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SEOと広告とコンテンツの統合チームでインターディシプリナリティを実践する12の戦術(後編)

オーガニック検索・有料検索・コンテンツといった「それぞれの専門家のサイロ」となっていたチームを統合し、「競争力のある検索チーム」にするインターディシプリナリティ。チーム統合プロセスを成功させるポイントとは?

この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。前編ではインターディシプリナリティという概念、およびそのメリットとデメリットについて説明した。後編となる今回は、チームの統合を成功に導く12の戦術を見ていこう。 →まず前編を読んでおく

改めて解説する。「インターディシプリナリティ」とは、2つ以上の専門分野が協力して新たな種類の問題を解決するような状況を示す学術用語だ。

SEOの世界でいうインターディシプリナリティは、

  • オーガニック検索
  • 有料検索
  • パフォーマンスコンテンツ

といった「それぞれの専門家のサイロ」となっていたチームを統合し、「競争力のある検索チーム」を作っていくことをいう。チーム間で透過的に業務を動かし、さまざまなチャネルを横断して全体を把握しながら仕事を進め最適なアウトプットを生み出す組織にしてくやり方だ。

前編ではインターディシプリナリティの考え方とその8つの価値や5つのリスクを解説したが、後編では実際にその進め方のポイントを12の戦術として解説していく。

顧客ともっともつながりの強いブランドを構築するには、まずはチームのつながりから。

検索にかかわるチームの統合を成功させる12の戦術

リスクと恩恵を把握したらチーム統合のプロセスに入る。適切な実施のための戦術を12個、以下で紹介する。

その12個とは、次のものだ:

  1. チーム統合の方針は速やかに発表する
  2. 紹介と浸透を急ぐ
  3. 変更は共同で着実に進める
  4. プロセスは柔軟に見直していくこと
  5. クロストレーニングでアドボカシーを構築
  6. サービスの商品化
  7. 提案とレポートは共同で実施
  8. 戦略セッションは毎月実施
  9. チームのネットワーク化を進める
  10. フィードバックの文化を醸成
  11. コラボレーションの成功を宣伝
  12. コラボレーションのために距離を詰める

1. チーム統合の方針は速やかに発表する

検索チームのリーダーは、チーム統合の方針発表チームへの説明を迅速に行うべきだ。なにをやるのか理由まで明確にして、メリットを説明し、難しい点について正直に話すことで賛同を得る。

チームをできるだけ早くミッションに巻き込もう。成功も失敗も一蓮托生だということをはっきりさせるのだ。

変化にいちばん対処できるのは、避けられないことを妨害して時間を浪費することなく、なにか協力できないかとやる気を見せる人たちだ。

2. 紹介と浸透を急ぐ

発表したら、チームを統合して稼働させる手を早急に打つ。検索とコンテンツの担当者をできるだけ早く、できるだけ頻繁に部屋に集めて対面させ、共有するミッションとビジョンについて対話を開始する。これからどうするべきなのか、一緒にブレインストーミングしてアイデアを出す。

当社の統合セッションは、たとえば次のようなメニューを含む形で行った:

  • 自己紹介と緊張をほぐすアイスブレイク
  • 部門とチームに関する包括的なセッション
  • 能力とケーススタディの共有
  • チーム作りのエクササイズ
  • などなど

新しいチームないしプロセスができたら、顔と名前が一致するように改めてチームを会社に紹介し、新しいチームができることと担当業務をチーム外の人々に知ってもらう。

3. 変更は共同で着実に進める

発表と浸透は急ぐが、実際に変化が始まったらスピードを落とす。こうすることで、最終的なスピードアップを確実にするのだ。無理を通そうとしてはならない。しかるべき時に1つずつ、1%の変更に力を注ぐ。さまざまな取り組みの所有権をそれぞれのサイドにいた人々に渡し、すべての方向に配慮すると、グループ全体からの賛同につながる。大事なのは、全員に変更の成功を担わせることだ。

また、初期の変更は数回に分けて、最初は摩擦が生じるだろうポイントについて実施するように務めると、変更が良いことのように感じられるようになる。具体的な例で解説しよう。

たとえば、SEO担当者の悩みとして、コンテンツプロセスから疎外されがちだということがあるだろう。その結果、キーワード調査が後回しにされてしまうこともしばしばで(実施されないことも)、それを苦々しく思っているSEO担当者もいることだろう。

しかし統合のためのプロセスにおいて、簡単な変更として、コンテンツを実際に作成し始める前の「編集会議」のような場で、必ずキーワードやユーザーの質問といったニーズに関する情報を追加するようにしていくのはどうだろう。

