インタビュー

Facebook井上氏「刈り取りだけじゃないデジタル広告を試してほしい」――FB広告のターゲティング全設定を大公開

フェイスブック広告が備える強力なターゲティング機能を網羅して紹介

リスティング広告では、これ以上効果を伸ばせない」そういうときに、デジタル広告の担当者はどうすればいいのだろうか。

刈り取りだけでない、認知拡大や新たなターゲットへのリーチは、大企業であればマス広告やブランドパネルなどを使える。しかし、それ程の予算はないという企業は、どうすればいいのか。

フェイスブック広告ならそれと同じようなことができると、同社SMB担当執行役員の井上英樹氏は言う。フェイスブック広告の、圧倒的なターゲティング機能と精度によって、「幅をとる」広告も、「絞り込んだ」広告も、どちらも実現できるからだ。

井上英樹氏
Facebook Japan 執行役員 SMB(中小企業)事業担当

まず、フェイスブック広告を使ったことがない方のために、フェイスブック広告が備える強力なターゲティング機能をズラっとご覧いただこう。

フェイスブック利用者の登録情報や趣味・関心をもとにした、このターゲティングの細かさは圧倒的だ(2016年4月時点での日本のアカウントからの例)。

フェイスブックに広告を出すとどういう人にリーチできる?

「フェイスブック広告ってどうなんだろう」と考えたときに、まず気になるのは、次のことだろう:

フェイスブックを使っているのはどんな人なのか。

フェイスブック広告を出稿すると、どんな人にリーチできるのか。

しかし、そうではない考え方をするほうが良いのだと、フェイスブックの井上英樹氏は言う。

これまでの「広告」では、広告主はこう考えていました。

我々の商品のターゲットはこういう人だから、そのセグメントが多いこのメディアで広告を出稿しよう。

しかし、フェイスブックで広告を出稿する場合は、少し違う考え方のほうが良い結果になることもあります。具体的には、

まずターゲットを絞りすぎず広くトライして、その中から実績としてターゲットを見つけていく

というやり方です。(井上氏)

これまでのデジタル広告の出稿は、大きくは次のような流れだった。

  1. その商材・サービスでターゲットとするユーザー像を決める。

  2. そのターゲットが利用しているだろう媒体をリストアップする。

  3. ターゲット層の多寡と、リーチ単価で、どの媒体に広告を出すかを選ぶ。

もちろん、このやり方が間違っているわけではない。しかし、これを正しくやればやるほど、「作った側が想定していなかった人たちがたくさん買ってくれた」というような、思いがけない結果につながることは、少なくなる。

しかしフェイスブック広告は、「使う広告費の上限を決めたうえで、とりあえず広めの範囲に広告を出し、その結果を見ながら有効なセグメントを見つけていく」というやり方ができる。

「コンバージョンに至る可能性が高いことがわかっているセグメントに対してリーチしていく」だけでなく、「自社の商材と相性が良いセグメントを探しながらメッセージを届けていく」という広告の使い方ですね。(井上氏)

リスティングではこれ以上伸ばせない、予算はあるのに……

コンバージョン率だけを考えると、リスティング広告やリターゲティング広告に軍配が上がるだろう。世の中のいろいろな人のうちターゲットとなる人たちだけに絞り込んで広告を表示するため、正しいターゲットであればそれが購入につながる可能性が高いからだ。

しかしその一方、リスティング広告では、獲得できる顧客のパイを広げることは容易ではない。入札するキーワードの幅を広げ、広告クリエイティブの改善を繰り返していった広告主が、「リスティング広告からはこれ以上お客さんを増やせない」という状態に行き着いているという話はよく聞く。

成果をさらに伸ばさなければいけないし、広告予算もある。しかし、どこへ広告を出せばいいのかわからない」という状態だ。

その状態を打開するには、これまでと違うセグメントを攻めていかなければいけないのだが、「販路拡大」「パイを広げる」ことは、一般的なデジタル広告が得意ではない部分だ。

大企業であれば、テレビCMなどのマス広告や、大規模ポータルサイトのブランドパネルのような枠を使える。しかし、中小規模の企業では、そこまでの広告費はかけられないのが普通だ。

そこで、フェイスブック広告を使い、これまでリスティング広告で狙っていたよりも幅広いターゲットに対して訴求することで、リスティング広告では拾えなかった層のユーザーにリーチするのだ。

