コンバージョン率最適化を、正しくA/Bテストで進めるための5つのステップ(前編)
この記事では、コンバージョン率の最適化プロセスについて、詳しく説明する。まず、一目でわかる答が欲しい人やおおまかに理解したい人のために、プロセスを図式化したものをお見せしよう。これは僕たちDistilledが採用している方式だ。
コンバージョン率の最適化には1つ問題がある。それは、簡単そうに見えるということだ。ある程度オンラインでの仕事を経験したことがある人なら、顧客のWebサイトを見るだけで、コンバージョンを妨げていると思われる問題をすぐに探し当てることができる。よくあるのは、次のようなものだろう
- カスタマーレビューがない
- 信頼性やセキュリティの高さをきちんと伝えていない
- 製品のセールスポイントを的確に伝えていない
では、これが問題だという確証は、どうすれば得られるだろう?
実のところ、確証はない。確かめる唯一の方法は、テストして結果を見ることだ。だが、そうとわかってはいても、根拠はほとんど直感だけというような事項を、どうやってテストすればいいのだろうか?
僕に言わせると、ここにこそ、高度な調査や発見に手間と労力をかける価値がある。何をテストするべきか仮説を立てて、すぐにテストを始めるのはあまりに安易すぎる場合もある。対象オーディエンスからの実データに基づいてコンバージョン率をテストする方がいいのではないだろうか?
だから、この記事では、テストや結果のレビューよりも、プロセスの「発見」段階について話すことに多くの時間をかけている。
では、プロセスを見ていこう。
この段階で重要なのはただ1つ、テストを特徴づけるデータを収集することだ。これには時間がかかるかもしれず、クライアントと一緒に作業しているなら、ある程度の予測を立てておかなければならない。実のところ、これは非常に重要な段階であり、正しく行えば、後のプロセスで起きるかもしれない多くの問題を避けられる。
ステップ1データの収集
データを収集できる領域は大きく分けて3つある。順に見ていこう。
①企業のデータ
これは、あなたが仕事をしている会社やWebサイトだ。テストに役立つ情報を大量に収集できる。
その会社は何のために存在しているのか?
僕はいつも「なぜ」で始めるのが一番だと思っているのだが、これについては以前にもリンクビルティングとの関連で話したことがある。
企業の存在やその事業の核心に飛び込んで、他社との差別化要因を発見できるのがこの段階だ。
これは単にUSP(Unique Selling Proposition=独自の強み)を見つけるだけのことではない。それよりもっとずっと深いところ、会社の文化やDNAに関わることだ。なぜなら、顧客は製品そのものと同時に、その会社や会社が表すメッセージを購入しているものだからだ。僕たちは皆、すばらしい製品やサービスを作っていそうな企業に親近感を抱くが、僕たちが関心を持ち続けて購入する理由は、その会社そのものへの愛着にある。
会社の目標は?
これはとても重要な問題だし、理由は言うまでもないだろう。データの収集やテストは、こういった目標達成に重点を置かなければならない。
目標のなかには、あまり明白でないものもある。これらは時にマイクロコンバージョンと呼ばれ、より大きな目標に貢献するものを含むことがある。たとえば、メールでのニュースレターに登録してくれる顧客は、登録してくれない顧客よりもリピーターになる可能性が高いかもしれない。したがって、人々にメーリングリストに登録してもらうことがマイクロコンバージョンとなる。
会社独自の強み(USP)は?
同じ製品や類似の製品を販売する競合企業と比べて、何がその会社の差別化要因になっているだろうか?
そのUSPは、競合相手に真似できないものであれば、なおよい。たとえば、無料配送サービスはコンバージョンを増やす助けになるかもしれないが、競合相手も対応できる可能性が高い。
よくある不満は?
