コンバージョンの限界を突破! MA導入を成功に導く行動データ活用術
B2C企業でも、マーケティングオートメーション(MA)を利用した顧客とのコミュニケーションに取り組む企業が増えている。しかし、MAツールを導入したものの運用がうまくいかないケースも多い。
失敗の原因の多くは、ユーザー行動の把握不足とセグメントが的確でないことだ(住岡氏)
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの住岡氏は「Web担当者Forum ミーティング2017 秋」において、「MAのコンバージョンの限界を突破する行動データ活用術」と題し、自社のWeb行動データを活用してコンバージョンレートを改善する方法を解説した。
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションはさまざまな企業に新規にMAを導入したり、すでにMAを導入している企業に対してコンサルティングを実施している。
コンサルを必要とする企業の場合、既存のMAの使い方として、うまくいっていない理由は大きく分けて次の2つだという。
- MAの使い方を間違えている
- セグメントの切り方が悪く、ターゲティング精度が低い
それぞれについて解説していく。
MAの使い方を間違えている
→ MAは一斉メール配信システムではない
まず、MAの正しい使い方について考えてみよう。前提となるのは、カスタマージャーニーの考え方だ。次の図は、不動産業界の一般的なカスタマージャーニーを記載している。
デジタルマーケティングの目的は、このジャーニーで先(右側)に進む人を増やすこと。つまり、「物件検索をした人にいかに資料請求してもらうか」「資料請求した人にいかに見学に来てもらうか」に取り組むものだ。そのためには、それぞれの顧客がジャーニーのどのフェーズにあるかを捉える必要がある。
カスタマージャーニー上には、さまざまなタッチポイントがある。たとえば、「物件検索」というタッチポイントから次の「資料請求」への転換率が1%上がればROIが10%向上するなら、MAでそこにコミュニケーションシナリオを仕掛ける。仕掛けてしまえば、日々流れてくる顧客に対して自動的にシナリオが発動し、次のフェーズへと転換させていく。
これが、マーケティングのオートメーション化である。カスタマージャーニー上にシナリオを量産していくことによって、MAの効果がさらに発揮され、投資対効果が上がっていく。
ところが、「セグメントを切ってワンショットで配信するだけの、メールの一斉配信ツール」としてMAを導入してしまうケースがある。高価なMAツールをメールの一斉配信だけに使っていたのでは、投資対効果が得られないのは当然だ。
セグメントの切り方が悪く、ターゲティング精度が低い
→ セグメントは自社サイト行動データを活用して考える
次に、ターゲティング精度の問題を考えてみよう。これまでは、ペルソナや属性でセグメントを決め、そのセグメントごとにパーソナライズしたメールマガジンを送るなどの方法が一般的だった。しかし、1 to 1で適切なコミュニケーションをするためのセグメントを考えるなら、重要な要素は次の2つだ。
- その顧客がカスタマージャーニー上のどのフェーズにいるのか
- その顧客はどのようなニーズ/インサイトを持っているのか
これらを把握するには、自社サイトの行動データを活用すればいい。行動データが有効であることは、シンプルに考えればわかる。たとえば、「20代後半で丸の内で働くOLだから、○○が好きなはずだ」というのは、当たっている場合もはずれている場合もある。それに対して、年齢・性別に関わらず「このページを見たのだから、○○が好きなはずだ」という方が、はずれが少ないことはイメージできるだろう。
また住岡氏は、行動データ活用と同時に、コミュニケーションのリアルタイム性も重要だという。ユーザーがカスタマージャーニーのどのフェーズにいるかを行動データから把握したら、時間をおかずリアルタイムでアクションする方が効果が高い。特にB2Cでは、購買意欲が一気に高まってもすぐに沈静化してしまうので、できるだけ購買意欲の高まった瞬間を捉えることが重要になる。
MAで使えるデータには、次の6種類がある。
- 自社サイトの行動データ
- 購買データ
- メールの反応データ
- 属性データ
- 他社サイトの行動データ(3rdパーティデータ)
- プログレッシブプロファイリング(ホップアップアンケートなど)
これを効果がある順に並べたのが、次の図の右側だ。
左側は実施しやすい順に並べているが、効果が高い順とはほぼ逆転している。属性データや購買データはもともとデータとして蓄積されているため、MA導入後にすぐに使える。しかし、サイト行動データは高度なアクセス解析やDMPの導入が必要で、コストや納期の点で実施しやすさの順位が下がる。
このため「MAを導入したのでとりあえず属性データや過去の購買データでセグメントを切ってやってみよう」ということになりがちだ。しかしそれでは、残念ながらなかなか効果が出ないのが現実だ。
会員登録前の行動データから会員登録の背景を把握する
自社サイトの行動データを実践で活用する場合のゴールイメージは、たとえば次のようなものだ。次の図はメールマガジンの表示を模したもので、行動データを元に、最も興味のある内容をA枠に、次に興味があるものをB枠にという形でメールの内容をパーソナライズして表示できるようにするのがゴールだ。
