る「EC業界で求められる人材」 中島氏 :EC業界では、今後どのような人が活躍し求められると考えるか教えてほしい。
下村氏 :顧客の課題や興味をとらえて前進できる人 は活躍する。POST COFFEEでもそういう人材を求めている。
中島氏 :EC人材に限らないが、顧客や商品に真剣に向き合える人は活躍できるし、成長が期待できる。それを前提として、「ECや店頭のデジタルにも対応できる」「ECに関連する施策を考えることができる」......という人材が必要だ。いうなれば、取り扱う商品・商材に強く、顧客コミュニケーションもでき、そのうえでECも伸ばせる人材 。「POSTCOFFFEE」の運営においてはどうか?
下村氏 :ECの運営においては、MDや、EC運営のかじ取りをするメンバーがいる。中島さんが指摘するように、EC担当者はECだけに特化するというよりも「さまざまな知見を持つ人がECも触れる」という状態が健全な事業成長につながる と考えている。いま欲しい人材はデザイナー。たとえばオシャレな雰囲気の商品クリエイティブを作れるデザイナーを求めている。
新たなオウンドメディアを立ち上げるメンバーも欲しい。アジア圏で順調に事業成長していけたら、スペシャルティコーヒー市場で上位のシェアを獲得できるかもしれない。今後は海外出店やグローバル対応も視野 に入れている。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」 で公開されている記事のフィードに含まれているものです。 オリジナル記事:コーヒー豆のサブスクEC「POST COFFEE」下村CCOが語るサブスク成功への道+EC業界で活躍できる人材像とは | EC業界で活躍する人を顕彰!「ネットショップ担当者アワード」 Copyright (C) IMPRESS CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.
正解があるものは、すべてAIに任せられる時代になりつつあります。
人間に残されるのは「これが正解です」というゴールの存在しない課題。そこに求められるのは、「ではどう考えるのか?」という問いに応える力です。
特にECやマーケティングの現場では、正解のない打ち手や、顧客心理のゆらぎに向き合う場面が増えています。だからこそ、数字の分析やPDCA以上に「考え続ける力」や「違和感を探し続ける力」が重要になります。