東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式サイトが2つ? 組織委員会と準備局のサイトの違いを都の担当者に聞いてみた
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック。開催地である東京都が運営する「東京都オリンピック・パラリンピック準備局」というサイトがあります。
一方、組織委員会が運営する「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のサイト」も公式サイトとしてあります。
「両サイトは何がどう違うの?」と疑問に思ったので、東京都 オリンピック・パラリンピック準備局 総務部の松下友佑さんにサイトの役割などを聞いてきました。
オリンピック組織委員会と準備局の役割
東京が2020年のオリンピック・パラリンピック開催地に選ばれたのは2013年。開催地として決定後、それまでスポーツ振興を担当していた都の部局が母体となり、松下さんが所属する準備局が開設されました。今では総勢300名近くの局員が開催へ向けて日々働いています。
実は、東京都の準備局が運営するこの「東京都オリンピック・パラリンピック準備局」のサイトは、オリンピック・パラリンピック決定前までは、「都民のためのスポーツ振興」を中心とする内容のサイトでした。
今でも東京都公式ホームページ(生活文化局担当)の一部であることには変わりありませんが、オリンピック・パラリンピック開催決定後「オリンピック・パラリンピック準備局」に名前を変え、東京2020オリンピック・パラリンピックに関連する情報も発信し、さらに2年前にはリニューアルを行い、よりわかりやすい公式サイトになったのです。
ちなみに、Webサイト内に、東京2020大会の前年(2019年)に開催が予定されている「東京都ラグビー情報」があるのは、スポーツ振興を担当していた部署が母体となっていることに関係しているからです。
東京2020大会は、組織委員会が大会運営の主体としての役割を担い、東京は開催都市として組織委員会が行う準備のバックアップを行うとともに、大会を契機にレガシーを残すことを取組の基本的な考え方としています。そのため、大会に関する公式情報を発信するサイトが2つあるわけです。
準備情報公開の使命
オリンピック・パラリンピック準備局サイトは「公式な準備情報公開」も役割の1つです。
メディアからの電話での問い合わせには、正確を期するために、該当サイトから資料をダウンロードしてもらうこともあります(松下さん)。
オリンピック・パラリンピック競技情報はもちろん重要なことですが、準備局としての役割の一つは「準備状況を都民、国民にわかりやすく正確に伝えること」。その役割を果たせるようにすることも、このサイトの使命なのです。
現在もIOC(国際オリンピック組織委員会)と交わした契約書、招致活動に伴う経費、都が建設する会場の発注経緯、各企業からの提案書、その評価、跡地利用、環境アセスメントなど、興味がある人には詳細な情報が掲載されています。
情報公開に関する課題
「開催されるさまざまな会議体の議事録を、できるだけタイムリーに出したいのですが、掲載承認を取るのに時間がかかってしまう」ことも一つ課題だと松下さんは言います。
記録のデジタル化とWebなど公表・閲覧手段が容易に素早くなった現代でも、実際の会議開催後、議事録公表までのプロセスと承認までにかかる時間は、従来と大きく変わっていないのが現状のようです。
コンテンツ制作と更新
松下さんは入都(一般企業では入社)4年目。キャリアのスタートは交通局で地下鉄の経理業務。イベントの企画をやってみたいと、3年目の昨年この部署に移ってきました。
現在の文書広報担当部門の体制は課長以下5名。ただしオリンピック・パラリンピック準備局のWebサイトの運営を主に担当するのは、松下さん1人です。
サイトのコンテンツ制作に関しては、各部から新規・修正案件として松下さんの元に集められて、上司とともにコンテンツとして公開すべきか否かを判断します。承認が得られたものは、各部に所属する担当者がCMSを使って個別に直接入力します。最終的に松下さんが内容を確認して承認、公開するというプロセスとなっています。
