CMS選定で考慮すべき19のソフトウェア特性指標
今日は、CMS選びのポイントの情報を。情報処理学会の「CMSを合理的に選択するためのソフトウェア特性指標の策定」という論文があるので、それをベースに考えてみましょう。
この論文は、ISO/IEC25010「システム及びソフトウェア品質モデル」をもとに、効果的なWeb CMSを合理的に選ぶためのソフトウェア特性指標を提案するもの。
論文で示されているの「CMS選択のためのソフトウェア特性指標」は、次の19個です。
- Web構築の合目的性
- Webシステムの高速性
- サーバー要件
- クライアント動作環境
- 想定アクセス数
- 外部連携
- サイト利用者へのサポート
- サイト運営者へのサポート
- 誤操作対応
- 画面レイアウトなどのカスタマイズ容易性
- 多言語への対応度
- アクセス管理
- 承認フローや業務フローの柔軟性
- 脅威への対応度合
- 障害予防や障害発生時の対応度
- 機能適応性
- 他CMSからの移行
- ソフトウェアの普及・安定度
- 費用
この指標は、なかなかよくできていると思います。
CMS選定というと、(Web担でも昔は出していましたが)CMSのもつさまざまな「機能」をもとに、「この機能を備えているもの」という星取り表ベースの選び方が多いかと思います。
でも実際のところ、そうした星取り表は、情報としては微妙なんですよね。ベンダーさん側はできるだけ「○」が多くなるように回答してきますし、とりあえず「○」が付くように機能を実装するようなことも。
それに、機能に気を取られすぎると、本当に大切な「そのCMSで構築するWebサイトは、何を達成するためのものなのか」という観点から離れてしまいがちです。
その点、このリストの先頭に「Web構築の合目的性」があるのは正しいことです。
CMSにも、いろいろあります。
- フレームワーク的なもの
- 大規模サイト向けのもの(多くがフレームワーク的なもの)
- 中小規模サイト向けのもの
- 個人ブログ向けのもの
- 自治体サイト向けのもの
- 学校サイト向けのもの
- ポータルサイト向けのもの
- コミュニティサイト向けのもの
上記で「フレームワーク的なもの」と示したものは、多くがCMSをインストールしただけでは何もできず、思ったとおりのサイトを作るには相当量の開発が必要です。「高機能でいい!」と、そうしたCMSを選ぶと、使い物にならずにお金と時間をどぶに捨てることになります。
逆に、「安くて使いやすそうでいい」と選んだものでは拡張性が低く、やりたいことを実現するにはCMSのコアコードを修正するしかなくなるなんてこともあります。そうなると、セキュリティアップデートの対応もおっくうになり、よろしくない状況が生まれます。
もちろん、この19個のポイントだけでCMSを選べるわけではありません。
論文の最後のほうにあるように、「Web構築の合目的性」をブレイクダウンすると、もっと細かい機能要求になってきます。
結果として、多少は星取り表的な判断も出てきます。
でも、最初から星取り表ベースでCMSを選ぶのではなく、まずこの19項目を選定基準のベースにし、それぞれの項目を掘り下げて考えていくのは、良いやり方だと思います。
ここに示されていないもので重要なものと言えば、
- ソーシャル連携
- Googleアナリティクスなどアクセス解析ツール連携
- DMP連携
などが思いつきますが、これらは「外部連携」の詳細項目だと考えられます。
コンテンツ作成時のサポート機能としては、
- HTMLチェック
- リンクチェック
- 画像ファイルチェック
- 自動校正
などが思い浮かびますが、これらも「サイト運営者へのサポート」の詳細項目ですね。
唯一、この指標で足りていないのは、開発者向けの観点でしょうか。前述のように、CMSの多くは、開発が必ず付随してきます。開発がないとサイトが完成しないとすれば、開発者向けに次のような要件があるといいでしょう。
- 機能拡張開発時のセキュリティ機能サポート
- ドキュメントの充実(できれば日本語ドキュメント)
前者は「脅威への対応度合」に含まれるとは限らないので、意識しておきたいですね。後者はまぁ、「ソフトウェアの特性指標」とは異なるので、観点は少し違いますが。
あとは、
- 制作をプロに頼むのではなく自分で行う場合は、「デザインテンプレート(テーマ)の充実度」が重要
- 組織で導入を稟議にかける際には、「(同業種の)導入事例」があると、話を通しやすい
というものがありますが、これらも「ソフトウェアの特性指標」とは少し違うので、この論文で扱う範疇ではないですね。
Web担当者的な視点では、すごく重要なんですけどね。
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