Step 3-14 Web制作のあるある6! こんな時どうするの?
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Step 3最後の3-14では、連載「Web担ビギナー」の多くを監修し、数多くの資料を提供してくださったキノトロープの濱田 優さん、濱 大洋さん、高橋 輝さんにお話しをお聞きしました。テーマは「Web制作で起こりがちなこととその対応ポイント」。多くの企業サイト構築のご経験から、実感されていることをまとめました。
まずは、Webサイト構築の途中で、「設計時とは異なるシステム構成にしたい」という話が出るケースから。
あるある1:サイト構築途中で、システム構成の変更がある
濱 大洋さん(以下、濱):Web制作を進めていくうちに、設計時に決めていたサーバー構成を安価なものに変更したい、あるいは社内の他のサーバーと同じところに置きたいというお話をいただくケースがあります。
高橋 輝さん(以下、高橋):たとえば、サーバーの予算が毎月決まっている会社だと、どうにかそこに抑えようとスペックを下げる場合もありますよね。弊社が制作している場合は専用のサーバーを用意してもらうことが多いのですが、既存の他のサイトやシステムを同居させることで費用を抑えられないか、またはスペックを落とすことで費用を抑えられないかというお話をいただくこともあります。要件との相対となりますが、「削れるところはどこか?」と、いろいろ検討してスペックを削っていったりしています。
濱:そうした場合、本来であれば、システム構成の変更に伴ってKPIの変更も検討しなくてはいけないんですが、発注側のWeb担当者の方も忙しくてなかなかできず、KPIの数値は当初の理想のままでシステムだけがスペックダウンして公開されてしまうことがあります。そうなると、例えばページの表示速度が当初の目標をクリアできないといったことが起こり得ます。システム構成が変更になったら、関連して影響が出る箇所が発生するはずです。その都度、影響範囲と変わる点を共有して進めたいですね。
POINT:構築途中でシステム構成を変更したい場合は……
システム構成の変更に伴って、影響が出る箇所を整理して、変更点を共有し、認識合わせを行う。特にKPIへの影響は重要。
あるある2:サイト構築途中・公開後に、体制・担当者の変更がある
濱田 優さん(以下、濱田):Webサイト構築途中で、事業側に人事異動などがあり、Web担当の責任者が変わることもあります。そうなると、当初の運用体制が変わるときもあるんです。たとえばWebサイトにあてられる人員が減ったり、コンテンツをたくさん作っていこうと企画していたのに誰が作るのかがフワっとして明確ではなくなってしまったりとか。
こうしたことは公開後も同様で、リニューアルサイトの公開までは旧コンテンツの引っ越しや新コンテンツが制作されるんですが、公開してから一切コンテンツが増えないということもあります。Webサイトの成果を高めていく体制が決まらないケースも、長いプロジェクトだとたまにありますね。
つまり、Web担当責任者が変わると、サイトの目的が忘れられがちになってしまうんです。だからこそ、引継ぎが重要だと思います。担当者が変わる際には、実施事項だけでなく、「何のためのWebサイトなのか」「何のための機能なのか」「何のためにコンテンツを増やすのか」といったことも引き継ぐことが大切ですね。
POINT:構築途中・公開後に担当者・体制が変更になる場合は……
引継ぎでは、Webサイトの目的、何のためにある実施項目なのかという「何のため」の部分を引き継ぐ。
あるある3:公開後に、コンテンツ作成者が変わり、デザインがくずれる
濱:公開後に担当者が変わるという話が出ましたが、コンテンツを作る人はもっと変わります。要件定義を知らない新しい人は、「こういうふうにやりたいけど、この機能が実装されていないのはなぜだろう?」「デザインガイドラインのこの部分って、本当にこれでいいの?」というふうになりがちです。そこで大切になってくるのが、「なぜこの機能なのか、なぜデザインガイドラインに沿わなくてはならないのか」を伝えるための定期的な勉強会など、コミュニケーションだと思います。社内勉強会を行ったり、たまには制作会社をまじえた質問会を催したりするのもいいですよね。
デザインガイドラインは長期的な指標で、すぐにはアクセス数に影響が出るわけではないですから、ガイドライン自体が重要視されなくなって、ガイドラインに即していないコンテンツがどんどん作成される場合もあります。デザインは年単位の施策なので、ブランドを守るためにも、定期的な勉強会をやるといいと思います。
