ヘルプフルコンテンツアップデートはGoogleの説明と違う動きをしているとデータで判明(前編)
ヘルプフルコンテンツアップデートとは何だったのだろうか?
すでにコアランキングシステムに統合されているこのシステムの影響で検索トラフィックが激減したサイトも、少なくないようだ。
「このシステムの挙動はグーグルの説明とかなり違うものではないか」という仮説のもとに、Mozのデータで調査してみた。
こんな仮説がある:
2024年3月よりグーグルのコアランキングシステムに統合されているヘルプフルコンテンツアップデートは、グーグルによる説明やほとんどのSEO担当者の戦術的理解と、実際にはほぼ完全に異なる動きをしているのではないか。
これは、2024年5月に発生したグーグルの内部文書流出を受けて、僕がたてた仮説だ。
グーグルは2022年8月の最初の発表で、「有用なコンテンツかどうかの判断はサイト全体のシグナルだが、主にコンテンツの有用性を判断することを意図したドキュメントレベルの要因に影響される」といったことを述べていた。僕自身を含め多くのSEO担当者は、大規模言語モデル(LLM)で生成される新たなスパムの増加をいち早く予見した動きではないかと推測した。グーグルは、何らかの複雑な機械学習の手法を通じて、コンテンツの主観的な品質を判断しているものと僕たちは考えた。
グーグルの従業員たちは同社の検索エンジンについて、僕たちが考えているより単純なものだとたびたび示唆しており、僕のデータもそれを裏付けている。ヘルプフルコンテンツアップデートは、少なくとも部分的には、古い単純なシステムに基づいているようだ。2023年9月、2024年3月、2024年8月に実施された過去3回のヘルプフルコンテンツアップデートと同アップデート後に統合されたコアアップデートを調査したところ、サイトの検索順位が急降下した要因に共通点があることがわかった。ただし、その前に少し背景を説明しよう。
クレムリノロジー: 行間を読む
グーグルは以前から、主要なアルゴリズムアップデートについて少々あいまいな言葉を繰り返してきた。2011年に初めてパンダアップデートを実施したとき、グーグルは次のように述べていた:
このアップデートの目的は、低品質なサイトの掲載順位を下げることです。低品質なサイトとは、次のようなサイトのことです:
- ユーザーにとってあまり価値のないサイト
- 他のサイトからのコピーで構成されているようなサイト
- 利便性の低いサイト
この説明は、2024年のコアアップデートに際して書かれたものだとしても、そう大差はないだろう。ただし業界内の印象としては、時が経つにつれ次のような変化があったと感じている:
- 特定の戦術的な情報への言及が、ますます少なくなった
- 唐突な変更が増えた
- 「検索順位に直接関係ないのではないかと多くのSEO担当者が疑う事柄への言及」が、ますます多くなった
僕は以前にこのブログで、次のように書いたことがある:
コアアップデートは、ロールシャッハテスト(代表的な人格診断検査)のようになっている側面が若干あるのではないか。
この考え方の背景にあるのは、次のような事実だ:
オーソリティが非常に高く高品質なサイトでも、表示順位は上がったり下がったりする。(多様なサイトを対象に多様な変化があるため)頻繁にペナルティを科されたり、決まって高く評価されたりするようなウェブサイトなど基本的にはない。
コアアップデートはむしろ、たとえば短期間のユーザーシグナルやその他の一時的データといったものの更新のように動作する。アップデートのたびにSEO担当者がパニックになって加える変更よりも、グーグルがシステム上でいじり回している調整作業に関連している可能性が非常に高い。
では、ヘルプフルコンテンツアップデートとは何だったのだろうか? 導入時、わかりにくいという点でこれはコアアップデートとよく似ていた。しかし、ヘルプフルコンテンツアップデートでは次の点が印象的だった:
著名サイトなのに「敗者」となったサイト(アップデートで検索トラフィックを失ったサイト)の多くのは、グーグルが「高く評価したい」と述べていたサイトの特徴と完全に一致しているように見えた(!?!?)。
