[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

作ろう共通言語――部署間ですれ違う目線をどうやって合わせるか

マーケターコラム、今回はテレビ東京・明坂真太郎氏。「部署間の目線の合わせる」ということについて。
テレビ東京 明坂真太郎氏

こんにちは、テレビ東京の明坂です。

前回、DX推進者に必要な心構えについて書いたコラムが普段よりよく読まれたという連絡を受けました。

多くの方が同じモヤモヤを持っているんだろうなということで、今回も似たテーマで「部署間の目線の合わせる」ということについて書こうと思います。

高さで見る、円滑なコミュニケーションのコツ

先日、ある方のお話の中で「視座は高く、腰は低く、目線は同じ高さに」的な言葉を聞きました。

重要な要素が端的にまとまっていて良い言葉だなと思いました。調べてみたところ、似たような言葉はありましたが、どこが原典なのかは不明です。もしかしたら、その話していた方がオリジナルかもしれません。

この言葉のわたし的な解釈を解説しますと、「視座は高く」の視座とは物事を見る立場、具体的に言えば、会社の役職のことです。仕事において自分自身の視野・視点のみに閉じてしまうと、どうしても自己の利益を優先しがちで部分最適が起こります。常に自分より1つか2つ上の役職の視点、できればトップ・オブ・トップマネジメントである社長やCEOの視点で事象を見ることで、企業にとって本当の最適とは何かを判断し、それを実行する主体性を持とうということです。

「腰が低く」については前回のコラムでも書いたとおり、丁寧に時間をかけて根気強くコミュニケーションを行う姿勢のことです。どれだけ優れたソリューションを持っていたとしても、文化の違うところへ上から入ってしまうと、理解されない以前にハレーションが起こって話を聞いてすらもらえないかもしれません。

そして3点目の「目線は同じ高さに」の「目線」は、価値観や目標のことです。たとえば部署が機能別に分かれている機能別組織だと、最終的な事業のKGIは同じだとしても、どこかで部署それぞれで最適化を行ってしまい、コンフリクト(一方の部署のKPIを上げる施策が、他の部署のKPIを悪化させる、など)することもあり得ます。そんなとき、どれだけ定量的データに基づいてロジカルに議論をしようとしても、価値観が違い、重視する目標が違えば、結果として建設的な議論になりません。

所属する部署によって取得できる情報が違えば、価値観や悩みも違ってくることは当然と言えますから、日頃から目線を合わせ、共通言語を作るためにどのようなことをしなければいけないかを考えておく必要があります。

同じもの見ている状態に立ち返れるようにする

私が前職(株式会社リクルートジョブズ)で働いていたときの話です。

当時は主にプロモーションや集客を行う部署と、サイトのエンハンスや改善といった開発を行う部署が分かれているいわゆる機能別組織でした。最終的に事業全体の目標は「一定ライン以上のコンバージョンを獲得すること」でしたが、集客を担当する部署は集客、つまりサイトへのトラフィックを増加させることを重視し、開発を担当する部署はコンバージョン率を上げることを重視していました。

一般的にWebサイトの集客数とコンバージョン率は、集客数を増やせば増やすほどコンバージョン率は下がるという法則になっているので、この2つのKPIは何も考えないとぶつかっていると言えます。

さすがに、「全然コンバージョンしないとわかっているけど、クリック単価が安いからトラフィックを増やすために出稿しようかな」みたいな愚かな思考はしませんでしたが、それでもやはりときどきコンフリクトを起こすことはありました。

共通言語としての顧客視点

部署間のコンフリクトを解消するカギとなったのは、顧客視点でした。カスタマージャーニーについてすり合わせをすることで、そのときの悩みを解決することができたのです。

担当は別でも、顧客は皆それぞれ一人。Webサイトを運営する事業会社側で集客や開発といった機能ごとに部署が分かれていたとしても、顧客の気持ちが「広告に接触したとき」と「サイトを利用しているとき」で分割されているということはありえません。

つまり、機能別組織だとしてもベースとなるカスタマージャーニーは当然同じ。カスタマージャーニーを共通言語にすれば、それぞれの部署のアクションが顧客にとってタメになるかならないかを統一して判断することはできる。そう考えました。それ以降、なにかコンフリクトが起きそうなときはカスタマージャーニーに沿って議論を行うようにしました。

「そんなことは当たり前じゃないか」という方もいらっしゃるかもしれませんが、組織構造の影響力とは恐ろしいもので、機能別組織というものは効率や専門性を高めやすいというメリットもある反面、無意識のうちに顧客視点を忘れ、機能の充実に注力してしまうというデメリットもあります。それは機能別組織のさだめなので、「目線を合わせる」ことでデメリットは制御し、よりメリットが伸びるように務めるしかありません。

もしそれでも目線が合わない場合には、「視座を高く」、すなわち自分たちより上位、もしくは同じものが見える何か別のものにフォーカスすることで目線を合わせることができるのではないでしょうか。

カスタマージャーニーを通して顧客の心を考える

カスタマージャーニーを通して顧客の心、つまりは顧客のインサイトと対話をしていくことはとても重要です。

顧客はどのような背景をもとに行動を取り、結果として施策の数字につながったのか。カスタマージャーニーをもとにした検証を反復することで、少しずつ顧客の心(インサイト)を具体的にし、時には修正していく。その作業もまた、あらかじめ目線や高い視座がないとできないことだと思います。

顧客の心は実際に見えるものではないので、自ら常に見ようと心がける必要があります。個人的には施策の試行錯誤やデータ検証を通して、顧客の心と対話している瞬間が、マーケティングをやっていてもっともおもしろい瞬間かもしれません。

今回のテーマやそれ以外についてもくわしく聞きたいことなどあれば、私のTwitterアカウントへリプライをいただければ幸いです。

それでは。

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