BtoBマーケティング最前線

メルマガの「送信頻度」と「購読解除率」に相関なし|BtoBでは広告よりも“メール”が効く理由

意外とコスパが高い「メール配信」。本文作成に凝りすぎたり、送るのを遠慮していませんか? たった数分でメールを作り、クリック率1.2倍に上げたWACULの垣内勇威氏がメールの配信における意識を紹介します。

「うちもタクシー広告をやらないか?」
「うちもYouTubeに動画広告を載せないか?」

読者の皆さんも、経営者から認知広告の検討を要求されたことが一度はあるのではないでしょうか?

たしかにこうした認知広告によって得られる「純粋想起」の獲得は、BtoBマーケティングにおいて重要な施策です。「純粋想起」とは、「BtoBマーケティングといえば、株式会社WACUL」のように、あるユーザにとって特定のカテゴリと紐づけて特定のブランドが思い浮かぶ状態を指します。

タクシー広告に数千万円の予算を投じ、タレントに不可解なポーズを取りながら、社名とカテゴリ名を連呼させれば、純粋想起を得ることもできます。

しかし純粋想起は、「メール」によってほぼ無料で獲得できます。

BtoBマーケティングの定石 なぜ営業とマーケは衝突するのか?』(著:垣内勇威 氏 出版:日本実業出版社)

※読者プレゼント企画を実施中。応募は12/9まで

BtoB商材は「なんとなくよさそう」で選ばれる

本題に入る前に、BtoB商材において「純粋想起」の獲得が重要である理由を解説します。みなさんは、最近仕事で導入した商品をどのように選定しましたか? ゼロから探して、比較表を作って、コンペをして決めるというプロセスを踏んだ商品はどれほどあるでしょうか?

おそらく知り合いに紹介されたり、もともと知っていたりする企業に問い合わせたりして、比較せずに決めているケースもあるでしょう。「BtoBは合理的に選ばれるもの」だと思い込んでいる人が多いのですが、人間が選んでいる以上そんなことは決してありません。驚くほど非合理的かつ比較せずに意思決定しています。

人間は仕事であろうと趣味であろうと、できる限り楽をしたい、脳を使いたくないという生き物です。何かを全力で調べて比較するという面倒な作業はおこなわず、「なんとなくよさそう」だと刷り込まれた商品名があれば、思考せずに飛びついてしまいます。よってBtoB商材においても純粋想起は重要なのです。

純粋想起の獲得には、「商品名の連呼」が最も有効だと言われています。たとえば自動車業界は、10年に一度の買い替えタイミングに想起されるためにこぞってTVCMを打ちます。TVCMの中で純粋想起に効果があるのは、美しい車体でもなく、俳優の知名度でもなく、洗練された音楽でもなく、「車種名の連呼」です。

メールは圧倒的にコスパの高い施策

BtoB商材の場合、初回接点からニーズの顕在化まで長い時間がかかるため、できる限りコストをかけずに商品名を連呼したいところです。そこで最も有効な手段が「メール」です。一度メールアドレスを取得してしまえば、ほぼ無料で送り続けられるため、コストを垂れ流し続けるマス広告に比べて、圧倒的にコストパフォーマンスに優れています。

メールと言うと「オワコンでしょう」「そんなもの私は見ない」とよく反論されますが、ビジネスシーンでメールを使わない人はほぼいません。実際に成果の出やすい施策でもあります。それに純粋想起の獲得が狙いであれば、開封されなくても「送信者名」「件名」に商品名を書けば十分に効果を発揮します。

多くのBtoB商材はターゲットユーザが絞られるため、マス広告では大半が無駄なリーチになってしまいます。メールであれば狙った顧客にだけ、無駄なく低コストで純粋想起を獲得できるのです。

「送りすぎ?」の遠慮は不要

メールで純粋想起を獲得したい場合、少なくとも週1回は送るべきです。試しに皆様の受信ボックスを開いてみてください。「メールが届いている」という認識のある企業は、最低でも週1回は送ってきているはずです。さらに言えば、「メールが来すぎて鬱陶しい」という印象の企業はほとんどいないはずです。1日に何通も送ってこない限りネガティブな印象など抱きません。

