BtoBマーケティング最前線

なぜマーケティング vs 営業になる? 増やしたリードが過小評価される理由

WACULの垣内勇威氏がトップ営業から学ぶマーケティング担当者の立ち回りを紹介した。

マーケが集めた新規リードは、営業から無視されるのだろうか。売上にも貢献していないと言われ、両者の溝は深まってしまうのだろうか。『BtoBマーケティングの定石 なぜ営業とマーケは衝突するのか?』(2022年11月)を上梓したWACULの垣内氏が、「BtoBマーケティングの定石」のエッセンスを2回にわたって解説。

BtoBマーケティングの定石 なぜ営業とマーケは衝突するのか?』(著:垣内勇威 氏 出版:日本実業出版社)

私の知る限り少なくとも20年前から、日本に古くからあるBtoB企業は「マーケティング」の手法を試しては「売上」につながらない、という失敗を何度も繰り返しています。原因はシンプルです。「売上」を担ってきた営業部門が「マーケティング」の手法に懐疑的であり、連携がスムーズにいっていないからです。

心当たりがあれば、ぜひ次のシミュレーションクイズに挑戦してみてください。

あなたは「営業」と「マーケティング」、どちらの視点が強い?

第1問
あなたは自社の「マーケティング担当者」です。新規商談の獲得数を目標にしています。次のユーザのうち、営業担当者に商談して欲しいと思うものに○をつけてください。

  1. Web広告から資料請求したユーザ
  2. ウェビナーのアンケートに回答したユーザ
  3. メルマガ内の見積もりボタンをクリックしたユーザ

第2問
あなたは自社の「営業担当者」です。普段は既存顧客への営業だけで目標を達成しています。ある日、自社のマーケティング担当者が集めた見込み顧客に、自分で電話してアプローチして欲しいと依頼されました。次のユーザのうち、対応したいと思うものに○をつけてください。

  1. Web広告から資料請求したユーザ
  2. ウェビナーのアンケートに回答したユーザ
  3. メルマガ内の見積もりボタンをクリックしたユーザ

1問目・2問目ともに○が多くついた方は、マーケティング担当者としての視点が強いでしょう。逆にどちらも○がつかなかった方は、営業担当者の視点が強いと言えます。私自身も、マーケティング活動をしているときは全てに○を付けたくなりますし、営業活動をしているときは一つも○を付けたくありません。

このクイズを通じ、営業視点とマーケティング視点を同時に持つことの難しさをご理解いただけたでしょうか? どちらかの立場になれば、もう片方の視点を失ってしまいます。この視点のギャップを認識しなければ、マーケティングで売上を伸ばすことはできません。

よかれと思って増やしたリードは、なぜ営業から無視されるのか?

マーケティング担当がよかれと思って集客した新規問い合わせは、営業担当に無視されます。「それならばアポイントメントまで取ろう」とインサイドセールス組織を立ち上げれば、「余計なアポを増やすな」と怒られます。営業からすれば、既存のお客様相手で忙しいなか、見込みの薄いアポイントメントを無理やりねじ込まれて不快極まりないのです。

マーケティング部門は営業との連携にどんどん消極的になり、自部署だけで完結する「ツール導入」「データ統合」「デザイン刷新」といった「やった感のある自己満足の仕事」に邁進し始めます。しかしこれらの仕事は、売上には一切貢献しません。営業からは「あいつら勝手に何かやっているな」「私達の稼いだお金で無駄なことして腹立たしい」と思われ、溝を深めるだけです。

最終的には「マーケティングは費用対効果がわからない」と糾弾され、部署そのものがお取り潰しになります。残るのは「ほとんど使っていない最新鋭のツール」と「何に使うかわからないけど統合してみた顧客データ」だけです。

言うまでもありませんが、マーケティング担当は営業担当の邪魔をしてはなりません。足を使った営業担当を全力でサポートすることから取りかかるべきです。具体的には、トップ営業が人力で作り上げる顧客体験を、デジタルなど別の手段で再現していけばよいのです。

マーケティング担当は「トップ営業の振る舞い」を部分的に再現せよ

1. 顧客リストを捨てさせる

トップ営業は「誰と付き合うか」を重視します。言い換えれば、薄い顧客リストをどんどん捨てることで、大切な顧客に使う時間を捻出しているのです。決まる見込みのない顧客をリストに残し続け、営業日報で「そろそろ連絡がくるかもしれません……決まれば大きな案件なので……」と自信なさげに発言するのは三流の営業担当者です。

