Uターン就職希望者をターゲットにした採用に、SNS広告を活用できますか?
こんにちは。Webコンサルティングの森和吉です。
SNS運用の質問教室、前回は「飲食店でInstagramを運用していますが、もっと集客を増やしたいです。ほかに効果的なSNSはありますか?」という悩みにお答えしました。
さて9回目となる今回は「Uターン就職希望者をターゲットにした採用に、SNS広告を活用できますか?」という、長崎県にある企業の担当者から寄せられたお悩みに答えていきたいと思います。
ターゲット属性を絞れるのはSNS広告最大の特徴!
森先生、「Uターン就職希望者をターゲットにした採用に、SNS広告を活用できますか?」という質問が、長崎県にある企業の担当者から届きました。
昨今の売り手市場を考えると、ターゲットは県内の新卒者だけでなく、県外のUターン就職希望者も視野に入れたほうがいいですよね。結論から言いますと、ご希望の設定でSNS広告を出稿することは可能です。ただし注意点もありますよ。
SNS広告は、Twitter(現X)が日本で利用開始された2007年頃から徐々に広まった手法です。その前は、Web広告が採用目的でも使われていましたが、多くの方に届けられる反面、「不特定多数の人に届いてしまう」デメリットもありました。キーワード設定である程度は絞れても、あくまでも表示枠を買うだけなので、「●●県に住む20代」のようにピンポイントのターゲットに広告を届けることは難しかったのです。
そんななかで登場したのがSNS広告です。最大の特長は、ターゲットの属性を絞って広告が打てる点です。
皆さんもご経験があると思いますが、SNSは登録する際に性別、誕生日、住んでいる地域などさまざまな個人情報を入力しますよね。ユーザーが自然と個人情報を提供したくなるように、たとえばXでは、“誕生日には、プロフィール画面に風船が飛ぶ”といった特典をつけるなど、工夫をしています。
SNS広告では、この個人情報を活用することができるのです。今回のケースなら、長崎県出身者が働いていそうな福岡県や大阪府、東京都などに住んでいる20代、30代のユーザーに限定して広告を出すといいでしょう。
ただ「広告を出せばいい」はNG! SNS媒体の選択は慎重に
「そんなに便利なら今すぐにSNS広告を打ちたい!」そう思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください。SNS広告を打つにあたって大きく分けて2つ、考えてほしいことがあります。
1つは「どのSNSに広告を出すか?」です。いまや、さまざまなSNSがあり、それらを使うユーザーも異なっています。たとえばFacebookには40代以上の管理職ユーザーが多いと言われます。一方、InstagramやTikTokは若いユーザーが多いため、新卒や第二新卒へのアプローチに適していると言えるでしょう。
まず、あなたが「どの年代層に情報を届けたいか?」でSNSを選ぶようにしましょう。ちなみに、「LinkedIn(リンクドイン)」は、登録時に会社名や役職名を入力するため、「福岡県の課長職以上」といったより属性を絞った広告出稿ができます。「役職ごとに絞って情報を届けたい」場合は、LinkedIn(リンクドイン)がおすすめかもしれません。
SNS広告では年代や役職などで属性を絞れることは、おわかりいただけたかと思います。しかし、注意したいのは「ただSNS広告を出しただけでは望む効果は得られない」ということです。
ご質問にあるように、「Uターン就職希望者の採用をしたい」場合、おそらくそういった方は長崎県にはいないはず。そうなると、「長崎県出身者は、どの地域で仕事をしている人が多いのだろう?」「採用したい年齢層や役職は?」といったリサーチが必要不可欠です。
私はこのリサーチからターゲットを探す行為をよく「釣り」にたとえています。釣りは餌をつけた竿を下ろして、魚が釣れなければポイントを移しますよね。そしてお目当ての魚がいそうなポイントを探っていく。SNS広告も同じです。リサーチやデータ分析を通して、ターゲットが釣れるポイントを探して広告を打つことがとても大切なのです。
ターゲットがいないポイントには、いくら竿を下ろしても何も釣れません。結局、広告費の無駄になってしまうこともあるのです。逆に少ない予算でも、ターゲットがいるSNSに一極集中で取り組めば、分散させるよりは効果が期待できるはずです。
数字だけで一喜一憂しないこと。問題はWebサイトや導線にあることも!
そしてもう1つ気をつけてほしいことが、「反応数だけで広告効果を決めてしまう」ことです。
あるあるなのが、「契約が5件入ったときに、すぐにSNS広告が当たっているからだ」と思いこむパターン。逆に「問い合わせが0件だから、広告を出す意味はないかも……」と決めつけてしまうパターンもあります。一見これはデータを見ているようで、実は結果の数字だけに捉われているのです。
ちょっと次の事例を考えてみてください。
たとえば、お弁当屋さんのメニューのなかで、人気のお弁当を調査するとします。1か月で100人のお客さんがお弁当を買った場合、売上個数から最も売れたお弁当、最も人気のないお弁当も数字として出すことはできるでしょう。
しかし、この数字のなかには「看板を見て美味しそうと思って店の前に行ったけど、惹かれる弁当がなくて何も買わなかった」「メニューを5分ほどじっくり見たが、意外と高くて買わずに帰った」といった人は入っていません。つまり「見込み客」までは、把握できていないのです。
これと同じでSNS広告においても、「クリックしたものの、次のアクションまではしなかった」という問い合わせ数や契約数には反映されない人がたくさんいる、ということを理解しておきましょう。
「広告の効果は必ずしも数字に反映されるわけではない」というのも矛盾しているようですが、覚えておいてください。すなわち、問い合わせ数や契約数だけを見て「効果がないからやめよう」とSNS広告を諦めてしまうのは、非常にもったいないことなのです。
そもそも、Web広告は求めるターゲットを呼び込む「入口」であり、最終的なゴールはWebサイト内にあります。SNS広告を進めていったのに、採用までたどり着かない場合は、Webサイトの構成や動線に問題があるのかもしれません。そういった広義の視野をもつことは難しいかもしれませんが、そうした可能性を頭の片隅に置いておいていただけたら幸いです。
森先生からのアドバイス
SNS広告の魅力は、ターゲットの属性を絞れることです。今回のように狙うターゲット層が具体的に定まっている場合は、特に効果的な手法だと言えます。ただし、お伝えしたように「どのSNSに広告を出稿するか」が重要です。最もやってはいけないのが、いろいろなSNSに手あたり次第に広告を出してしまうことです。
特に予算が限られていると、いろいろなSNSに広告を出す方が得だと思われがちですが、これは大きな間違いです。ターゲット層の年代や役職など、さらに分析を重ねて、慎重に吟味するところから始めてみてほしいと思います。
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