コロナ後のEコマース回復に向けたヒント(前編):サイト内検索活用と在庫切れ時のより良い表示
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はこれまでの生活を一変させたが、この事態は当面続きそうだ。
多くの点で状況がどう変わったかを示す格好の例が、Eコマースショッピングだ。
Shopifyが、毎週のように大きな、かつディスラプティブな(これまでの価値判断を打ち壊すような)ニュースを投下するようになったと感じている人は、まさに正しい。
そして、英国でオンライン専業のスーパーマーケットOcadoの時価総額が、実店舗型のスーパーであるMorrisons、Sainsbury's、Marks and Spencerという3社の時価総額の合計を上回るなどと、だれが予想しただろうか。
Eコマースはすでに変化の激しい業界だったが、COVID-19の拡大以降、この業界における変革の速度はさらに加速している。
オンライン販売を手がける(特に、需要が高く供給が少ない)多くのブランドでは、サプライチェーンに負担が生じている。顧客の期待を最適な方法で管理して、対象のオーディエンスに販売するあらゆる機会を最大限に高めるには、どうすればいいだろうか?
消費者がかつてないほどオンラインショッピングの世界に依存するようになっている現在、そうしたオンライン小売の活況から相応の恩恵を受けていることを、どのようにして確信できるだろうか?
この記事は、そうした疑問に読者が正確に答えられるよう支援することを目的としている。売上で打撃を受けた人にとっても、「並外れた」水準の需要がある人にとっても、需要の回復に適切に対応し、顧客から愛されるブランドを維持するために役立つアイデアをいくつか紹介しよう。
サイト内検索で行動の変化に細心の注意を払う
サイト検索は洞察に満ちた宝の山であり、今の時期は特にそうだ。これは間違いない。
自分の店舗にアクセスしてきたユーザーが何をどのように探しているかを頻繁にチェックして理解することで、さまざまな機会が明らかになる。
COVID-19が日々の暮らしに大きな影響を及ぼし始める以前、商品を検索するユーザーは、人によってさまざまな事情が念頭にあったかもしれない。
たとえば、「gloves」(手袋)の検索を今日と2020年1月とで比較してみると、同じサイト内検索キーワードであったとしても、実際に訪問者の探していた商品はまったく異なる可能性が高い。重要なのは、今日の顧客に十分な対応をし、事情を正しく汲み取ることで、関連性を保ち、コンバージョンを高めることだ。
今から紹介するのは極端な例だが、それでも核心を突いた例だ。背景情報として、Holland & Barrettは大通りに店舗を構える人気の小売店で、医薬品を扱っており、ここ英国ではオンラインで強力な存在感を発揮している。
手指の消毒剤やパラセタモール(別名アセトアミノフェン、鎮痛解熱剤タイレノールの主成分)の需要が驚くほど高まり、サイト内検索で「coronavirus」(コロナウイルス)が急増したとき、信じられないことに、同社のウェブサイトでは「coronavirus」を検索しても検索結果はゼロだった。
これは、2つの点で不適切な状態に思われた:
- ウイルスを死滅させ、その拡散を防ぐのに役立つことが科学的に実証されている商品を販売しているはずである
- 医薬品を専業にしている小売業者である
これにより、顧客体験や顧客の認識という点で大きな混乱をもたらすだけでなく、この小さいながらも高くつく失態によって、売上や顧客を失うことにもなる可能性が高い。
顧客はまた、他の店舗で在庫切れだったために、通常は特定のブランドやオンラインストアと結びつかない商品を検索している。
たとえば、僕のEコマース顧客の1社では、検索キーワードの上位3件が現在、次のようになっている:
- Mask(マスク)
- mask
- PPE(個人用防護具)
「mask」や「PPE」、およびそれに類似する検索キーワードは、5月中旬になるまでほぼ皆無だった。
衣料品小売のKit and Aceは、こうした行動の変化に的確に対応していた。
サイト検索で「マスク」の検索数が急増したことを受けて、同店は新たに上質の科学的根拠に基づくマスクを投入した。Kit and Aceのブランドにも見合う商品だ。マスクで得た利益は全額寄付するが、この戦術は他のカテゴリの売上増加にもつながる可能性が高い。
これは素晴らしい動きだ。特に現在はアパレルの売上が縮小している状況だからだ。重要なのは、通常の製品ラインに対する需要が低下したときに、新たな機会を見出すことだ。
ここで僕が強調したいのは、このパンデミック(世界的大流行)の逆手を取って成功するには、現在の顧客の要望やニーズがどのように見えようとも、それに完全に合わせる必要があるということだ ―― サイト内検索を利用することで、顧客の需要や関心を広く見通せるのは間違いない。
商品が在庫切れの場合は、(可能であれば)それに代わる優れた選択肢を提供する
すでに触れたように、サプライチェーンの管理は(需要が供給を上回る分野では特に)ますます困難になるだろうが、多くの小売業者はここで機会を失っている。
一部の商品については、どれだけ懸命に取り組んでいるかに関係なく、小売業者はどこも在庫がない商品について「在庫切れ」と表示している。
在庫の問題が世界規模で生じているブランド商品に関しては、申し分のない代替品を提供できれば、他の小売業者が失った訪問者や売上を獲得できる可能性がある。
具体的な例としてFTXを挙げよう。FTX RCはラジコンメーカーで、欧州のEコマースサイトWheelspin Modelsで製品を販売しているブランドだ。COVID-19が発生したために、6月末まではどのウェブサイトに行っても、どうしても入手できなかったFTXの商品がある。パンデミックによって工場は休業を余儀なくされ、多くの商品の生産がストップした。
具体的に見ると、この例でサプライチェーン問題の犠牲になったのはFTXのブラシモーターだ。
しかし、同じ仕様でまさに格好の代替品を手がけるブランドがあり、その商品は在庫がある。
可能な限り妥協せずに確実な代替品を積極的に提供することは、競合他社にはできそうにない方法で売上を獲得し、顧客を喜ばせる素晴らしい方法になり得る。
「在庫のある商品のみ」フィルタを追加する
店頭在庫や変化の激しいサプライチェーンの管理に関するトピックについて話を続けると、シンプルだが望ましい機能は、次のようなものだ:
「在庫あり」というフィルタを追加する
当然ながら、顧客がすぐに入手できる商品を閲覧できるようにすれば、評価が高まり、ウェブサイト上でのコンバージョンを高める助けになる。
このようなフィルタを追加するもう1つの利点は、普段はより人気の高い(しかし現在は在庫切れしている)商品の影に隠れてしまっている他の商品ラインに光を当てられることにある。
さらに一歩進めて、
- 一定の期間内に再入荷する予定の商品に絞り込むフィルタを追加する
- 入荷待ちの商品をフィルタで除外する
といったことで、顧客体験に役立てられる可能性もある。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回も今回に引き続き、コロナ後のEコマース回復に備えるためのヒントを見ていく。→後編を読む
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