マーケティング部門としては、一定期間連絡していない、あるいは進捗していない顧客は、もう営業が追わなくて良いと思えるように仕向けます。放置しているリストは捨てさせるというルールを作るのでも良いですし、それでは営業担当が納得しないというなら、魅力的なリードを次々に供給するという方法でも構いません。

そのためには「付き合いたい顧客リスト」の品質を、営業とマーケですり合わせることが欠かせません。企業規模や役職、検討段階など、細かく要望を吸い上げましょう。「要望通りのリードを渡しているのに放置されてしまう」なんてこともザラにあるため、何度も粘り強く対話を重ねる必要があります。

それに「今月は繁忙期なので新しいリードはほとんどいらないが、来月は閑散期なのでたくさん欲しい」といったワガママも日常茶飯事です。月に1回は営業と会議を設けて、リードの品質条件や実行施策を調整しましょう。

2. ゴールまでの障壁を細かく刻ませる

続いてトップ営業は、商談を何度か繰り返すことで商品を顧客にカスタマイズしていきます。逆に売れない営業担当ほど、冒頭でヒアリングの真似事だけをして顧客の状況を踏まえず商品を紹介し、一回の商談で勝負を決めようとします。ニーズが顕在化していない顧客であれば失注まっしぐらです。

ここでマーケティング部門が取り組むべきは、どんな営業担当であっても少しずつ購入障壁を越えられるような、段階的な商品ラインナップを開発することです。たとえば、最初は安価で短期的に利用できる「お試し商品」を、次に「割安の定期購入商品」を、最後に「付加価値の大きい高単価商材」を提案するようなアップセルのストーリーを設計するのです。

障壁設計の考え方はリード獲得時にも役立ちます。たとえばランディングページのCVボタンの文言を「お問い合わせ」から「料金表ダウンロード」に変えればCV率は大きく改善します。ただし検討段階の異なるリードが入ってくるため、インサイドセールスなど後工程もあわせて変える必要があります。

このように、障壁設計は組織をまたぐ調整が必要なことがほとんどです。しかしその面倒さに耐えてでも、十分な見返りが得られる重要な改善点です。

3. 「無駄」と「本音」のコンテンツで信頼を得る

普通の営業担当ならば、いざ顧客を目の前にすると自社商品を売り込みたくなります。しかし顧客のニーズが潜在的であれば、いきなり商品の話をされてもうんざりされてしまいます。それにニーズが顕在化していたとしても、その商品の話しかしなければ、それだけの付き合いに終わります。

一方でトップ営業ならば、LTV(LifeTimeValue/顧客生涯価値)最大化のために、あえて遠回りをします。顧客から信頼され、愛されることに力を尽くすのです。

たとえば、自社商品とは関係のない課題であっても必死に調べて回答するなど、一見すると商売から遠くて「無駄」だけど顧客との関係性を深める活動を積極的におこないます。また、自社にだけ都合のいいポジショントークだけではなく、自分の商売のマイナスになりえることも「本音」で話します。信頼さえ獲得すれば、商売の話はあとからいくらでも降ってくるからです。

このようなトップ営業の「無駄」と「本音」を誰もが再現できるよう、マーケティング部門は「コンテンツ」を作って配りましょう。ホワイトペーパーでもブログ記事でもなんでも構いません。顧客にとって価値ある情報を作って公開すれば、その企業自体の信頼が高まります。

しかし残念なことに、世の中には中途半端で面白くないコンテンツがあふれています。当たり障りない編集方針でスタンスを取らず、他でも聞いたことがあるような内容を寄せ集めただけの薄い記事は誰の目にも止まりません。トップ営業がトークを聞き出し、狂気に満ちたコンテンツを作りましょう。

BtoBマーケティングの定石
なぜ営業とマーケは衝突するのか?

BtoBマーケティングの「本音」を詰め込んだ一冊

本書ではアクセス解析データやオープンデータをもとに分析・改善提案・施策評価を自動で行う「AIアナリスト」を利用している3万社を通じて得られた、改善施策の成果データや競合比較でのベストプラクティス、これまでの垣内氏のコンサルティング経験を踏まえた知見が惜しみなくまとめられ、デジタル活用の「正解・不正解」を一刀両断します。

私が書籍「BtoBマーケティングの定石」を執筆した目的も、まさにコンテンツで信頼を獲得するためです。この本の中には、「商材によってはデジタルを使わなくていい企業もある」などと赤裸々に書いていますが、これはデジタルマーケティングを支援する当社にとって何の得もありません。それでも伝えるのは、信頼獲得がなによりも尊いと考えるからです。

掲題のとおり「マーケが増やしたリードが営業から見向きもされない」と悩む企業の皆様へ、ぜひ手にとっていただければ幸いです。

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