各部の担当者に、月に一度、Google アナリティクスのデータをまとめたものを作成・配布して、期間中のイベント効果、ニュース配信の影響などを共有しています。
更新は概ね週に1~2回。前任者からの引き継ぎで「承認ボタンを押すとそのまま公開されてしまうこと。その影響の大きさを忘れずに慎重に」と何度も念を押されたことが印象に残っているそうです。
パラリンピックがもっと身近な存在に感じてもらいたい
現在松下さんが、特に力を入れているのがパラリンピック競技内容の理解と普及活動です。オリンピック・パラリンピック終了後のレガシー(遺産)活用という点からも、障害者スポーツの普及促進が必要ですが、オリンピックに比べるとパラリンピックそのものも競技内容もまだ周知されているとは言えません。
パラリンピック競技の種類は22種類あります。「ボッチャ」「ゴールボール」など競技そのものが知られていない競技もあれば、オリンピック競技と同じ名前の競技もあります。障害の内容や度合いによって、さまざまなルールが決められています。
ルールや参加条件などを理解するとパラリンピック競技の楽しみ方がわかるだけでなく、「自分も参加してみよう! 応援してみよう!」と思って行動してくれる方が増えてくれるのではないか、そんな期待を持って競技を詳しく説明しています(松下さん)。
SNS活用
オリンピック・パラリンピック準備局サイトの他に、公式SNSアカウントはTwitterとFacebookがあります。松下さんはそのうち、東京2020大会やそれに向けた取組、障害者スポーツの普及などに関する情報の発信を行っています。
現在Twitterは、週に2回程度投稿しています。特に報道発表がある際にはその当日投稿するようにして、事業告知、関連サイトへの誘導を積極的に図っています。
Facebookとの使い分け、SNSの活用は今後の課題ですが、Twitterは私も利用しているので、利用者目線で投稿をしていけたらと思っています。ぜひ注目してください(松下さん)。
今後の予定とオリンピック・パラリンピック終了後の役割
1000日を割ってオリンピックが近づいた今、「各部からのコンテンツも増えて、先に出したコンテンツが階層の下に隠れて、探しにくくなっているのが問題だと認識しています」と話す松下さん。
深い階層に置かれているコンテンツなどを整理して、訪問者がアクセスしやすく探しやすくする、コンテンツ整理主体のリニューアルをしたいと思っています。
また、多言語展開としては、日本語、英語、中国語、韓国語に対応しています。できるだけ英語テキストを増やすことを優先し、その後、英語テキストから中国語、韓国語へ翻訳というステップを取っているようです。
オリンピック終了後
取材の最後に、松下さんにオリンピック・パラリンピック終了後について伺いました。
「準備局のサイト」は2020年が終了した後どうなるかは現状わかりません。
スポーツ振興及びスポーツの力で人と都市が活性化する「スポーツ都市東京」を実現することを目指して、この機会に建設される競技施設(レガシー)の活用方法や、Webサイトのコンテンツもアーカイブサイトとして活用できればと、さまざまな構想を練っています。
オリンピック・パラリンピックは、日本国内どころか世界中から注目を集める大プロジェクト。準備局の広報担当者として情報提供の責任を担うのは松下さん含め数人程度。
スポーツやイベント企画が大好きと言う松下さん。持ち前の明るさで2020年夏を乗り切りましょう。デジタルネイティブ世代の腕の見せ所です。松下さんにとっても得難い機会となるでしょう。頑張れ!
都庁の職員食堂は誰でも利用できることをご存知ですか。
第一本庁舎32階にある職員食堂はメニュー豊富・リーズナブル・眺望良しの穴場スポットです。現在は五輪が描かれたフラッグが全国で展示される「東京2020オリンピック・パラリンピック フラッグツアー」に合わせて開催地の「ご当地メニュー」を昼時(11:30~14:00)に提供しています(入館手続きが必要です)。
天気が良ければ45階の展望室も無料で楽しめますのでお勧めです。カフェスペースやフラグツアーに合わせた各地の土産物なども販売していますのでぜひ。
松下さんとお会いした日はあいにくの空模様でしたが、展望室はお年寄りのグループと外国からの観光客であふれていました。
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