体験型のブースが盛況。新規参入企業に注目集まる。
今年は10月16日~20日に幕張で行われたCEATEC JAPAN 2018。
イベント開始前から電子機器メーカー以外の異業種の出展も増え、顔触れの変化も話題になっています。来場者も前年より増え、15.6万人に上ったようです。実際に最終日に訪れてみると、やはり体験型ブースは人だかりや行列ができるほどの人気。特に、小売業界で初出展と話題になったローソンの体験店舗では、30分以上の待ち行列ができるほどでした。
ローソン、LION、ダイキン、新登場の企業たちから見える意志
BACKYARD編集部としても注目したのは、3年前のコンセプト転換後に新たに出展をはじめた異業種の企業たち。LIXIL、JTB、バンダイナムコ、三井住友銀行などのメガバンク系…等。特に、今年は前述したローソンに加え、LION、ダイキンなどが初出展し注目が集まりました。
彼らのブースで体験しながら、出展の背景にあるお話を伺ってみると、デジタルシフトへの舵切りの意志を強く感じると同時に、「いや、そうではなく、あくまで彼らは未来の顧客体験を作ろうとしており、そのための手段としてデジタルを活用しているのだ!」ということが分かってきました。
今年10月に行われたアドテック東京のキーノートでも、ネスレのスイス本社バイスプレジデントが語った「必要なのはAI戦略ではなく、体験設計。」「幸いにも素晴らしい顧客体験を作るためのツールがたくさん揃い始めている。」といった言葉が印象的でした。デジタル化が目的ではなく、体験向上の手段としてのデジタル。その図式がキーになるということを改めて感じました。
視点はモノ→サービス→エクスペリエンスへ
もっとも分かりやすいのは、LION。今回、舌の画像から簡単に口臭がチェックできるツールや歯茎の画像から歯の健康状態を診断できるといったアプリを展示していました。
モノをつくって販売するメーカーが、歯の健康を守るためのデジタルサービスを提供する。その先に目指している思想が、未来の健康習慣を作るという体験を創出するということなのだと思います。
一方、ローソンはもともとはコンビニエンスストアというサービスを提供しているが、買い物の場を提供するのみではなく、より利便性を高める買い物体験を作ることを目指していることを肌で感じました。
ローソン代表の竹増氏のインタビュー※では、無人化を目指すのではなく、あくまでスタッフは地域の住民との会話や心と心の触れ合いのある接客に専念するというという考え方が書かれており、そこからも、顧客エクスペリエンス視点で考えていることが伺えました。効率化はしても、「店員さんとのさりげない会話」といった情緒的な価値を損ねてしまえば、良い体験とはいえなくなってしまうからです。
※イベントで配布されたニュースペーパー内のインタビュー
その他にもJTBのブースでは、生活者の旅行選びの体験向上のためのサービスはもちろんのこと、地域活性のキーとなるようなデジタルマーケティングサービス(エリアアナライザー)も出展。旅行を担う会社として、旅行エクスペリエンスを顧客と地域の双方の目線で向上させるという姿勢が見えました。
また、空気にまつわる10個のアイデアを展示したダイキンのブースでは、より食事がおいしくなるための空調、より良い睡眠や起床をサポートする空調などのコンセプトがエリアごとに掲げられ、生活の各体験シーンの質を空気とITでサポートするという考え方が明確に示されていました。
背景にある未来エクスペリエンス志向の企業ビジョン
CEATECからの帰り道、答えあわせをするかのように、気になった出展企業たちのビジョンを確認すべく、各企業のコーポレートサイトを覗いてまわってみると、共通点が見えてきました。
それは、社会に何を提供するのかが高次元で設定されており、既存の事業の枠を超えて未来の社会にどう貢献するのか定義されているということです。
例えば、LIONのコーポレートサイトのTOPには「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」というコンセプトのもと、「習慣をリ・デザインする」というコンセプトムービーがアップされています。既存の商品の枠を超え、健康習慣をより良いものへ転換させるためにできることは、LIONで提供していくというコンセプトがよく理解できます。
JTBについては、未来を動かす交流創造というキーワードのもと、旅行事業ではなく、交流創造事業に進化するということが明確に示され、次のような文章が書かれています。
JTBは旅行会社と言われます。様々なツアーを企画したり、宿泊やチケットを手配し、お客様にご満足いただける価値ある旅を提供することも私たちの大切な役割です。ただ、そのことに留まらず、地域の魅力を見つけだし、新たな交流人口を生み出したり、魅力的なイベントを企画し、新しい体験を生み出したり。
JTBグループでは、そんな旅行会社の枠組みを超えた取り組みを進めています。旅行業を通じて培ってきた「人と人を結びつける力」を活用してあらゆる場所で交流を生み出し、感動・共感を呼び起こす。そして、地域や社会課題の解決にまでつなげていく。それが、私たちの目指す姿です。
https://www.jtbcorp.jp/jp/colors/about/
ローソンのサイトには、「マチの暮らしにとって“なくてはならない”存在」を目指し、「みんなと暮らす街を幸せにします」とあり、コンビニという枠を超え、街を幸せにする存在としてビジョンが掲げられていますし、ダイキンの場合は、「空気で答えを出す会社」「空気と環境で新しい価値をうむ」というように、空調機器のメーカーという枠を超え、空気であらゆるシーンをサポートするという考えにつながるビジョンがサイトで掲げられています。
もちろん必要条件というわけではないと思いますが、デジタルを活用したイノベーションがスタートしている企業たち、エクスペリエンスシフトがされている企業たちの共通点が少し見えた気がしました。
未来じゃなくて今
CEATEC JAPANで未来の街を想定して展示されたIoTタウンエリア。ただ、ここに展示されていたものはすでに販売されていたり、実証実験が進んでいるものばかりです。
未来というよりは、もう始まっている変革。先進企業たちの勢いを感じつつ、エクスペリエンスシフトを実感したイベントとなりました。
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