これにより、ライター側もSEO側も仕事しやすくなる。おまけに、小さな前進がさらなる変化のための機運と忍耐を生みだす可能性もある。

4. プロセスは柔軟に見直していくこと

プロセスは柔軟なフレームワークであり、イノベーションを阻む厳格なルールではないはずだ。

検索とコンテンツの主要関係者を取り込んだ明確なプロセス作りに取り組み、それぞれの声を取り上げてワークフローの作成と洗練に協力してあたろう。

常に更新されるウィキを作成して反復するプロセスを文書化すると、着実な進化というメッセージがはっきりする。ウィキは定期的に更新して整理し直そう。洗練されたものにするためには、チームの全員がアクセスでき、信頼を抱けるものにするべきだ。

最後に、うまくいっていないものは定期的に確認し、役に立たないものは廃止すること。

5. クロストレーニングでアドボカシーを構築

各チームの業務にかかわることをお互いに体験して学ぶクロストレーニングを、

  • 短期集中型のもの
  • 長期的に継続するもの

の両方で実施しよう。「お互いの仕事をできるようになるためのもの」というよりも、「説明、支持、クロスセルができるようにするため」のものだ。

当社はワークショップやハンズオントレーニングのほか、SEO担当者にEコマースの商品説明ページを書かせるといった短期の仕事交換も実施した。共感や信頼が醸成され、お互いの仕事を応援しやすくなる。

検索の専門家が「適切な人々を含めているだろうか」と問い、コンテンツライターが「ここに価値を付加できる人がほかにいないだろうか」と問う。これは、頭のなかで確認するのにも役立つ。

忘れている人は軌道修正し、きちんとできている人は確認して報いることでグループの習慣にしよう。

6. サービスの商品化

(SEO会社や広告代理店向け)

検索とコンテンツ(およびその他)の統合チームがまったく新しいサービスやプロセスを共同開発した場合は、自社が提供するサービスとして商品化しよう。

商品化は、チーム横断の小さな委員会を作って行う。委員会はサービスを明確にし、価値を定義し、入力と出力を明らかにして、コストとタイミングを見積もるべきだ。商品は適切な機会に「棚から取り出す」ことができるシンプルなパッケージでなければならない。

当社のチームでは、たとえば次のようなものを商品化した:

  • 大きな集中キャンペーンを支える検索主導のコンテンツインサイト
  • Eコマースにおけるエンドツーエンドのディスカバラビリティのプロセス
  • ウェブサイトの再構築と再デザインのための綿密なアプローチ

7. 提案とレポートは共同で実施

検索とコンテンツの統合チームは、提案とレポーティングを共同で進めるべきだ。

当たり前に聞こえるが、きちんとできていることは少ない。実際にやっていることは、サイロ化したなかで専門家がデータを垂れ流すだけで、そのためスライドの資料が陳腐化すること ―― そんな状況があまりに多い。

そうではなく、共同でデータを集めて議論することで情報が物語るストーリーを突き止め、最高の最適化のためにクライアントやマーケターにチャネルの垣根を超えて判断してもらえる方法を明らかにするのだ。

検索担当者とコンテンツ担当者は、機会を最大化するために留意すべきポイントの優先順位付けとロードマップ化を協力して進めるべきであり、一方がもう一方に指示したり単独で進めたりしてはならない。

8. 戦略セッションは毎月実施

自分の世界に引きこもり、その状況から抜け出せなくなることがよくある。そうなると検索チームとコンテンツチームの対話は失われる。

「戦略セッション」の重要性は、「タスクリスト」よりもはるかに高い。コラボレーションしたり、いま起きていることを共有したり、今後に関する話をするような機会にしよう。

たとえば、事業会社なら事業ごとに、SEO会社ならアカウントごとに、次のようなことを議論する:

  • 各チャネルにおけるブランドのパフォーマンスの現状
  • 検索の専門家やコンテンツの専門家が取り組んでいる問題
  • わかっている機会と、大きなリスクや脅威
  • 共同でやれるかもしれない取り組み、テスト、ケーススタディ

このシンプルな会合のモデルでも、これからコラボレーションするあらゆるグループのプラスになり得る。検索とその他の部門や世界の各地域との間で円卓会議を設定して繰り返し開催しよう。

9. チームのネットワーク化を進める

チームの規模が大きくなり、地理的に拡大し複雑化が進めば、「ネットワーク化されたチーム」というモデルが合理的な選択肢になるかもしれない。

ネットワーク化されたチームは次のような特徴をもつ:

