なぜ企業ホームページはいつもコンテンツ不足なのか?
企業のホームページはコンテンツ不足である。
なぜ企業ホームページはいつもコンテンツ不足なのか
20年近くホームページの分析と改善を行ってきましたが、その間ずっと変わらないことです。分析するホームページのほとんどが、コンテンツ不足なのでこれは何とかしなければいけないと思ってきました。
ホームページが立ち上がってから、企業は何かしらの情報を追加し、ページを更新しているはずです。ということは時間とともにコンテンツが充実して、良いホームページになっていくはずです。しかし、ちっともそうなっていきません。
この連載では、まずコンテンツとは何なのか? を改めて考え、連載の最終回では大胆にも「誰でも湯水のようにコンテンツを考えられる方法」に迫っていきます。コンテンツを作ったり企画したりするWeb担当者に限らず、誰でも実践可能ですから、ぜひご活用ください。
コンテンツとはお客様の役に立つ内容
まず、コンテンツを定義しましょう。ネットの辞書などで調べると、コンテンツとは「内容」「中身」と、みもふたもない定義が出てきます。辞書としては正しいかもしれませんが、これでは何もいっていないのと同じですね。
一番簡単なコンテンツの定義は次の通りです。ぜひ、覚えてください。
コンテンツとは、お客様の役に立つ内容です。
どのホームページにも辞書に定義されているような「内容」、「中身」はたくさんあります。しかし、「お客様の役に立つ」という視点が足りないので、その視点がないページがたくさんあったとしても、コンテンツは無いに等しい状態なのです。
スーパーの野菜売り場にたとえて考えてみよう!
これを、スーパーの野菜売り場にたとえて考えてみましょう。野菜売り場には、野菜が種類ごとに並べられたトレイがあります。それぞれは美味しい、栄養がある、といった価値で「お客様の役に立つ」ように並べられています。
しかし、お客様もいろいろです。たとえば、キュウリを買うとしましょう。1人暮らしで毎日買い物する場合は、キュウリは1,2本で十分かもしれません。一方、家族で週末にまとめ買いをする場合は、もっと多くのキュウリが必要かもしれません。
コンテンツは、お客様によって「役立ち方」が違うものです。今回は、野菜売り場で説明しましたが、この種類別に並べられたトレイを、企業のホームページのコンテンツに置き換えて考えてみてください。ホームページに訪れるお客様にとって、どんなコンテンツがあると良いのか、改めてご自身のホームページを見てください。お客様の期待に合わないコンテンツをいくら用意しても、手に取ってもらえません。
野菜売り場のたとえを続けると、お客様はなぜそのスーパーに出かけるのでしょうか? お客様はキュウリが欲しい。そして、そのスーパーに行けばちょうどいい「役に立つ」キュウリがあることを知っているからです。これはコンテンツの働きを示しています。
役立つと思えばこそ、お客様はやってくるのです。役に立たなければ、お客様はやってきません。また、役立つものがあったとしても、そこにあることを気づいてもらえなければ、お客様はやってきません。
SEOを重視したコンテンツが本当にお客様の役に立つものなのだろうか?
この頃「コンテンツSEO」という言葉が出てきましたが、この考え方は本末転倒です。よく検索される言葉(キーワード)を使って、ページを作ることを重要視しすぎて、商品や企業の必然性から離れてしまっているからです。
ホームページには、コンテンツがあるからお客様がやってきます。これは当たり前のことで、最初の出会いがたまたま検索エンジンを介して発生することが多いので「SEO」のように見えるのですが、検索エンジンで評価を上げるために作られた読み物は、お客様にとって本当に役立つものになっているか疑問です。
また、コンテンツは最初の出会いだけではなく、自分にとって役に立つコンテンツだと思ってもらえれば、長い付き合いを発生させます。ちょうど良い野菜が揃っているスーパーには行きますし、また行きたいと思うはずです。これはホームページにとっては、リピーターの定着を意味します。
ホームページの商品情報はコンテンツではない?
野菜のたとえをすると多くの人が「キュウリはスーパーにとって商品そのものであって、それはコンテンツとは違うのではないですか?」と言います。
これが企業ホームページで一番不思議だと感じるところです。つまり、商品情報のページは何ページあってもコンテンツではないようです。コンテンツというと、「知る・楽しむ」といったコーナーとして別扱いするのが前提のようになっています。しかし、それではうまくいきません。
あなたの会社の商品は、誰かの役に立つように作られています。そのことをちゃんとお客様に伝えることが一番のコンテンツの役割です。ですから、コンテンツは商品説明とは別の「楽しい読み物」だという考え方から一度離れましょう。
この上記の意味は、コンテンツを商品情報と別コーナーにすることが悪いということではありません。しかし、往々にして、別コーナーとしてその読み物を持っている意味づけが希薄になると感じています。
つまり、こういう商品だからこういうコンテンツ、という必然性がないので、人がたくさんコンテンツに訪れても、肝心の商品は見てくれないという結果になります。ここで例を2つ紹介しましょう。
食品関連企業が運営するレシピ集
レシピ集を開始した当初は、自社の商品を使ったレシピを紹介していました。しかし、新レシピを追加していくうちに、だんだんレシピがネタ切れで幅を広げなければならなくなって、次第に自社の商品を使わないレシピが増えていきました。
これでは何のためにレシピ集を運営しているのかわからなくなってきました。でも、その会社の担当者いわく、「すごい人気コンテンツになっているので、今さら更新を止められないんです……」。まさに、人がたくさんコンテンツに訪れても、肝心の商品を見てくれないという現象です。
ネット上にある辞書・事典
ネット上にある辞書・事典もこのような残念な結果になることが多いコンテンツです。確かに多くの人が検索からやってくる出会いのチャンスを持っていますが、その1ページだけ読んで大半の人が直帰してしまいます。調べ物をしているときは、その言葉の意味さえわかれば良いので、それを教えてくれたホームページがどの会社のものかなんて覚えません。
調べ物をしているときは最初に見つけたホームページに書かれた内容が間違っているといけないので、検索エンジンに戻って他の検索結果をクリックして内容を確認しようとします。3、4つのホームページで同じようなことが書かれていたら、この意味は正しいと思ってと安心するのです。ですから、検索で最初に見つけた辞書ホームページからは直帰する必要があるのです。
企業ホームページのページが増えてもコンテンツは不足したまま
企業や商品にとって必然性のない読み物を制作することは単なるコストです。いくらホームページの訪問者を増やしたいといっても、そのためにコンテンツを作成することは意味がありません。少し作って予算切れになるのが目に見えています。
企業や商品に必然性のある読み物、企業情報や製品情報は、いつまでたっても「お客様の役に立つ」ものにしようとしていません。あまりにも言葉足らずで、しかも社内用語ばかりで作るので、お客様が訪れないし、訪れたお客様が「良い情報を見つけた」と感じられないのです。がまんして宣伝を読まされているような状態です。
このような理由で、企業ホームページはどれだけページが増えても「コンテンツ」は不足したままなのです。
この状況を根本から変え、企業が誰でも自社のホームページに最適なコンテンツを湯水のように作り出すにはどうすれば良いでしょう? 企業のWeb担当者の仕事のかなりの部分は「コンテンツを考えること」ではないかと思っています。もう少し丁寧に書くと、「コンテンツを考えることによってお客様と出会い、その役に立って、ビジネスを成功に近づけること」だと思っています。
そのことを考えるために、次回は「優れたコンテンツの7つの条件」を検討していきましょう。
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