POINT:公開後にコンテンツ作成者が変更になる場合は……
デザインは長期的な施策。定期的に勉強会などを開催し、コミュニケーションをもつ。
あるある4:公開後に、素材が管理できていなくて、更新に手間取る
濱:コンテンツ更新という意味では、細かなことですが素材管理も重要です。管理がしっかりしていないと、「このページのこの画像はどこに保存したのか」「そもそもこの画像の購入元はどこか」などがわからず、ページの更新に手間取ることがあります。たとえ担当者が変わってもわかるように、わかりやすく一覧でまとまっている資料があるといいですね。「Step 3-7 奥が深い素材収集。効率的な管理のしかたとは?」で紹介している「素材収集の進捗管理表」を公開後もずっと更新し続けるといいと思います。忙しいと難しいかもしれませんが、都度更新しておくと後で苦労しませんのでおススメです。
濱田:素材の管理とは違いますが、リニューアルする場合に画像でよくある問題は、既存の画像が加工済の画像で、Webサイト表示のサイズのものしかない場合です。リニューアル後はサイズが大きくなることの方が多いですし、今後のことも考えると修正できるように、元画像も納品してもらうといいですね。
濱:そうですね。使っていたフォントが何かがわかるためにもPhotoshopやIllustratorのデータファイルも納品してもらっておくことも大切です。そうでないと、1から起こすことになる可能性があります。たとえば、商品画像も小さいサイズしかないとなると、それを無理やり引きのばすわけにもいかないので、撮影しなおすか、そもそものページデザインを変えることにもなりかねません。
そうなると、工数に占める割合はけっこうインパクトがあるので割高です。リニューアルするときは、Photoshopデータをもらっておいた方が予算的にも抑えられると思います。最初のRFPから、PhotoshopやIllustratorのデータファイル納品について記載しておくといいですね。
POINT:公開後に素材が管理できていなくて更新に手間取らないためには……
誰が見ても素材が管理できる一覧表を作成し、都度更新する。
また、画像ファイルは、PhotoshopやIllustratorのデータファイルも納品してもらう。
あるある5:スケジュールに追われて、サイトの目的を忘れがちになる
濱田:Step 1から3のすべてのステップにいえることですが、「重要なのは、そもそものWebサイトの目的を忘れないこと」ですね。やはり忙しいと、作業が目的になってしまうパターンに陥りがちです。その方が楽ですが、「何のためにそうするのか」は常に忘れずに、ということが一番大切だと思います。
いつでも立ち戻れる場所としてStep 2で戦略立案をしっかりやっているのは、そのためでもあります。上流工程で決めた目的・目標を、プロジェクト後半でも、公開してからも、定期的に確認してほしいですね。
POINT:スケジュールに追われて、サイトの目的を忘れないようにするには……
プロジェクト内で、定期的に上流工程で決めた目的・目標を確認する。
あるある6:画面で確認できるようになると、「この表示を変えたい」と思うようになる
濱:制作が進んで画面を見て操作できるようになってくると、やっぱりこうしたいとか、変えたいというのが出てきますよね。そういう時に良い判断ができるためにも重要なのが、要件定義書や設計書です。これらを読めば、この目的のもと、こういう要件で、こうした設計で、というところに立ち返ってチェックすることができますから。
もちろん、チェックした結果、仕様を変える場合もあります。その際、予算やスケジュールも検討材料になりますが、その影響範囲の理解も重要な検討材料です。というのも、「商品の表示のしかたを変える」場合、「データの扱い方も変わる」ことがあります。システム的に大きな変更になることもあるわけです。
高橋:たとえば、ある商品の商品紹介ページでは、シリーズ1個でページを1ページ作っていたのを、「他社さんは色違いごとに細かい説明があるので、同じように、各色でページを作りたい」ということになると、そもそもの商品データの持ち方が変わってきてしまいます。商品データの設計から変更になるわけです。
濱:そうしたデータの持ち方を含めて、要件定義や設計書作りのときに、競合他社の情報を含めて、いかにきちんと検討しておくかが重要だと思います。
POINT:画面で確認できるようになり、「この表示を変えたい」場合には……
予算やスケジュールはもちろん、その影響範囲も理解して検討する。
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