【レポート】Web担当者Forumミーティング 2019 Autumn

検索の主流はWebからSNSへ! Twitterの分析から集客とCV数を最大化する手法

環境変化に対応し、Twitterのデータから見込み顧客のインサイトやニーズを調査して、新たな集客方法を見出す方法を解説
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スマートフォンの普及で、SNSが購買行動に影響を及ぼすようになってきた。サイト来訪のきっかけも、従来のような検索エンジン経由からSNS検索が台頭するなど、多様化、複雑化してきている。マーケターはこれまで以上に、顧客の潜在化したインサイトをつかみ、施策に反映しなければならない。

Web担当者Forum ミーティング 2019 秋」に登壇したCINCの平 大志朗氏は、Twitterのデータから見込み顧客のインサイトやニーズを調査し、新たな集客方法を見出す方法について語った。

平 大志朗氏
株式会社CINC 副社長の平 大志朗氏

Webマーケティングを取り巻く環境の変化

本セッションでは、SEM(Search Engine Marketing:検索エンジンマーケティング)領域でコンサルティングを手がけているCINCの立場から、Webマーケティングを取り巻く環境変化について語られた。

最近は、スマートフォン(スマホ)の普及とSNSの浸透により、消費者一人ひとりの情報発信が活発化し、情報の取得元やブランドとの接触点は大きく変化した。これまでに比べ、顧客のインサイト(購買行動のきっかけ)がつかみづらくなっている。

① これまでと異なるCV経路

以前のマーケティングは、クライアントから大まかなペルソナを聞き、検索エンジン向けにCVキーワード設定をして施策を行い、CVしてもらうことを考えればよかった。しかし最近のユーザーは、そもそも“Web検索を行わない”傾向がある。TwitterやInstagramなどのSNSで検索を行い、気になった情報はGoogleマップで場所と口コミを調べて購買する、というように、今までとは異なる経路のCVが発生しているのだ。

現在はSNS検索が増加している

② 大量に表示される商品がユーザーを迷わせる

商品が多様化、コモディティ化する中で、Webで商品を検索すると大量にヒットしてしまう。このため、「ユーザーは何を起点に選んだらよいかわからない状況にある」といえる。

③ きっかけ、集客口の多様化

動画コンテンツの影響力も無視できない。人気ユーチューバーのHIKAKIN(ヒカキン)が動画で絶賛した商品がコンビニの棚から消えた事例があったが、まさに、企業にとっては何がきっかけで購買につながるのか、予測が難しくなっている。

SNSが購買行動に影響を及ぼすようになり、これまでより集客口が多様化した。ユーザーはスマホで個人間の情報を交換することが当たり前となり、自分に合った情報に触れやすい状況が進んでいる(平氏)

YouTube、Instagramなど、集客口が多様化している

「インサイト」を考慮したマーケティング

こうした時代、ユーザーに選ばれるためには、顕在化したニーズの前にある、「見込客の潜在的なインサイト」をつかむことが求められる。

コーヒーメーカーを売るメーカーを思い浮かべてほしい。これまで、マーケティング担当者は、コーヒー用品専門のECサイトなどに集客するために、下記のような手法を取るのが代表的だったといえる。

  1. 見込客のペルソナを考え
  2. CVしそうなキーワードを抽出し
  3. キーワードツールで順位をチェックし
  4. 競合分析を行って
  5. PPC(Pay Per Click)広告に入稿
  6. 施策の成果を見ながらCPC(Cost Per Click:クリック単価)の調整を行う

しかし、SEOやPPC、純広告、アフィリエイト、Facebook広告などのメディアや施策はすでに競争の激しいレッドオーシャン化している。そこで、顧客のインサイトを探ることが重要になってくるわけだ。

今後のマーケティングの流れは、どんな“きっかけ”でコーヒーメーカーを買おうと思ったのか、そのインサイトを深堀りすることから始まる(平氏)

購買行動につながらないインサイトにSNSでアプローチ

例えば「子育て中のママ」が日々の育児疲れからホッとしたいと、ふと若い頃に行ったカフェを思い出し、自宅で簡単に本格コーヒーが飲めたらいいなと思い、「コーヒーメーカーを買いたいな」というインサイトにたどり着いたとする。

子育て中のママは、何をきっかけにコーヒーメーカーを買おうと思うのか?

しかし、インサイトから強いニーズが顕在化する間に、見込客の母数は小さくなる(きっかけが弱まっていく)。また、「コーヒーメーカー おすすめ」というキーワードでユーザーが検索をしたとしても、競合比較にもさらされるため、「コーヒーメーカーを買いたいな」というインサイトから購買行動に発展しないというのだ。

競合も多く、購買行動に発展しない

では、こうした状況を打開するにはどうしたらよいのか。平氏はSNSを活用すると良いと説明する。

インサイトの段階で、SNSなどの媒体を利活用しながら、見込客に商品をおすすめし、購買につながるニーズを掘り起こしていくのだ(平氏)