テレビCMやブランドパネルと違い、フェイスブック広告ならば、コスト的にはグーグルやヤフーの広告とほとんど差はない。1,000円程度の少額から利用でき、クレジットカードを登録しておけば先に入金しておく必要はないし、広告代理店を通す必要もない。月額の上限を、たとえば2万円と決めて試してみることもできる。

また、フェイスブック広告の強みに、ターゲティングの精度がある。

冒頭に示したように、地域・年齢・性別・言語のほかに、細かな趣味関心、さらにはFacebookページやアプリの利用状況まで選んで細かく選択できる。自分のFacebookページにすでに「いいね!」している人を入れるか入れないかなど、細かい設定が可能だ。

Facebookの広告ターゲティング設定画面

多様かつ細かくターゲティングを設定できるため、「多少広くターゲティングする」場合にも、「少しずつターゲティングを狭めていく」場合にも、細かくターゲットを変更しながら反応を調べられるのだ。

フェイスブック広告をターゲティングの幅を調整しながらうまく利用すると、大企業がテレビCMを使って行うブランディングと同じようなことを、少額から試せるのです。(井上氏)

もちろん、テレビCMの代わりという考え方だけでなく、もっと身近な、

  • リスティング広告をやっていて効果が落ちてきた
  • 入札単価が高騰してきて、今のやり方では刈り取りにくくなった

という課題の解決方法としても、フェイスブック広告ならではの効果を出せる。

コンバージョンの「率」優先、「数」優先、どちらの使い方もできる

広告には「コンバージョン率優先」と「コンバージョン数優先」の2種類の考え方がある。

リスティング広告、特に検索連動型は、コンバージョン率は良いが、「検索数を増やす」ことは広告主側ではできない。そのため、コンバージョン数を一気に増やしたいという用途には向いてない。

逆に、メディアサイトに出す広告は、コンバージョン率はリスティング広告に比べると低くても、一気に多くの人に見せることでコンバージョン数を短期間で稼ぐものだ。

ではフェイスブック広告はどちらに向いているのだろうか。井上氏は次のように言う。

結論から言うと、フェイスブック広告は、「コンバージョン率優先」でも「コンバージョン数優先」でも使えます。最終的な目標をどこに置くかによって使い方を変えることができるのです。

それよりも大切なのは、広告を出稿する際に、「何のために広告を出すのか」というビジネスの目標を明確にすることです。(井上氏)

フェイスブック広告では、広告を出稿する際に、まず「何を目的とするのか」を選ぶようになっている。

フェイスブック広告の目的設定

この目的設定に加えて、広告を表示する対象(ターゲティング)を調整することで、CPAを低く抑えるために検索連動型のように絞り込んで出すこともできるし、多少CPAが悪くなってもたくさんの人に露出するという出し方もできるということだ。

何のためにその広告を出すのかという最終的な目標に合わせて、ターゲットを決めればいいのだ。

デジタル広告で失敗しないための3原則

問題は、その「目標」の設定の仕方です。

井上氏は言う。

デジタル広告の担当者には目標とする数値(ゴール)が当然あるでしょう。しかし、そのゴールが自社のビジネスにどのような効果をもたらすかまで自覚していなければ、デジタル広告に使った費用が無駄になることもあるのです。

たとえば、

  • クリック単価をいくらまでに抑える
  • 訪問者数を何人以上にする

という目標があったとします。それ自体は適切であるように思われます。しかし、それを達成すると会社のビジネス指標にどのような効果をもたらすかを説明できなければ、正しい目標設定だとは言えません。

デジタル担当者が広告出稿に用いるゴールは、その延長線上に会社のビジネスゴールがあるものでなければ、意味がありません。(井上氏)

デジタル広告はオフラインの広告と違って、表示された回数などの数値が明確にわかる。そこで、担当者は管理画面に表示される数値にこだわりがちだ。

しかし、見えている数値とビジネスへの効果は直結しているとは限らない。

そこで井上氏は、デジタル広告で失敗しないための3原則を説く。それは、次の3つだ。

デジタル広告で失敗しないための3原則
  • ビジネスのゴールとデジタルのゴールを一致させる
  • トライアンドエラーで最適化する
  • 最終的な目的(購入など)までの動線を設計して戦略を立てる

