【新連載!】KPIを達成してもビジネスに効果があるように感じないのですが……?
新連載がスタート。オーガニック運用・広告配信・危機管理など、企業のSNS活用のポイント、最新情報を、SNSマネージャー養成講座の講師陣「チーフSNSマネージャー」のメンバーが、それぞれの得意分野を中心に解説します。
フォロワー数をKPIに設定してSNSを運用してきました。先月に目標数値を達成したのですが、正直「それが何だ」という気がしています。認知度を高めたいために始めたSNSですが、フォロワー数を確保することによって認知度は向上しているのでしょうか?
せっかく獲得したフォロワーは有効に活用しましょう。ただし「認知度を拡大すること」が目的なら、改めて閲覧数と言及数をKPIに設定し、目的とチェックするべき指標を合致させて運用しましょう。
フォロワー数を獲得することが、はたして当初の目的と合致しているのか。疑問を持たれたこと自体がすばらしいと思います。そういえば、私が実際にクライアントさまの施策をお聞きした際に、よくお伝えしているセリフがこちらです。
なんでKPIが pic.twitter.com/KMJ5X1UPgK
— 田村 憲孝 (@onikohshi) February 7, 2021
※音が出ますので、ボリュームを調整して視聴してください。
目的に合わせたKPIを設定する
ご質問についてですが、SNSの運用目的は「認知度を高めたい」ですね。では、SNS上で認知度が高くなっていることを、どの指標をチェックすればよいのでしょう? 言い換えると、どの指標がどうなれば認知度が高くなったと判断できるのでしょうか?
ここで質問者さんの会社のように、「フォロワー数」をKPIにしたとしましょう。もちろんフォロワー数が増加すると自社アカウントから発信する情報が、より多くのユーザーに届けられるようになる、ような気はしますね。
でもこんなケースもあります。これは数万人のフォロワーがいる、ある企業のTwitterアナリティクスです。フォロワー数の割にインプレッション数は少なめで、「フォロワーが多い=多くの人に情報が届く」という式が必ずしも成立しないことが、ご理解いただけるのではないでしょうか。
もちろん、SNSを運用する上で自社アカウントのフォロワーが多いほうがベターです。しかし、認知度を高めたいのであれば最重視して追うべき指標はフォロワー数ではありません。
では改めて、SNSにおいて「認知度が高い」とはどういう状態を指すのかを考えてみましょう。これは、以下の2点が満たされているかどうかでしょう。
- 自社が発信した情報が、より多くの人の目に触れている。
- 自社の商品やサービスについて、より多くの人が話題にしている。
そのためにチェックする指標について、上記の2項目に当てはめて考えてみると、以下の2つになります。
- インプレッション数やリーチ数などの「閲覧数」
- 自社の商品やサービスについてユーザーが「自発的に言及している数」
フォロワー数はあくまでも、上記の指標を伸ばすための手段です。
外部での調査ツールを利用したり、大規模な調査を実施したりすれば、さらに正確な情報を得られますが、ユーザーが認知していることをSNS上で計測するなら、上記2点が妥当なところでしょう。
よってご質問に対する回答は、以下です。
せっかく獲得したフォロワーは有効に活用しましょう。ただし「認知度を拡大すること」が目的なら、改めて閲覧数と言及数をKPIに設定し、目的とチェックするべき指標を合致させて運用しましょう。
KPIが達成されたなら、目的も達成していないとおかしいのです。
ちなみにですが、言及数をチェックするなら、てっとり早く無料で使える「Yahooリアルタイム検索」を活用してもいいですし、詳細部分まで分析したいなら「クチコミ@係長」などのツールを導入されるとよいでしょう。
- Yahoo!リアルタイム検索:https://search.yahoo.co.jp/realtime
- BuzzSpreader Powered byクチコミ@係長:https://service.hottolink.co.jp/
正しいKPI設定は、社内のSNS抵抗勢力から担当者を守る
今回の質問者さんのケースのように、SNSの運用そのものや単発のキャンペーンで、目的とKPIが合致していないケースが頻発しています。
