[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

ちゃんとなくしていますか? マーケティングチームの“ムリ・ムラ・ムダ”

マーケターコラム、今回はテレビ東京・明坂真太郎氏。効率的なマーケティング組織づくりのためのナレッジ活用について。
テレビ東京 明坂真太郎氏

こんにちは、テレビ東京の明坂です。今年は正月休みが比較的長かったので、旅行に勉強に趣味に充実した休暇になりました。あなたはいかがお過ごしでしたでしょうか。

さて、みなさんは「組織でマーケティングを行う上で、大切なこと」といったら、いま何を思い浮かべますか。当然、人によって様々あるとは思うのですが、いま私が最も関心があるのはナレッジの“蓄積と共有”です。

私は過去複数回の転職を経て、様々な規模およびフェーズのマーケティング組織で働いてきました。そのなかで、マーケティング組織の効率(ここでいう効率は、いかにして少ない労力で成果を上げるかという意味)を上げるための仕組みとして、たいていの場合「これはやっておいたほうがいい」的なものは個人的に見えてきました。しかし、今働いているテレビ東京も含め、まだまだそれが実現できていない企業は多いと思います。

というわけで、今回は組織でマーケティングを行う上で必要となる“効率的な組織づくりのためのナレッジ活用”の話です。

マーケティングの仕事効率はナゼ上がらないのか

このテーマを書くに至った背景を少しお話しします。みなさんの組織では過去行われた業務の結果や、その結果を出すために重要だったポイントまたは発生した課題はどのように蓄積され、再利用されていますか。

私が入社した数年前のテレビ東京では、当時ほぼその仕組みが存在しませんでした。あるいは過去の知識があったとしても、その業務を行った人の頭の中にのみ存在している状態でした。極めて属人的であって、それらの知識は人事異動などでいともたやすく失われ、新しい担当者はまた同じ轍を歩みます。以前と同じ業務を行うのに(本来は考えないといけないことを減らせるところを)同じだけ時間がかかり、以前と同じ課題に(本来は回避する余地があるのに)同じように追われる。そんなことが平然と行われてきました。

しかし、だとすれば、知識を蓄積して次回活かせるよう仕組み化すれば解決できるじゃないか。誰しもが思うことでしょう。しかし、そうはなっていません。なぜでしょうか。私が思うには主に以下の3つのポイントが原因だと思います。

1. 活用する先が定義されていない

仮に、マーケティング業務が今後もチームではなく1人で行うものだとしたら、情報を蓄積しても自分のためにしかなりません。当然それでもやったほうがよいですが、より価値を高めるために、今後ナレッジを活用することで誰が何を判断するのか。つまり目的を定義しなければ、その行為に意味を見出すことはできません。

また、マーケティング組織という範囲だけではなく、全社または事業として価値あるものとするために、他のチームにとっても必要な価値ある情報が何か、それをどう伝えていくかという観点を押さえておくことも理想です。これらを事業やチームのマネジメントレイヤーとあらかじめ意見をすり合わせておく必要があります。

2. 体系化と標準化がなされていない

データ活用における文脈では、「ただ雑多にデータを蓄積しても意味がない」という話がよくなされます。データの欠損または重複、関係ないデータの存在、粒度がバラバラで意味のある整理ができない。そんなノイズだらけ状態のデータをいくら集計したところで、正しい答えを得ることは難しいという話です。

これはマーケティングにおいても同様です。少し具体的なケースを挙げると、たとえばプロモーション施策でWeb広告を打ったとして、コストがいくらでCPA(獲得単価)がいくら。担当者が思い思いにそのデータだけを残したとしても、目的、ターゲット、CV(コンバージョン=成果)ポイントなどのいずれかが不明だったりバラついていた場合、比較したり参考にしたりすることが難しくなります。

プロモーション施策であれば、顧客が未知の状態から継続利用までのカスタマージャーニーを定義した上で、「どの状態の人(ターゲット)に、何をしてもらうため(目的)に、何を測るのか(CVポイント)といったことをあらかじめ定義し、チームで合意する」といった形で、一つひとつの施策をどのように整理するかを考慮する必要があります。

3. 評価にならない

優れた管理者であれば、組織として効率よく業務を行う仕組みを開発し定着させるでしょうし、組織のパフォーマンスを上げるように働きかけるメンバーを評価するでしょう。ただ、そうなっていない=管理者の能力問題というわけではありません。

マーケティングという専門的な領域における効率化の仕組みづくりには、前述したような中長期的な組織設計や業務の標準化というプロセスが不可欠で、すべての管理者がマーケティング領域のスペシャリストでもない限り難しいものがあります。自動的によい仕組みが開発されないだけならまだしも、現場自ら仕組みを作ろうとしても、理解も評価もされないことがあるかもしれません。

自身の評価にならない業務を率先して行うのは虚しく、継続することが難しいものです。マーケティング組織における「ムリ・ムラ・ムダ」の可視化、解決手段、今後のあるべき姿といった要素をすり合わせ、評価すべき要素をすり合わせる、またはその価値観の啓蒙から行う必要があります。