  • 事実プロセスについては一元化されたソースがある(当社では「Confluence」を使い、常時更新のウィキとして記録している)
  • オペレーション実行は分散型

このモデルでは、共通の基準とすべての実務者が参考にできるベストプラクティスを設けるが、仕事を実施するためには、チームが必要に応じてどのようにでも姿を変えて適応してよい。一元化された管理とローカルチームへの権限付与とのバランスだ。

10. フィードバックの文化を醸成

検索チームとコンテンツチームを統合するときは、コーチングと直接のフィードバックで統合が大幅にスピードアップする。

透明性と責任の明確化をチームの文化にしよう。つまり、相互のフィードバックと自分へのフィードバックを出すのだ。検索の仕事とコンテンツの仕事は相互評価されることになる。シェアするプロセスや仕事のやり方が精査されることになる。これにより、ディスカバラビリティの仕事がいっそう強固になり、失敗の余地が小さくなる。

フィードバックの文化を醸成すれば、フィードバックは個人ではなく仕事の質に対するものになる。

11. コラボレーションの成功を宣伝

マーケティングの成功は、ディスカバラビリティチーム全体で統合を大きく牽引するものになり得る。チームがいちばん効果的に協力できる方法を説明するケーススタディを作成するため、成功(あるいは警告)に常に目を光らせるべきだ。

そして、すべてのチームにとって意味がある成功があれば、次のような人たちの耳に入るように情報を整理して届けていく:

  • 自分のチーム
  • クライアント
  • 上司
  • 同僚

すると賛同と理解が広がり、新たに統合するグループのエンゲージメントが向上する。

12. コラボレーションのために距離を詰める

相手と「一緒にいる」ことが重要だ。在宅勤務が主流になった今もそれは変わらない。

チーム内にいる「検索の専門家」と「コンテンツの専門家」をできるだけつなげること。取り組んでいることについて言葉を交わしたり、椅子を回転させて(あるいは動画チャットを立ち上げて)お互いに質問したりしやすいようにする。

オフィスの間取りのやり直しがだれにも可能だとは言えないが、別の都市や別の会社とのコラボレーションの場合には、人と人とがつながるようにあらゆる機会を利用する。

  • 動画チャット
  • 対面の会合のために出向く
  • デスクに立ち寄る
  • 立ち止まって同僚と過ごす時間を確保する(オフィスの片隅やリアルタイムのインスタントメッセージや電話で)

などなど、あらゆる手を尽くし、領域が異なる人とはできるだけ一緒にいて交わるようにする。

検索とコンテンツの未来は統合にある

同僚のブリット・ハンキンズの言葉を借りると、こういうことだ。

個々のチームとしては単なる専門家だが、
その活動を統合すれば強力な存在になる

組み合わせることで個々の場合よりも強力になるエンドツーエンドサービスの統一体を構築することで、サイロ化によるばらばらな世界に戻ることなど想像できないクライアントにとって、当社は欠かせない存在になる。検索とコンテンツの能力を組み合わせてディスカバラビリティグループに進化させたことが、競争において抜きん出るのに役立っている。

文化を変えるのは大変かもれしれないが、その価値はある。道中は産みの苦しみが多い繰り返しのプロセスだ。チームの再編や合併は割に合わない場合もあるかもしれないが、異なる領域間の障壁を打ち破ることには意味がある。その過程は、検索とそれ以外の部門との統合につながるかもしれない。ある種の仕事や組織図に収まりきらないクライアントを中心にサークル・オブ・コンピタンス(対応できる範囲)を作っていくシンプルなもので構わない。

時とともに新しいものが生まれ、グループとプロセスが成熟すると、境界線がぼやけ始める。新しい文化を確立したら、コミュニケーション、コラボレーション、説明責任、透明性、共感などの特質を雇用と人事で支えていこう。

コンテンツ、テクノロジー、分析、ユーザー体験などの活動と検索とを統合する過程に平坦な道はあり得ない。最初はストレスがたまり時間がかかるかもしれない。常に賛成してもらえるわけではなく、衝突はある。

しかし、組織のディスカバラビリティのリーダーとして、オープンさと傷つきやすさとフィードバックの文化を作ることは可能だ。反復と進化と変化の見通しを立てることはできる。協力して障害を排除し、まったく新しいものを築くことはできるのだ。

競争相手ができないこと、やっていないこと、やらないことをやることから競争上の優位が生まれることを忘れないようにしよう。簡単なことならだれもがやるのだから。

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