ここは、組織内のマーケティングチーム以外の人と話すべきだ。
たとえば、販売チームのスタッフと話をして、彼らが製品をどのように販売しているか、何がUSPだと思うか、製品に対する典型的な不満にはどういったものがあるか尋ねてみることだ。
あるいは、カスタマーサポートスタッフと話をして、主にどんな問題に対処しているか聞いてみるのもいい。これらの担当者は、顧客がどういったものを最も気に入る傾向があるか、好意的なフィードバックの内容、製品の改良点についてどういった提案を受けているかなどの情報も持っているだろう。
また、Webサイトでチャットによるサポートをしているなら、その管理チームにも話を聞いておくべきだ。Distilledでは、ライブチャットの記録にアクセスして解析を行うことで、トレンドやありがちな問題を発見することがしばしばある。
②Webサイトのデータ
ここでは、特にWebサイトそのものに重点を置いて、実験を特徴づけるどのようなデータを収集できるか見ていこう。
販売プロセスはどうなっているか
ここでは、大きなホワイトボードを用意し、Webサイトあるいはメールなどのマーケティング素材と顧客との各タッチポイントを含め、販売プロセスを最初から最後までクライアントとともに綿密に検討することを推奨する。ここから、プロセスの各部分を細部まで探ることによって、どこで問題が生じ得るかを発見できる。
この段階ではまた、Googleアナリティクスの[マルチチャンネル]レポートを調べるべきだ。まだ設定が済んでいなければ、ここで設定しよう。ユーザーの流入が急激に減少するポイントはどこかを探して、その理由をさらに深く掘り下げよう。
原因が技術的問題にあることも考えられるため、問題を見つけようとするときには、データをブラウザ別に整理すること。
現在のトラフィックの内訳は?
これには、Webサイトから取得した既存の解析データを深く掘り下げる必要がある。この時点では、以下のようないくつかの核心的な点に絞って理解を深めることに努める。
Webサイトのトラフィック量 ―― トラフィックが少ないと、テストの完了までにかかる時間に影響があるかもしれないため、これはテストに影響を及ぼす可能性がある。
Webサイトをよく訪問するビジターのユーザー属性 ―― Googleアナリティクスを利用している場合は、追加のトラッキング機能を有効にする必要があるかもしれない。
ユーザーが通常利用している技術 ―― さっきも述べたように、どんなブラウザが使われているかに目を向けることは重要だ。だがもう1つ、ユーザーがどんなデバイスを使う傾向にあるかもチェックしたい。モバイルデバイスを使っているユーザーが多ければ、Webサイトがモバイルデバイスでどのように見えるかを確認する必要がある。モバイルデバイスからの訪問がごくわずかの場合でも、モバイルからのトラフィックが近年増加していることを考慮すると、調査する価値があるだろう。
コンバージョンは現在、どこから来ているか?
すでにWebサイトで何らかの目標やEコマーストラッキングを有効にしていると、この部分がはるかに簡単になって好都合だ! 有効にしていない場合は、できる限り早く設定して、必要なデータを収集し始めよう。
この作業は必ずやらなければならない。なぜなら、コンバージョンを測定できなければ、CRO(Conversion Rate Optimization:コンバージョン率最適化)テストの結果を測定できないからだ!
まだ目標を設定していない場合は、Googleアナリティクスのアカウントと同期して古いデータに目標を適用できるPaditrackが使える。Paditrackを使うと、なんと、本稿執筆時点でGoogleアナリティクスが対応していないファネルの分類もできる。
必要なデータがすでにある場合は、コンバージョンしてくれたユーザーのタイプやアクセス元のパターンを見つけよう。後者については、なかなかうまくいかないこともある。ほとんどの場合、顧客はさまざまなチャネルを通じてアクセスしてくるからだ。そのため、マルチチャネルレポートを見て、どのチャネルが最もよく使われているか見極める必要がある。
利用できるバックエンドデータはあるか?
状況は変化しているが、デフォルトでオフラインまたはバックエンドデータを統合している解析プラットフォームは多くないため、自分で調べてみる必要があるかもしれない。
バックエンドデータとして多くの企業が持っているのは、たとえば「キャンセル率」や「返金率」に関するデータだ。通常、これはオフラインで発生するために標準の解析ビューには含まれないが、製品や顧客について豊富な情報を提供してくれる。顧客がサービスをキャンセルした原因や、返金を求めた理由を明らかにできるのだ。
③顧客のデータ
これはデータを収集するうえで最も興味深く、最も影響力のある領域かもしれない。ここでは、さまざまな方法で顧客から直接情報を収集する。
顧客が抱く最大の不満要因は?