これら「活用する先が定義されていない」「体系化と標準化がなされていない」「評価にならない」という3つの要因が知識の蓄積と活用を阻み、「組織的に見ると経験曲線が効くはずの作業で労力を削減できない」「同じ課題に直面し成功確率が上がらない」といった非効率を生んでいるのだと私は思います。

自らがマーケティングをファシリテートする

では、どのようにすればこの問題は解決するでしょうか。手段の一つは情報の集約です。

自身が行ったリサーチが過去に別の部署で実施されていた、自分がこれから行おうとしているキャンペーンと同じようなことを経験していた人がいた。そんな経験はありませんか。情報を扱う場所が集約されることにより、そういった重複が解消されることが期待できます。

現在私が所属するテレビ東京では、去年まではマーケティングという名前がつく組織が各部署に個別に存在し、リサーチ業務やプロモーション業務などをバラバラに行っていましたが、本年度よりマーケティング関連部署を集約した新たな部局として整理されました。

また前職のリクルートでは、2012年に事業領域ごとに分社化し、それぞれのマーケティング組織がそれぞれの事業に特化したマーケティング業務を行っていましたが、2021年4月には再度、株式会社リクルートとしてマーケティング組織も統合されました。

2013年当時、リクルートで求人メディアのSEO(検索エンジン最適化)を担当していた私は、施策の起案から実装、効果検証まで最短でも数ヵ月かかる(つまり経験が得づらい)SEOという業務の特徴を踏まえて、率先して他の事業領域のSEO担当者と情報共有の機会を作っていました。SUUMOやじゃらんをはじめとする、同じような規模・構造のWebサイト担当者同士のナレッジシェアにより、自らの経験は何倍にも増幅され、より高い精度での施策プランニングを行うことができました。

テレビ東京においても、組織変更に伴い情報は集約され、存在する情報が見えてきたと同時に、マーケティング業務におけるムリ・ムラ・ムダも可視化されてきました。しかし、前述のとおりそれらを効率化するということが、しっかりと目的として実行されるように組織全員の価値観が変わるまでにはまだまだ時間が必要です。また、多くの人に理解できるような体系化・標準化は、深い専門性と経験を持っている人間がリードしなければ、組織をあるべき方向へ向かわせることができません。

人の価値観を変えるのは一朝一夕にはいかないものです。マーケターとして組織のマーケティングをリードし、ファシリテートするという意志を持って粘り強く取り組もうと心に刻んでいます。

課題への対応は上層部をまきこみながら

さて、ナレッジの活用に関する課題として、「やらないといけないことは理解しているが、実際に運用を回せるほどリソース的な余裕がない」、または「どうすればうまく仕組みを回せるのかわからない」みたいな話はよく出るのではないかと思います。いずれのケースにおいても、体制で解決するのがスマートだと考えます。

ナレッジの効率的な活用はムダを省いて効率を上げることが目的なので、「忙しいから効率化できない」「効率化できていないから忙しい」というのは「ニワトリが先か、卵が先か」の話で、効率化できない業務が多くてすでにギリギリの自転車操業状態なのであれば、対応するための新たなリソースを獲得しなければ解決しません。

組織体制や人事評価にまつわる権限を使うため、管理者との連携が不可欠にはなりますが、例えば内部もしくは外部から評価ができるスキルを持った人を集めてマーケティング本部機能を構築し、評価委員会的な動きができれば前述した課題は共に解決に向かいます。現場視点から語ると、課題と解決策を明示した上で、いかにしてボトムアップからトップダウンを導けるか、そのための主体的な動きが求められます。

最後に少し手段の話

メンバーそれぞれがチームにレポートする習慣が根づいたとして、ナレッジ共有の効率を上げるにはどうすればよいでしょうか。

手段としてはGoogle ドキュメントにファイルとして溜める、社内Wiki、Qiita Team(キータチーム)やDocBase(ドックベース)をはじめとした情報共有ツールを使う、などがあります(メールでの共有もなくはないと思いますが、受信していない人があとから検索することが不可能なのでここでは除外します)。

どのツールも書きやすさや共有のしやすさ、再利用のしやすさなどで一長一短がありますが、個人的にはMarkdown方式で書けてかつ、Slackなど幅広いタイムラインに連携できるQiita Teamなどの情報共有ツールがおすすめです。

ふだん見ているタイムライン上で確認できるので共有に気づきやすい、レスポンスしやすい、またGoogle ドライブなどに比べ、タグ付けや投稿者検索などが行いやすいため情報の再利用がしやすいなどが利点です。

一方で、これらの情報共有ツールは(数十名以上で利用する場合)年間10万円以上の費用が必要なので、過疎ってしまうとまた新たなムダが生まれるだけ。ですので利用者全員が週1本以上は何かしらアウトプットするという文化作りをすることが併せて必要になりますが、うまく回っている組織では極めて強力なナレッジベースになるので、やる気のある方はぜひ検討してみてください。

◇◇◇

本テーマやそれ以外についてもくわしく聞きたいことなどあれば、ぜひお気軽に私のTwitterアカウント(@dr_akesaka)へリプライをいただければ幸いです。

それでは。

※Special Thanks
本記事の執筆にあたり、株式会社スケダチの高広伯彦氏より貴重なご意見をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。

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