KPIは達成したのに目的が達成されず「SNSって役に立たないね」みたいな評価になると、社内からSNS運用に対して懐疑的な目が向けられるようになります。懐疑的に見られると、SNSが本来持っている長所を活かしきれないまま、SNSの運用規模や予算配分が縮小されるような事態にもなります。
上記のような不幸な事態を避けるためにも、目的に合ったKPIを設定しておくことはきわめて重要なのです。
運用目的ごとにチェックする指標の目安
SNSアカウントの運用の目的を細分化すると無数に展開できますが、大きく分けると以下のとおりです。目的に合致させた、KPIとしてチェックする指標もあわせて記載しておきますので参考にしてください。
(1)認知拡大
より多くの人に自社そのもの、自社の商品やサービスを知ってもらうことが目的です。間接的に売上にも寄与します。この場合のKPIは「閲覧数(インプレッション・リーチ)・言及数」になります。
(2)ユーザーとのコミュニケーション
ユーザーとSNSで交流します。交流をキッカケに新たな顧客となるユーザーが発生するケースもあります。既存顧客とのコミュニケーションを図ることも可能です。この場合のKPIは「エンゲージメント数・コメント数」になります。
数だけでなく、書き込まれたコメントの内容などもチェックします。良いコメントや言及があれば社内に共有しましょう。
(3)サイトやLPへの誘導
SNSを窓口としてサイトやLPへ誘導します。ECサイトや店舗情報などのリンクを投稿に付与します。直接的に売上に寄与します。この場合のKPIは「クリック数・サイトの指名検索流入数」になります。
(4)アカウントの影響力を訴求
「このTwitterアカウント、なんかすごそう」などと印象付けることを目的とするケースも、意外とあったりします。同業他社への優位性を外部に誇示したい場合もあります。しかしケースとして多いのは、社内のあまりSNSを理解していない層に向けて、自社アカウントの優位性を示す場合です。社内での評価を上げることにより、SNS運用チームが考えたあらゆる施策提案が社内をスムーズに通過するようになります。
この場合のKPIは「フォロワー数」になります。
ちなみに、あえて各指標は「エンゲージメント数」や「クリック数」のように、「率」ではなく「数」と記載しました。これは率を計算する際の分母となる「フォロワー数」や「インプレッション数」などが変動することによって、率は低下しているが数は上昇しているという事態が発生すると、正確に効果を計測できないからです。
たとえば
・エンゲージメント数10÷インプレッション数50=エンゲージメント率20%
という状況から
・エンゲージメント数20÷インプレッション数200=エンゲージメント率10%
となった場合、「率」だけを見ると「10%も下がった・半減した」と評価することになります。一方「数」を見ると「10も増えた・倍増した」となります。
エンゲージメントをKPIに設定しているということは、目的はユーザーとの交流であるはずです。ユーザーとの交流数が倍増しているのに「効果は半減した」と評価しなければいけない「率」のみを追っていては正しい評価ができないのです。「率も数も両方見る」ことが大切なのです。
あなたの会社が運用しているアカウントは、正しく目的とKPIが設定されているでしょうか。ぜひこの機会に見直し、アウトプットして関係部署に共有してください。
田村でした。
2020年より私たちは、「SNSマネージャー養成講座」という資格試験をスタートしました。SNSマネージャーの上位資格である上級講座では、実際に運用しているアカウントをサンプルにして、徹底的に運用目的とKPIなどの必要項目を掘り下げて企画書を作成するワークを実施しています。
この記事を読んで「理屈はわかったけど、実際自社のアカウントに当てはめるとピンと来ない。さてどうしたものか……」とお悩みのあなた。ぜひチャレンジを。
タイトルデザイン、タイトルイラスト:995(Twitterアカウント)
三度の飯より猫が好きなイラストレーター。ゆるくてかわいいイラストが得意です。
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