Twitter広告の活用で共感を獲得。ニーズを掘り起こす

ユーザーの「欲しい」という気持ちは、企業にとってときに予想外だ。例えば、お湯か水を注ぐだけで“おにぎり”ができる保存食がある。この商品の既知のニーズは、非常食やアウトドアの食事といった用途だ。しかし、SNSでは、小さな子どもを持つママが、外出時に子どもが空腹になったときや、引越しなどの多忙時に子どもに食べさせる食品として重宝したという声が投稿されている。企業が想定していないところにユーザーのインサイトが存在する場合があるのだ。

お客様が主体となって新たなニーズを作り、それをSNSで拡散している。今まで以上にお客様の「購入のキッカケ」を理解し、それに合わせた集客方法やコミュニケーション方法を立案、実行、検証することがマーケターには求められる(平氏)

Twitterデータを用いた、インサイトの見つけ方

続いて、Twitter APIを活用し、SNSからインサイトを見つけ、施策へ落とし込んでいく具体的手法が紹介された。架空の「CINCタピオカ」というリアル店舗のマーケティング担当者になったとの想定からスタートする。

タピオカは、Googleにおける検索トレンドを見ても下火になりつつある。そこで、SNSでの言及数を増やし、認知度と来店数の増加を狙うのがミッションとなる。分析の流れは次のとおり。

  1. SNSの投稿を収集する
  2. 投稿内容をキーワードに分解する
  3. 「トレンド増減」や「ポジネガ」等の指標から分類
  4. 一定の母数があるキーワードの投稿からインサイトやニーズを読み解く
  5. 自社の施策に反映する

SNSは、非実名で発信内容や発信者に共感する点でTwitterを選択し、無料の「Search API」を用いて「タピオカ」を含むツイートを取得する。また、キーワード抽出には「Google Natural Language API」を利用し、ツイートの文章から重要なキーワード(フレーズ)を抽出する。なお、平氏によると、同APIは5,000回まで無料で利用可能だという。

分析データベースには「Google BigQuery」を使用した。これはサーバーを立てることなくビッグデータ分析を簡単に行え、データの処理は1TB当たり5ドルで利用できるという。これらの分析環境はすべてGoogle Cloud Platform上で、「約1.8万円ほどで構築できた」そうだ。

今回用意したデータ分析基盤。パブリッククラウドを活用すれば比較的安価に構築が可能だ

平氏は、「タピオカ」を含むツイートに含まれるキーワードの中から次を分析判断軸とした。

  • 合計数が多い(一定のニーズがある)
  • 増減率が大きい(アップトレンドにある)
  • 分散値が大きい(注目度が高い)

そして分析を進めた結果、「ホットタピオカ」の推移が9月から上昇し、毎日一定のツイートが発生していることがわかった。さらに、どんな傾向かを精査するため、ポジティブなデータに絞って分析を行った結果、「もちもち」「やわらか」など、新食感を想起するキーワードが出てきた。

ホットタピオカに関するツイートを感情別に分析すると、感情が判別できるツイートの94%はポジティブなもので、実際にユーザーが試してくれればポジティブ感情を持ってもらえると判断した(平氏)。

そこで、次を施策のポイントにした。

  • ホットタピオカを知っているが試していない顧客の取り込み
  • すでに試したがSNSにツイートしていない顧客の取り込み

さらに、「ホットタピオカ」に関するWebメディアのトレンドや、自然検索(Googleトレンド)の結果も分析し、他店舗のクリエイティブなども分析しながら、調査結果をアウトラインとしてまとめた。

ソーシャルから発見したインサイトは実際の現場スタッフも知らないことがある。例えば、ストローは使うべきか、テイクアウトのときはどう飲んでもらうか、といった商品開発、あるいは“ホット感”をどう演出するかといったコミュニケーションアイデアについて、店舗責任者や商品企画担当者と議論を行い、施策を形にしていくことが大事(平氏)

調査結果をアウトラインとしてまとめる

「次のニーズ」につながるインサイトをいかに抽出できるか

次のニーズを掘り起こすためには、自然検索とSNS検索の違いを理解することが不可欠だと平氏はいう。

例えば、「子育て」というキーワードの関連性の強さを可視化する共起マップを見ると、自然検索は、おしゃれ、ご飯などの「ブログ」や、子育てに関するストレスなどの「イライラ」、住む場所などの「ランキング」、あるいは「男の子」などの性別といったキーワードとの関連性が強い。このように、自然検索の行動は能動的で、顕在化したニーズに基づいていることが多い。

一方で、SNSでは、子育て中の相談や仕事との両立などの「悩み」、癒しなどの「名言」「言葉」、あるいは「保育園」といったキーワードとの関連性が高い。

「子育て」の共起マップにおける事前検索とSNSの違い

つまり、SNS検索は受動的で潜在的なニーズと関連が強い可能性がある。こうした潜在的なインサイトは、時間の経過とともに多くの人の目に触れ、やがてコモディティ化していく。そこで、「SNSを活用しながら、パイの大きい、これから顕在化する『声』を抽出していくことがポイントだ」と平氏は説明する。

そして、インサイトからニーズを掘り起こし、自社しかできない施策、商品企画、コミュニケーションアイデアを企画していくことが、これからのWebマーケターに求められているとした。

最後に平氏は、CINCでは、上述したようなデータ分析のプロセスも、同社の「Keywordmap for SEO」「Keywordmap for SNS」といったツールを利用することでワンストップに行うことができると語り、セッションを締めくくった。

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