これからのアドマンに必要なスキルは
これからのアドマンに必要なスキルは
帷 自動化の波が来ているなかで、アドマンに求められるものはなんでしょうか。また、どういう能力を持った人が活躍していけるのでしょうか
富岡 ひとことでいうとコンサルティングができるかどうかではないかと思います。
今までのアドマンは、「どの枠をいくらで買い付けて、そこに対してどういう表現をするのか」という、いわゆるマーケティングのアドプロモーションに特化して考えればよかった。しかし、データを細かく取得できるデジタルマーケティングは、これまでより経営や商品開発などに直結しやすくなっているのではないでしょうか。
そこではクライアントの経営や組織構造を理解し、組織にどんなデータが散らばっていて、それをどうまとめればデジタルにおいて最大活用できるのか、また、それをどのように経営や商品開発、各々のマネージメントなどのレベルまでに展開できるかというところまで考えたうえで、広告の文脈から提言ができる人材が求められているではないかと思います。
これはあくまで私の考えですが、どのように思われますか?
帷 これまで代理店はパワープレイで多くの案件を同時にまわせることが存在価値という面もありました。しかし時代は変わりつつあります。私が考えるアドマンに求められる能力というのは主に2つあります。
1つは、今起きている状況を正しく把握する力。これはこの先も絶対必要です。
機械がどう動いているかはもちろん、数字変動ひとつが許容できる動きなのかそうでないのかを見極める力。機械や数字に踊らされることなく、いま起こっていることを正しく把握して、次のアクションを考えられる力は今後も必ず必要になります。
もう1つは妄想力。いろいろなことを妄想する力は、特にこの先必要となってくると思います。ユーザーひとりひとりがなにを思い、どういう状況でそこにいるのかというのをどれだけ妄想して、その人の感情にどれだけ訴えられるのかというのが、人の持つ感受性を生かす場面だと思います。妄想して企画に落としていく力。これからのアドマンに必要なのはこういった独創性だと思います。
富岡 いいですね。妄想力、すなわち先を見据えてどう動くか考えられる力は今後さらに必要になってくるスキルだと思いますね。
帷 「これからの時代はDカップだ」とおっしゃっている方がいました。いままでのPDCAは、ずっとプランニングしているだけでDO以降をやっていないんじゃないか。変化の速い時代においてはDCAP(Dカップ)。Pが一番最後でいいんじゃないかという主旨です。
小さいことでもいいので行動からはじめて、その結果、チェックしてアクションして、それから最終的な目標に到達するためにプランニングしていく ―― そういう流れで動かしていくほうが、デジタル時代においては有効なんじゃないかなと思っています
AIがもたらす未来のマーケティングは?
富岡 今後のデジタルマーケティングはマス広告のように、いかに需要を喚起していくかというニーズがより強くなってくると思います。
今までブランディングはテレビのような1対多のメディアで成り立っていましたが、1対1のデジタルメディアでどうブランディングをしていけばいいのでしょうか。
そのためにはAIをうまく活用し、広告を見ている人達がどのような状況にいるかを認識したうえで、そのニーズに対してしっかりと応える。もしくはニーズをあぶりだすくらいの感覚で広告配信ができるようになればデジタルマーケティングの需要はもっと増していくと考えています。
「デジタルマーケティングはブランディングができない」といわれることもありますが、デジタルマーケティングだからこそ出来るブランディングがあると思っています。
IoTやデジタルサイネージなど様々な媒体のパターンを用意し、それぞれの特性をしっかり理解して提供できる状態を整え、クライアントのみなさまが安心して出稿できるプラットフォームを業界全体で作っていくことが理想ではないかと思っています。それが実現できれば、デジタルマーケティングはこの先に進んでいけるのではないでしょうか。
帷 今までは1対1というと、どれだけ1人にメッセージを届けられるかが主流でしたが、これには限界があります。これからの時代は手元にあるデバイスだけが接触点ではありません。冷蔵庫や電柱など複数人が同時にアクセスできるものがデバイスとして広がっていく時代が来ます。
「1対多」といっても、そこにいるひとりひとりではなく複数のヒトにどう届けていくか、また、「多」をどうグルーピングし、そこに対する意味づけをどうしていくかも重要になっていきます。
さらに、大量のデータを収集し、AIの力を利用しつつ、先ほどお伝えしたようなスキルをもって人間がそれを把握して企画していくということが重要になっていくのではと思っています。
デジタル時代の媒体社と広告代理店の姿勢
デジタルの導入によって細分化が進んだが、ここからさきは「どう拡大をしていくか」がポイントだ。デジタルサイネージやIoTなどがデバイス化していったときに、そこからどうアクセスさせていくか。そこに関しては媒体社も努力しなければいけないし、広告代理店はクリエイティブやシナリオの部分で入ってコンサルティングを提供していかなければいけない。そうすることでマーケティングの最大化が図られていくというのが、理想的な流れになるのではないか。
デジタル時代には、従来のようないわゆる御用聞きではなく、媒体社も広告代理店もクライアントも同じ立場でマーケティングに向き合っていく、チーム編成が大事になっていくだろう。
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