はじめに:スマートスピーカーの普及状況
普及が進んでいる米国では、スマートフォンの浸透スピードを超える速さで浸透しているといわれています。Adobeの調査(米国の消費者1000名以上に対する調査)によると、2018年8月時点での32%が所有していると回答しており、今年には48%が所有すると予測されています。また、所有者の利用頻度を見てみると、所有者のうち44%が1日に複数回利用、27%が1日1回は利用すると回答しており、約7割のユーザーが毎日利用しているとの結果になっています。
さらに、アクセンチュアの行ったグローバル調査ではスマートスピーカー所有者の66%がスマートフォンの使用頻度が減少していると回答していることから、今後も音声UXを活用したサービスの拡大が予想されます。
また同調査では、諸外国に比較すると遅れているものの、今後日本での普及もキャズムを超えていくと予想されています。
最後に、アーリーアダプターの利用実態として、実際にスマートスピーカーを利用している社員2名にインタビューしてみました。(下図)
スマートスピーカー単体ではなく、家電と連携させるなど活用が進んでいる世帯では、音声UXが暮らしに欠かせない体験になってきている様子が分かります。
音声UX設計時の4つのポイント
音声UXをプロジェクトで設計した経験のある社内のディレクターたちの「うまく活用しないと、逆に悪いUXになってしまうので要注意」という声をきっかけに、では、どんなポイントを踏まえてエクスペリエンスデザインを行ったほうがよいのか?をまとめていきたいと思います!
【1】音声UXの便利なシーンを踏まえる
まず、音声UXが便利であるシーンやシチュエーションで活用することをきちんと考える必要があります。
画面操作でも十分便利なシーンでわざわざ音声UXを取り入れて余計不便になる、なんてことのないように、音声UXが強みをもつシーンとはどんな場合かというのを理解しておく必要があります。
音声UXの持つ特性として以下があります。
・ハンズフリー(手を使う必要がない)
・アイズフリー(画面をみる必要がない)
・ボディフリー(体が自由な状態になる)
・テキストフリー(文字を使う必要がない)
それぞれの特性に対して、その特性が価値を持ってくるシチュエーションを書き出してみましたので、参考にしてみてください。
【2】音声UXの苦手なこと、向き不向きを理解する
次に、音声UXには苦手、不向きなインタラクションがあるので、それを踏まえましょう。以下の図にまとめてみました。
分かりやすいところだと、音声では、ビジュアルでイメージを伝えることはできないですが、口調や対話で現れる人格によってイメージを伝えることは得意です。また、一覧性がないので、多くの情報を横並びにして比較検討してもらうような動作が不向きで、最適解を提示してあげるような作り方が適しています。
また、ユーザー側のインプットも音声で行ってもらう場合、多くの情報を素早く正確に話すのは骨が折れるので、ユーザーから短文による指示をもらうほうが適しています。例えばあるサービスを音声UXで実現する際、ユーザから必要な入力項目が5つある場合は、それらを順に音声でインプットして正しいか確認していくより、画面上でフォームで入力したほうが早く正確なことが多いです。
音声では「前回の情報を使いますか?」「はい」くらいのやりとりがよいでしょう。
ユーザーに一度に多くの情報を届けるのも苦手です。例えば、オンラインショッピングのシーンでは、サイトであれば、商品の価格、評価(★の数)、色、在庫状況、などの多くの情報を1画面で伝えられますが、それをひとつひとつ読み上げられたら…と想像すると不便です。一方で、レシピの手順のように順番に欲しい情報については適しているといえるのではないでしょうか。
また、音声の場合だと、周囲に他者がいる場合に聞こえてしまうこともあるので、パーソナルな情報を扱うことは不向きですが、逆に、その場にいる人たちと同時に操作したり、同時に共有したいようなシーンでは活躍できます。
不向きな面についてはビジュアルUIとの組み合わせなどで補うような体験設計が好ましいでしょう。
【3】音声UXだからこそできる体験価値を踏まえる
ここまでの2つはユーザーの利便性のような視点でしたが、3つ目はさらに、少し提供側の視点から、音声UXならではの体験価値を考えてみました。
音声UXならではの体験価値を挙げていくうちに、コアにある価値として、音声UXはヒューマンタッチに近いことが見えてきました。
まず、親しみやすさを感じられたり、要求に応えてくれるアシスタント的な存在として、パーソナルな関係性を築ける。擬似的な人格を感じることでパートナーのような感覚を生んだり、対話によるカウンセリングで自分の課題を発見したり、カウンセラーのような関係を作ることができる。
また、音という刺激による心地よさや、画面から解放されることにより、自分の生活とシームレスにつながるような心地よさ。そして、書き言葉ではない、平易な言葉によるラフな心地よさ。など、人との人とのやりとりに近いところに価値があるように思います。
音声UXを取り入れることで、利便性以外にロイヤルティや顧客との関係性という視点まで含めて、どう顧客体験をどうアップデートしてくれるものなのか、活用の目的をあらかじめ定めておくことが重要そうです。
【4】音声UXのもたらすビジネス価値を考える
最後に、提供側のビジネス的価値という視点です。音声UXを新しく取り入れる際は、どんなビジネスメリットを目的に活用するのか、ある程度整理しておくほうがよいでしょう。以下に考えられるビジネスメリットを書き出してみました。
どのレベルのビジネス価値を目指して音声UXを活用するのか整理する際に、参考にしてみてください。
まとめ:
ここまでスマートスピーカーの普及状況、そしてそれに伴い、今後広がりが予想される音声UXついて、体験設計のポイントになりそうな4点について、まとめてきました。
実際に音声UXを自社の体験に取り入れている場合は、4点について振り返ってみたり、今後取り入れる場合には、設計時の指針としてご活用いただけると幸いです。
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