エンジニアを推す仕事「技術広報」をはじめました
こんにちは、ヘイ株式会社の"えんじぇる"こと加藤です。
みなさん、「技術広報」という言葉をご存じでしょうか? 近年テック企業を中心に新たな広報・PR施策としても注目を集めている業務です。
私は7月からテクノロジー部門エンジニアリング室に異動となり、この技術広報を担当することになりました。この1年はPX(People Experience)部門の広報として採用広報をメインに取り組んできましたが、技術広報は採用広報とは目的も役割も異なるので、また新たな挑戦に取り組んでいる気持ちでもあります。
そこで今回は、技術広報の仕事についてご紹介します。なお、ここでいう”技術”は、主にソフトウェア開発に限った話であることは、ご了承ください。
技術広報の役割
技術広報の役割は、「技術を切り口として自社の認知を拡大し、その企業価値を高める」ことです。具体的には、どのようなエンジニアが在籍していて、どのようなサービスを提供していて、それがどの開発言語で作られていて、どのような技術力があるのか、などを外部に発信していくことで、認知を獲得していきます。
とはいえ、技術広報だけが発信活動をするわけではなく、むしろ社内のエンジニアの技術的情報発信を促すことが主な役割です。ここが事業広報との大きな違いのひとつで、採用広報とは少し似ているかもしれません。
技術広報の重要性
技術広報の重要性と目的は、主に以下の3点に集約されます。
1. エンジニアコミュニティのため
前提として、エンジニアには「アウトプットによって成長する」という文化が広く共有されています。
技術書などの書籍執筆、専門Webメディアでの寄稿だけでなく、ブログ投稿、勉強会やカンファレンスでの発表、技術同人誌の発行、ポッドキャストなど、近年はアウトプットの場は多岐にわたります。それもエンジニア独特のアウトプット文化があればこそでしょう。
会社としてアウトプットの場を担保することは、この文化を理解しバックアップするという姿勢の表明でもあります。これによってエンジニアからの共感を得ると同時に、自社の技術価値を高めることにもつながります。
2. エンジニアのキャリアのため
エンジニアにとって、アウトプットのメリットは計り知れません。
アウトプットには、経験を言語化するという作業が伴います。他人に伝わるように再考したり、不明点に気づいてそれを調べたりすることで、これまでインプットしたことを体系的に整理する機会になります。また、アウトプットを通して得られたフィードバックから学ぶこともできます。この繰り返しによって、エンジニアは自身の技術や思考を高めていきます。
また、エンジニアのアウトプットによって、周囲の人間もまた学びを得ることができます。エンジニア自身だけでなく、周囲の環境にも良い循環をもたらすのです。
ちなみに、アウトプットは転職にも役立ちます。アウトプットをまったくしないエンジニアの場合、転職の際は選考時に逐一自分の技術力を説明する必要がありますが、日常的にオープンな場でアウトプットしていれば、すでにネット上に実績が揃っています。どちらの情報量が多いかは自明でしょう。これに関しては、非エンジニアにも参考になる話かもしれません。
3. 技術系人材採用のため
ご承知のとおり、現在のエンジニア求人数は右肩上がりで、採用は年々激化しています。この争奪戦はしばらく収まることはないでしょう。
この厳しい採用市場を勝ち抜くには、エンジニアが「この会社に転職したい」と思うような会社にならなければなりません。技術広報は、自社の技術を発信することで、採用広報を後方支援する一面も持っています。
2022年5月に日本CTO協会が発表した「Developer eXperience AWARD 2022」は、技術者を対象に「開発者体験が良いと思う企業」をアンケートしたものです。この上位30社はまさに、「エンジニアが選ぶ、開発者体験が良いイメージのある企業ランキング」だといえるでしょう。
残念ながら弊社はランクインしていないのですが、このように、エンジニアの転職者に「指名転職」されるようになるのも、技術広報の目的のひとつです。
技術広報の仕事
技術広報が関わる発信媒体は、想像していた以上に幅広く、種類が多いです。代表的な媒体を、自社メディア/外部メディアに分けて以下に列挙します。
技術広報は、イベント運営のサポートのほか、こうした媒体に社員エンジニアが登壇/掲載されるためのアプローチやネタ出しなど、エンジニアが発信をするための後方支援を行います。
自社メディア
- 自社のエンジニアが登壇し、自社サービスの裏側にある技術を紹介する
- 大手企業が主催する代表的なエンジニア向けイベントは「DeNA TechCon」「GREE Tech Conference」「LINE DEVELOPER DAY」「Merpay Tech Fest」など
- 一般的に「開発者/技術ブログ」といわれるもので、エンジニアやプロダクト開発に関わるメンバーが、自社媒体で自社の技術や最新テクノロジーを紹介する
- 代表的な技術ブログには、クラスメソッド社の「Developers IO」
- 自社のエンジニアやプロダクト開発に関わるメンバーがPodcastで技術に関わるトークをする。テキストベースの発信と比べて、本音トークやユルさが持ち味
- 近年Podcast配信に取り組む企業は増えており、代表的なところでは「devchat.fm」「texta.fm」「Backyard Hatena」など
※ちなみに、弊社でもPodcastをやっています。ヘイ株式会社CTO藤村大介がホストを務める「論より動くもの.fm」は、Apple PodcastとSpotifyで配信中です!