そして2024年5月、Google検索の内部的な動作に関係していると思われる技術文書が流出した。
テクニカルSEOの専門家であるマイク・キング氏は当初、この件について詳しく説明した記事で、「babyPandaDemotion」と呼ばれているものがヘルプフルコンテンツアップデートのことではないかと推測した。同氏はまた、ブランド検索やナビゲーション検索に関するかなり以前の特許とヘルプフルコンテンツアップデートとの関連性も指摘している。これらの特許は、10年以上前に最初のパンダアップデートと関連があったとされるものだ。
僕はこれを読んで、少し迷路にはまり込んだような感覚に陥った。なぜなら、ナビゲーション検索やブランド検索の概念は、僕自身がドクター・ピートたちと何年も取り組んできたMozのBrand Authority指標の中心になっているからだ。
そこで仮説を立ててみた:
ヘルプフルコンテンツシステムは、サイトのナビゲーションキーワードの検索ボリュームとリンクシグナルの比率が通常の範囲から外れる場合に関係しているかもしれない。
多くのリンクがあるのに、(SEOを実施しすぎて?)リンクに比べてサイトへのナビゲーション上の関心があまりない場合は、そのリンク数から想定するほど上位に表示される価値はないだろう。幸い、僕たちはこの仮説をデータで評価するのに絶好の立場にある。
では、分析結果を見てみよう。
分析結果
ここで「勝者」「敗者」は、上位10件に入るキーワードが2023年9月14日~9月28日と2024年3月5日~4月20日の両方の期間で増加した・減少したサイトとしている(調査の手法や勝者・敗者の詳しい定義は後編を参照)。
敗者と勝者を比較すると、ブランドオーソリティとBA:DA(ブランドオーソリティ対ドメインオーソリティ)比で大きく異なる結果になった。
ヘルプフルコンテンツアップデートの勝者のDA(ドメインオーソリティ)と BA(ブランドオーソリティ)の分析結果は、影響が見られなかったサイトとあまり変わらない。これは、これらの指標では捉えられない何らかの要因があるために評価されたとも考えられるし、あるいは検索はゼロサムゲームであり、誰かが下降すれば代わりに誰かが上昇するのだとも考えられる(ブランドオーソリティの詳細)。
しかし、ヘルプフルコンテンツアップデートの敗者は、勝者となったサイトや順位が流動的だったサイトと比べて、ブランドオーソリティが著しく低く(37対50~52)、DA:BA比が高かった(2:1対1.4:1)。
言い換えると、任意のドメインオーソリティに対して、ヘルプフルコンテンツアップデートの敗者は他のいずれのグループよりもブランドオーソリティが低いことが予想される。言い換えると、ブランドオーソリティに対してドメインオーソリティが高いということだ。
この図を見ると、中間的なサイトと勝者のサイトの分析結果は似ている。ヘルプフルコンテンツアップデートは「肯定的な要因」よりも、「順位の下落やアルゴリズム上のペナルティ」を引き起こす可能性の方が高いとも思える。
上位3件
さまざまな手法に変更してみても、同じような結果になる。たとえば、分析の対象を上位10件ではなく上位3件の勝者と敗者に絞った場合は、以下の通りだ。
勝者または敗者を他の定義に変えてみたり、除外したごく小規模なサイトや新規サイトの一部を残したりしてテストしてみたが、結果は同じようなものだった。
対照期間
これに対し、ヘルプフルコンテンツアップデートが行われなかった同じ日数の期間に勝者または敗者になったサイトを見ると、そのような影響は見られない。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、この調査結果から読み取れること、実施されたばかりのアップデートの分析と、「SEO担当者は何をすべきか」を紹介する(調査の手法や「勝者」「敗者」の定義も解説する)。→後編を読む
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