これを実現するための仕組みは、次のようなものだ。
まず、自社サイトのログを収集し、顧客軸で統合する。最終的には、顧客軸でコミュニケーションを行うためのプロファイルを作成し、リストとしてMAに渡す。MAは、受け取ったIDリストに対してパーソナライズした内容のメールマガジンでコミュニケーションする。
ポイントは、デバイスやセッションをまたいで、顧客軸でログを統合する点だ。たとえば、「昨日PCサイトで製品情報を見た人が、今日スマホサイトで事例ページを見た」といったことがわからなければ、顧客の興味を把握できない。
顧客軸でログを統合するということは、Cookieで顧客のIDをひも付ける必要がある。これは、メールの中にあるパラメータ付きURLをクリックしてもらう方法や、サイトに来たときにログインしてもらう方法が一般的だ。この方法により、結びつける起点(会員登録など)以降のデータをひも付けることができる。
しかし、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの「Salesforce Marketing Cloud×Webプロファイラ」では、会員登録前の会員未登録時のログを会員IDにひも付けることができる。会員登録前の閲覧行動を見ればどの商品に興味があって会員登録したのか把握でき、パーソナライズしたコミュニケーションで初回購入を促すことも可能だ。
従来は、Webサイトのアクセス情報と会員IDをひも付けるには、コストの面で大きなハードルがあった。しかし、MAに渡すための顧客IDを作るログ収集ツールとして機能を限定することで、比較的安価にアクセス情報をMAに連携するソリューションとなっている。
また、同じ
商品Aのページ → 商品Bのページ → 商品Cのページ
という順番で見たとしても、商品AのページのPVが多い人と商品BのページのPVが多い人では興味の対象が異なる。NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの「Salesforce Marketing Cloud×Webプロファイラ」では、ページを見た順番だけでなく、ページごとのPV数によって興味のグラデーションを把握することもできる。
導入企業はMAをどのように活用しているか: 5つの事例
最後に、具体的な活用事例がいくつか紹介された。
メールマーケティングはECサイトで使われることが多いが、それ以外にもさまざまな業界で使われている。
①ドライビングスクール(教育関係)――サイト内行動によって即時メール配信
あるトライビングスクールでは、さまざまな宣伝チャネルからメールアドレスを収集し、ユーザーのメールクリックによりWebの行動データとひも付けている。
「自社サイトを2回訪問した」という閾値を設定し、即時メール配信することで、資料請求および入校見込み者数が前年比5倍になった。
②フィットネスクラブ(スポーツ業界)――ステップメールを分岐
あるフィットネスクラブでは、各種接点チャネルからアプローチできるリストをデジタル化し、体験会案内メールを送っている。
メールが開封か未開封かなどでステップを分岐して、内容を変えたメールを送ることで、ROIが120%以上にアップした。
③不動産会社――閲覧履歴だけでなくWeb上の入力データも使ったパーソナライズ
ある不動産会社の場合は、メールを送付してWeb行動をひも付けるほか、住宅は条件を入力して物件を検索するので、その入力データを蓄積している。
「Webを閲覧したが資料請求や見学の申し込みに至らなかった」ユーザーに対して、入力情報などを反映したメールを即時配信することで、反響数(資料請求や見学)が2倍以上になった。
④ECサイト――会員未登録時の閲覧情報を活用
あるECサイトでは、会員登録や購買のアクションで会員IDと行動データをひも付けていた。
さらに会員登録する前にどんなページを閲覧したかという情報もひも付けたことにより、その顧客の興味情報を幅広く捉えることができた。それを元にパーソナライズした即時メール配信で、メルマガ経由の売り上げが130%以上に増加した。
⑤通販会社――リアルタイムのカート放棄対策
ある通販会社では、それまで取り組んでいなかったカート放棄プログラムを開始して成果を出した。
STEP 1では、カート放棄の翌日にフォローアップのメールを送信。STEP 2では、フォローアップメールをリアルタイム送信に変えた。効果は、STEP 1でカート放棄者に対して2割のCV改善、STEP 2では当日配信の売上が3倍以上増加し、カート放棄者に対してCVが3割も改善した。
カート放棄プログラムは、購入に最も近いファネルでの効果の高いコミュニケーションである。MAで鉄板とされる取り組みだが、翌日以降にコミュニケーションするケースが多い。購入データは基幹システムに記録され、MAに残らないためである。しかし、アクセス解析データを使えば、カート放棄した商品が瞬時にわかる。
まとめ
以上、活用例として5つ紹介されたが、考え方はほぼ同じだ。顧客の興味をサイト内の行動データで捉え、MAとIDを連携してパーソナライズコミュニケーションを仕掛ける。住岡氏は、「このとき、リアルタイムでコミュニケーションすることが、大きな鍵だ」とまとめた。
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