ネットはまだアヤしい場所? シニアの心理的ハードルを下げ安心してもらう6つの方法(全6回の2)
ネットはまだまだ「アヤしい」ところ? シニアが不安を感じるポイント
シニアがインターネットを利用する際の大きな障害の1つが、心理的ハードルです。
- お金をだまし取られるんじゃないか?
- 個人情報が漏れるのでは?
- 変なところをクリックして壊れたら(?)大変だ!
- このホームページ、なんだか難しそう……
インターネットメディアへの信頼性は、テレビや新聞などと比較してまだまだ低いのが現状です。特にこの傾向がシニア世代で強く、2015年5月における総務省の調査結果では、ネットの信頼度はテレビや新聞の半分から3分の1という数値が発表されています。
今回は、こういった不安を取り去り、シニアに安心してコンバージョンまで到達してもらうためのポイントとその対策を解説します。具体的には以下の6つです。
- ファーストビューに会社概要への導線があるか
- ファーストビューに電話番号・対応時間があるか
- なじみの薄いカタカナ言葉、アルファベットを使っていないか
- 会員登録せずに購入できるか
- 「代金引換」ができるか
- クチコミ情報には性別と年代が添えられているか
①ファーストビューに会社概要への導線があるか
シニアユーザーによるECサイトのユーザーテストを観察していると、商品購入前に「会社概要」を確認している人が多いことに気が付きます。
これは「本当に商品が送られてくるのか?」「だまされたりしないか?」などという不安を少しでも解消するため、そのウェブサイトを運営している企業が信頼に値するのか「査察」をしているのです。どのくらいの規模なのか、どのくらい歴史があるのか、経営者はどんな人なのか……。なかにはグループ系列や取引先まで確認する人も見かけます。
こうした「査察」行動をスムースに行ってもらうため、一番よいのはグローバルナビゲーションの一項目として「会社概要」や「○○(企業名)について」への導線を含めておくことです。
スペース的に厳しいようであれば、最低でもヘッダーやサイドナビのファーストビュー範囲内に設置しておきましょう。シニアは一番下までスクロールして隅々まで探すということをしないので、フッターに置くだけでは不十分です。
たとえば「アメリカンホームダイレクト医療保険」では、商品と並んで「アメリカンホームについて」というボタンが用意されています。
また会社概要ページには、代表者やマネージャクラスの方々の人柄がわかるよう、経歴や顔写真を掲載しておくと効果的です。
②ファーストビューに電話番号・対応時間があるか
シニアにとって、何か困ったことがあったときに、電話や対面で直接聞くことができるという体制は、たいへん心強いものです。企業が問い合わせ対応用の電話番号を用意している場合には、ぜひファーストビュー内の目立つ位置に掲載しましょう。このときに対応可能時間についてもあわせて明記するようにしてください。
また電話番号掲載の副次的な効果として、「コールセンターを持っている=信頼に値する企業」というイメージを与えることができます。逃げず隠れずユーザーに誠実に対応しようとする姿勢を見せることで、信頼が自然とついてくるのです。
健康食品を販売する「味の素健康ケアオンラインショップ」では、右上ヘッダー部分に電話番号と対応時間がかなり大きく掲載されているのがわかります。
③なじみの薄いカタカナ言葉、アルファベットを使っていないか
シニアはインターネット特有のカタカナ言葉やアルファベットであふれかえったサイトを見ると、「ここは私向けのホームページではない」と判断してしまいます。またわからない言葉があったときに、キーワード検索を行わず、クリックしないで避けるという傾向があります。
メニューやコンバージョンに直結する導線上にある言葉については、できるだけ平易なものに言い換えたり、補足文言を添えておいたりするとよいでしょう。言い換えの例としては、以下のようなイメージです。
言い換え対象の表現 | 言い換えの例 | |
---|---|---|
「アカウント」 「ログイン」 | → | 「会員の方はこちら」 |
「レビュー」 | → | 「お客様の声」 |
「アクセス」 | → | 「交通案内」「地図」など |
シニア世代から人気の旅行代理店であるクラブツーリズムのサイトでは、ファーストビュー右下にあるログインパネル内に、「会員の方はこちら」という文言を添えているのがわかります。
