災害時の投稿が大炎上?! 「不謹慎狩り」の対象にならないためのソーシャルメディア運用とは?
近年急増する残念な「不謹慎狩り」
例年と比較して、今年は特に、水害や地震の大きな被害が発生しています。まずはこの夏の、北海道震災・関西豪雨・台風などに被災された方々へ、心からお見舞いを申し上げます。
実は私も、先日所用で地元関西に先日戻ったのですが、あちらこちらでその爪痕を目にし、改めてその被害の大きさを実感しているところです。一方でこうした災害が発生したときに、クライアントさんと、ソーシャルメディアの運用についてそのまま運用を継続するのか一旦停止するのか、協議する機会も今年は格段に多くなっています。
「不謹慎狩り」という現象が話題になることも増えてきました。「不謹慎狩り」とは、災害が発生して大きな被害が出たとき・著名な方が亡くなったときなどに、ソーシャルメディアの企業公式アカウントや著名人アカウントによる、その事象とは無関係な発言を、一般ユーザーが「不謹慎だ!」と揚げ足を取り、炎上・拡大する現象を指します。
たとえば、日常的に「○○が新発売です」「○○食べたよ。美味しかった」といった投稿を行っていて、フォロワーもそれを楽しみにしているのに、災害時などに平常運転で同種の投稿を行うと、「不謹慎だ」「被害者のことを考えろ」といきなり炎上する状況を想像してください。思いもよらぬところから炎上が飛んでくるイメージではないでしょうか。
数年前、某著名企業アカウントが8月9日(長崎原爆投下の日)に、たまたま「なんでもない日おめでとう」と投稿したところ、「なんでもない日とはなんだ!!」と炎上したことがあります。
もちろん発信したアカウントには悪気はなく、むしろまったく別の意図で、フォロワーたちへ穏やかな温かいメッセージを伝えようとしていただけでした。
タイミングが悪いと言えば悪いのですが、ちょっと想像すれば発信者の意図はわかります。それを鬼の首をとったように吊るし上げる風潮を見て、大きな違和感を感じたものです。
一番の対策は「更新をストップする」ことだが、その基準は?
個人的には、不謹慎狩りを不謹慎狩りしたいぐらいです。「現地は大変なのに、何をしとるんだ」と。「その労力を災害情報の拡散などに向けられないのか」と。
しかし企業のソーシャルメディア運用者は、「不謹慎狩り」という動きがあることを現実として認識しておき、それに対処しなければいけません。
残念ではありますが、いまもっとも効果的な「不謹慎狩り」対策は、「有事の際にはソーシャルメディアの更新を止めること」です。
ここで難しいのが、「何をもって“有事”とするのか」という基準です。どれぐらいのことが起こったらソーシャルメディアの更新を止めなければいけないのか?
逆にどのぐらいなら通常通り運用しても大丈夫なのか?
法律があるわけでもガイドラインがあるわけでもなく、100%間違いのない正解は、誰にも決められません。ただ私の場合、クライアントさんに「今日は更新をストップしておきましょう」と伝えるにあたって、一定の基準を持っています。
これは絶対的なものではなく、あくまでも参考例です。明確なラインを引いているわけではありませんが、それでも十分使える基準ではないかと思っています。
- 震度5以上の地震が、日本のどこかで発生したとき
- 台風が、日本に直撃する見込みであるとき。また直撃したとき
- 警報レベルの気象予報情報が、報道されたとき
いずれかに該当する場合、クライアント様にソーシャルメディアの動きを止めるよう、私は連絡するようにしています。
このとき、できれば、ソーシャルメディア上に流している広告もストップしたほうが良いでしょう。災害時にニュースフィードやタイムラインに流れる広告も、不要な炎上を招くことがあります。
一方、Webサイトに掲載されているバナー広告などがキッカケとなり炎上した事例は見たことがありせん。サイトの端に掲載される広告は見過ごすことができても、SNSのフィードに流れる商業的な情報は、ユーザーを刺激するのでしょう。
災害発生時のソーシャル投稿、再開の基準は?
いったんストップしたソーシャルメディアの投稿を、いつ再開するのかも難しいところです。大きな災害が発生したとしても、その後ずっとソーシャルメディア更新しないわけにもいかず、被災地に届けたいメッセージも各社あるものです。その際には再開のタイミングを見きわめてうまく発信してください。
私の場合は、クライアント様にお伝えする際の基準として、以下の2つを決めています。
- 被害がなかった、もしくは小さかったことが判明したとき
- 有名アカウントがソーシャルメディアの投稿を再開したとき
「被害がなかった、もしくは小さかったことが判明したとき」、特に「人的被害がなかったことが判明したとき」には、確認後に再開してもらっています。
きわめて大きな災害の場合、被害も大きくその後の処理も長期化するケースもあります。その場合はちょっとズルいかもしれませんが、「有名アカウントがソーシャルメディアの投稿を再開したとき」を、もう1つの基準としています。
再開後、最初の投稿は?
再開を決めたとして、「再開後の最初の投稿を、どういう内容にするか」について悩まれるケースもよくあります。しかし、この点についてはそれほど悩む必要はありません。大きくわけると、次の2パターンになります。
- 被災地にお見舞いの言葉を伝える投稿をする
- 何もなかったかのように、通常の投稿を再開する
シレっと再開してもそんなにユーザーは気にしないものです。企業・あるいは担当者の意向でお見舞いの言葉を書きたいときは、そこからスタートする、ぐらいの感覚で大丈夫でしょう。
まとめ
今年はクライアント様にソーシャルメディアの更新の停止を勧める連絡をすることも、例年と比べるとかなり多くなっています。あまりに頻度が高いので、先日はクライアント様からも「田村さん、今回は止めなくてもいいんじゃない?」という返信をもらいました。
ただ、事が起こってから対処するのは大変で、内容によっては対処する範囲がソーシャルメディア内だけにとどまらないケースもあります。
個人的には、「不謹慎狩り」自体を撲滅したいぐらいです。しかしあるものは仕方ありません。いったん不謹慎狩りの対象になると、いらぬ労力もかかります。対応できるところは対応し、不謹慎狩りのターゲットにならないようにしましょう。
もうすこし、やさしい世界になったらいいんですけどね。
田村でした。
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