それぞれ、次のようなものだ。

デジタル広告で失敗しないための原則その1
ビジネスのゴールとデジタルのゴールを一致させる

デジタル広告の施策がビジネスの目的に合っているかどうかは、さまざまなテクノロジーを作って測定できる。

広告の目的が「購入してもらうこと」の場合、オンラインで販売していれば、技術的な知識があればコンバージョン測定が可能だ。

オフラインのビジネスの場合は購入の一歩手前の資料請求などで計測するしかない場合もあるが、フェイスブックではO2Oの取り組みを強化している。たとえば、お店から半径5km以内に表示する近隣エリア広告で、予約の電話をかけるボタンを表示したり、地図を出してお店までのルートを表示したりといった機能だ(現在は米国のみで提供)。

もちろん、ユーザーをサイトに連れて行ったり、Facebookページのいいね!数を増やしたりということを目的に広告を出稿する場合でも、広告の目標とビジネスの目標を揃えることはできる。

たとえば、

  • サイトの訪問者が○万人増えれば、結果としてコンバージョン数が○件増える

  • Facebookページのいいね!数が○万件増えれば、通常のコミュニケーションを通して半年後にブランド想起率が○%増える

といった過去のデータによる効果の推定ができる場合がそうだ。

デジタル広告で失敗しないための原則その2
トライアンドエラーで最適化する

デジタル広告で重要なのは、一度設定したらそのままにしておかず、データを見ながら改善していくことだ。いわゆる「PDCAをまわす」というものだ。

そのためにも、広告で利用するビジュアル素材やキャッチコピーなどは3パターン程度用意しておくのがいい。

仮説に基づいて複数の素材を用意して登録しておけば、それらを自動的にA/Bテストし、反応がいいターゲットに自動的に最適化する機能も、フェイスブック側で提供している。

デジタル広告で失敗しないための原則その3
最終的な目的(購入など)までの動線を設計して戦略を立てる

カスタマージャーニーマップのような考え方で、潜在顧客を育てていかないと、広告効果は焼き畑農業になる。

いま買ってくれている人はどういう人で、どういう場面で買ってくれたのか、情報を得た場所にどうやって来たのかなど、買ってくれるまでの行動のプロセスを社内で議論すべきです。(井上氏)

精度の高いマーケティングは、もはや大企業だけのものじゃない

フェイスブック広告の特長として、

  • コスト面のハードルが非常に低い
  • 管理画面は全て日本語化されている
  • PCを使わず、スマホアプリからだけでも広告出稿できる
  • 代理店を通さなくても出せる

といった点が挙げられる。

さらに2015年春から、サポートが強化されている。

まずは、フォーラム(掲示板)の充実だ。ユーザー同士で疑問を解消すると同時に、フェイスブックの社員がファシリテートする形で問題解決のための情報を提供している。

また、過去6か月以内に広告出稿の実績がある場合は、画面にメールフォームのボタンが表示され、ここから行った質問には、フェイスブック社員が1営業日以内に対応するという。

さらに、フェイスブック広告を体系的に学べるオンラインのラーニングシステム「Blueprint」の日本語版を2016年2月に発表しました。

日本のフェイスブックユーザーは、2500万人(2016年3月末時点)、ユーザー層は多様だ。その中から、どこに向けて広告を出すかは、広告主側でコントロールできる。

マーケティングという言葉は大企業が使う用語だ。ウチのような中小企業には関係ない。

マス広告に使えるほどの広告予算はない。

と諦めている企業でも、フェイスブック広告なら低コストで精度の高いターゲティングが可能だし、マスにもリーチできる。

さらに言えば、ターゲットの設定で日本以外を選べば、海外にも同じように広告を出せます。

これまでは、海外向けにマーケティングをするには、大きなコストが必要でした。しかしフェイスブック広告ならば、言語対応さえすれば、低コストで簡単に海外向け展開ができます。

これを利用して、海外向けの売り上げが数十倍になったSMBの例もあるという。そうしたフェイスブック広告の成功事例がFacebook for Businessに掲載されているので、参考になりそうなものを見つけてほしい。

すでに「Web」「ソーシャル」「デジタル」などを含むマーケティングが、新しく特別なものだという時代ではない。

どんな企業でも財務・会計といった役割が、当然のように組織にあります。それと同じように、マーケティングも企業活動に当然必要だというようにならなければいけません。(井上氏)

参考資料
用語集
CPA / O2O / クリエイティブ / コンバージョン / コンバージョン率 / リスティング広告 / リターゲティング / 広告代理店 / 訪問者
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