言い換えや補足の必要性の判断目安としては、「電車の中吊り広告や、新聞広告に使われても違和感がないかどうか」というのはいかがでしょうか。
なお、アルファベットを用いた固有名詞などについては、「ふりがな」を添えることで抵抗感を和らげることができます。
④会員登録せずに購入できるか
前回記事で紹介したように、インターネットを利用している途中で会員登録が必要だと言われると、シニアはそこであきらめて離脱してしまう傾向があります。
その理由の1つが、「会員登録をすると大量の“迷惑メール”が来てしまうのでは?」という不安です。
最近は規制により減少傾向にありますが、少し前まではユーザーが気付きにくい場所に、大量のメール配信許可設定がオプトアウト方式(必要ない場合のみチェックを外す)で設置されているサービスをよく見かけました。こうした状況が長く放置されていたことが、会員登録にネガティブなイメージを植え付けてしまったようです。
また別の理由として、会員登録につきものである「アカウント名」や「パスワード」を考えたり、覚えたりしておくことが苦手であることが挙げられます。特にパスワードは文字数、大文字/小文字、数字や記号のミックスなど、サイトによって制限が異なる場合が多いことが負担感を高めています。そしてせっかく作ったアカウント名やパスワードも、手元のメモ帳に転記する際にミスをしてしまったり、そのメモ自体をなくしてしまったりということもよくあります。
上記を踏まえ、会員登録しなくても購入や申し込みができるのがベストですが、どうしてもという場合は、会員登録のメリットと合わせてメールマガジン配信タイミングを明記しておくこと、アカウント名はできるだけメールアドレスと共通にすること、パスワードは設定制限を設けないことなどの配慮をしておきましょう。
⑤「代金引換」ができるか
シニアのなかには、インターネット上でクレジットカード番号を入力することに抵抗感を持つ方も、いまだ少なくありません。その背景にはやはり、「詐欺に遭うのではないか?」といった不安があります。また「私はクレジットカードを持たない主義だ!」と主張される人もいます。
次のグラフはインターネットで商品を購入する際の決済手段について、2014年に総務省が行った調査結果です。これを見ると、やはり「クレジットカード」の利用率は年代が上がるほど低くなり、逆に「代金引換」や「銀行振込」が高くなっています。
これらのなかで、特に「代金引換」(代引き決済)は、手元に商品が届いてからの支払いとなるため、前述のようなシニアユーザーの不安を払拭するのに効果的です。ぜひ選択肢として用意しておきましょう。
⑥クチコミ情報には性別と年代が添えられているか
申し込みや買い物をする前に商品レビューなどのクチコミ情報を確認する行動は、シニアの間でも浸透してきました。しかし、次のような疑問の声がよく上がります。
このクチコミ、だれが書いているの?
これには2つの意味があり、1つはいわゆる“サクラ”ではないか確認したいということ、そしてもう1つは、あまりに違う年代の声は自分と感じ方が違うとして参考にならないと考えていることです。
自分と近いプロフィールの人が書いたものだとわかれば、そのクチコミ情報に対する信頼感や親近感が高まりますし、それと同時に「自分もここを利用していいんだ」というポジティブな態度をとりやすくなります。
そのため、あらゆるクチコミ情報に関して、書いた人の性別と年代がわかるようにするとともに、閲覧の際にそうしたプロフィール情報で絞り込みができるようにすると、より親切です。
たとえば「ベルメゾンネット」では、性別・年齢でのレビューの絞り込みが可能です。
まとめ
今回の心理的ハードルについての解説はいかがだったでしょうか? 私たちのようにインターネットの利用に慣れている人間にとっては、特にこうした「気持ち」の部分については想像することがなかなか難しくなってきているのではないかと思います。
シニアの不安を払拭し信頼を勝ち得ることによって、今回限りのコンバージョンだけではなく、リピート率にもよい影響が見られるはずです。
次回は、年齢とともに低下する「記憶力」に代表されるような、アタマの“技”を補う術をご紹介したいと思います。
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