僕にとって、これは最も洞察に満ちた質問の1つだ。というのも、僕たちがこのプロセスで関心のある核心的な問題、つまり何が顧客に購入を踏みとどまらせているのか、という点にまっすぐ切り込んでいるからだ。
僕がとても気に入っているのは、プロセスのこの段階で顧客に尋ねるべき質問を厳選して紹介しているConversion Rate Expertsのプレゼンテーションや、Avinashによる3つの質問だ。
方法はたくさんあるので、いくつか詳しく説明しよう。
グーグルの消費者調査サービス:Google Consumer Surveys
Distilledではこれらの調査を何回か利用したことがあるが、概ねとても的確な知見が得られた。結果はかなり大雑把なこともあって、正直に言うと、時にはまったく使い物にならない場合があることも確かだ! ただし、余計なデータを除外してトレンドを見極めれば、あなたが扱っているのと同じような製品を購入する際に人々が抱く懸念や関心事項について、それなりに有益な情報を入手できる。
Qualarooは利用価値が高くシンプルな調査ツールで、皆さんも多くのWebサイトで見たことがあるかもしれない。こんな風に表示される。
Qualarooで僕が気に入っているのは、ユーザー体験を邪魔しないところであり、よくできたカスタマイズ設定を使用して、好きな時点で表示させることができる。たとえば、次のような感じだ。
- 特定のページだけに表示させる
- ページでの滞在時間などユーザーの行動に基づいて表示させる
- ウィンドウが閉じられそうになった場合に表示する
ここで1つ、ちょっと効果的な小技を紹介しよう。注文確認ページにアンケートを設置して、「本日、当社から購入するのをやめるところだった、という方がいらっしゃれば、その理由は何ですか?」と尋ねてみよう。これは、リスクの低いフィードバックを与えてくれる。なぜなら、そのユーザーはすでにあなたから購入すると決めているからだ。
Qualarooがモバイルデバイスでも使えるようになったことも言っておかなければなるまい。これによって、モバイルユーザーを対象とした質問もちゃんとできるようになった。
その他の調査サービス
それなりに活発でメンバーの交流が盛んないいメーリングリストがある場合は、SurveyMonkeyのようなものを使ってメール調査を行える。メーリングリストに登録している人々は既存の顧客かもしれず、そうであれば、これまであなたから一度も購入したことのない人とは考え方が少し異なる可能性が高いため、この場合は少々注意が必要だ。
僕たちは、AYTMを使って調査したこともある。無料版でも、SurveyMonkeyよりオプションが少し多い。
これも僕たちDistilledがよく使うツールで、なかなか優れた結果が得られる。ユーザーからの情報がどれほど有益かという点では何度か外れたこともあったが、そういうことは、避けられないものでもある。
UserTesting.comでは、(年齢、性別、関心など)特定の特性に基づいてユーザーを募り、あなたが求めるタスクを依頼できる。これらのタスクは通常、あなたのWebサイトや競合相手に関するものが中心で、製品のリサーチや購入に関連するものを含めてもよい。ユーザーはタスクに取り組む過程でスクリーンキャストを記録し、話をしながら操作する。
これについてさらに詳しく知りたい場合、僕がとても気に入っているのは、Conversion Rate Expertsがこのサービスの使い方を重点的に説明しているこのウェブセミナーだ。
まだ「発見」「実験」「レビュー」の3段階で全5ステップあるうち、最初の「発見」の1つ目のステップしか解説できていないが、前編はここまでだ。最初に説明したように、この段階にこそ手間と労力をかける価値があるというのが、筆者の信条だからだ。残る4つのステップは、後編となる次回で紹介する。→後編を読む
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