多くの人が「配信頻度が高いと配信解除率が上がる」という固定観念を持っていますが、約2.5万件のメール配信データを調査した結果、メールの送信頻度と購読解除率に相関はありませんでした。購読を解除されるのは、基本的に顧客と約束していないメールや、全く関係ないメールを送ったときだけです。

メールの配信頻度を上げても配信解除率は低い数値で落ちつく

私がメールの頻度を上げる提案をすると、クライアントからは必ず「ウザがられるんじゃないか」と不安視する声が挙がります。しかし顧客はあなたのメールなど一切気に留めていません。大量に届くメールの中の「ワンオブゼム」にすぎないため、控えめに送ったところで気づいてもらえないだけなのです。

頻繁に送っても鬱陶しがられることはなく、それでいて誰から来ているかくらいは認識してもらえるため、メールは顧客との距離感がちょうど良い媒体です。無料で配信できる「バナー広告」だと思えば、顧客との距離感をイメージしやすいかもしれません。

逆にSMSやLINEは顧客との距離感が近い媒体です。メールと一見似ていますが、送りすぎると顧客にネガティブな印象を与えるため注意が必要です。

メール本文は凝らずに「サボる」

多くの企業がメールの頻度を上げられない理由のもう1つは、「作るのが大変」というものです。送るネタがない、デザイン制作コストがかかるといった声をよく聞きます。

結論から言えば、メールは「サボる」ことが成功の秘訣です。凝った内容、凝ったデザインは一切必要ありません。工数をかけず、頻度を上げることにフォーカスすべきです。

メールを開封したユーザのうち76%は7秒以下しか見ません。7秒で読める文字数は約140文字と言われていますが、これはメールで最初に表示されるファーストビューでほぼ終わってしまいます。ファーストビュー以下まで丁寧にコンテンツを作り込んでいる人がいるとすれば、まずその作業をやめましょう。

前述した約2.5万件のメール配信データを調査した結果でも、メールのテキスト量や、画像の有無によって、反応率(クリック数/開封数)は変わらないことがわかっています。

1通作り込むよりも、1回でも多く配信すべき

さらにメールを閲覧するユーザの行動を観察すればわかりますが、メールは「読まれる」ものではありません。脊髄反射的にリンクが「押される」ものなのです。まずメールの件名に興味を持てば開封しますが、ユーザが探しているのは件名についての詳細な説明です。詳細情報へのリンクを見つければ即座にクリックし、Webサイトに遷移してからじっくり読みます。

そのためメールの制作で重要なのは、興味を引く件名と、その詳細を期待させるリンクだけです。それ以外の要素は一切いりません。これだけ簡略化すれば、メールの制作工数を極限まで落とすことができ、頻度を上げられるようになります。

ファーストビューと見出しにCTAを置くシンプルな作りのWACUL(左)のメルマガ:CTRは1.2倍に向上

たとえば当社のメルマガは、ファーストビューに見出しとCTAを置くだけのシンプルなテンプレートで運用しています。1通の制作時間はたったの数分です。約1時間かけて毎回オリジナルのメールを作成していた昔に比べると圧倒的に工数を削減でき、なおかつクリック率は1.2倍に向上しました。

マーケティング施策は「やったほうがいいものの、必須ではないもの」が非常に多く、常にやめることを意識していなければ雪だるま式に仕事が増えていきます。無駄な仕事はバッサリやめていくというルーティンが不可欠です。

BtoBマーケティングの定石
なぜ営業とマーケは衝突するのか?

流行りにとらわれずBtoBマーケティングの正しい戦略を学ぶなら

タクシー広告、ホワイトペーパー、ウェビナー、インサイドセールス、カスタマーサクセス……BtoBマーケティング領域では施策がよく独り歩きをします。

特に最近は「BtoB SaaS」の事例が多く、さもそれが「BtoBマーケティング」のすべてであるかのように広まってしまっています。

しかしSaaS以外の大半のBtoB企業が、自社の顧客を正しく理解せずに新興企業の真似事をしたところで、正解から遠ざかるばかりです。

書籍「BtoBマーケティングの定石」では、BtoB事業者を戦略別に3つに分け、それぞれに対し「何をなすべきか」以上に重要な「何をしなくていいのか」を明らかにしました。今一度自社のBtoBマーケティングの戦略・戦術を見直したい皆様は、ぜひ書籍をご覧いただけると幸いです。

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