外部メディア
- 「RubyKaigi」や「iOSDC Japan」など、特定の技術をテーマとしたカンファレンスでのスポンサード(ロゴ掲出、ノベルティ配付、スポンサーセッション)は特に効果が高い
- 協賛費用はカンファレンスの規模により大きく異なる(数十万円〜数百万円まで)
- 事前にスピーカーを公募するカンファレンスも多い
- オウンドメディアに掲載したコンテンツを外部メディアに転載するというパターンもここに含まれる
技術広報の仕事は「推し活」に似ている?
技術広報の主体はあくまでエンジニアで、技術広報自身ではありません。これが私の性質にマッチしているのか、技術広報に携わってまだ数ヵ月ですが、楽しく仕事ができています。
エンジニアの方たちが持っている発信の種を見つけては、「その話、ここで発信してみてはどうでしょう?」と勧めてみたり、彼らがイベントで活き活きと話している姿(そしてそれが終わってホッとしている姿)を見たりすると、私も楽しい気持ちになります。
これは「私の推しをみんなに知ってほしい!」という、オタクの布教行為に通じるものがあるような気がします。
異動して、周りがエンジニアばかりの環境になったことで、日々彼らのすごさを実感させられています。特に技術を使ってより効率の良い方法を提案することに長けています。私自身、仕事の効率化は意識して取り組んできたつもりでしたが、彼らは本当に、技術で課題を解決するプロなんだなと改めて実感しています。これも強力な推しポイントですし、こうした実感を日々の業務に反映させていきたいと思っています。
一般的に、技術広報は、エンジニアが兼任していたり、元エンジニアからのジョブチェンジが多かったりする中、広報職から異動してきた私では技術的な知識が乏しいことは事実であり、不安な点ではあります。
ただ、技術的な素養のない一般人から見た「エンジニアってすごい!」という視点は、案外大きな武器になるかも、と密かに思っています。まずは、推しを推していく気持ちで、これから頑張って取り組んでいきたいと思っています!
ご感想、ご意見があればぜひ、お気軽に私のTwitterアカウント(@sweet_chiho)へリプライをいただければ幸いです。
おまけ
技術広報について、オススメの紹介記事です。こちらもぜひどうぞ!
「技術広報の役割を定義してみた 2022年春 ――メルカリ技術広報のお仕事」。メルカリのEngineering Officeに所属する木下雄策さんによる、技術広報の仕事の定義。確かに、技術広報って仕事の範囲が広いので、「技術広報の本質はこれだ」と、軸を決めるのは大事なことだと思います。
「『技術広報のゴールはアウトプットの文化を作ること』アスクルのEMが語る、エンジニア組織の立ち上げ時に意識したい広報のコツ」。アスクルのEM(エンジニアリングマネージャー)小谷侑哉さんによる事例紹介。技術広報の目的を「採用を目的とした社外エンジニアへの広報活動」と定めて、そのためにどういう活動を行っているか詳しく紹介しています。
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