EC売上を3年間で2倍以上にしたタワーレコードの成長を支えたCMS基盤
運用側から止まることなく出てくるアイデアを受け、さまざまな施策やキャンペーンを積極的かつスピーディーに実行できたんです。
施策に比例してお客様も増える中、Sitecoreを導入しなければ、ここまでの売上増に耐えうる基盤は出来なかったでしょう。
わずか3年の間にEC事業の売り上げを2倍以上にしたタワーレコード。その大幅な売上増の背景には、CMSを入れ替えるという大きな決断があった。大幅な売上アップを支えたシステムについて、タワーレコードの小峰氏に伺った。
独自開発のCMSがボトルネックで
サイトにアクセスしづらい日々が続く
- 自社サイトに独自開発のCMSを導入したタワーレコードだが、多数のアクセスをさばききれず、サイトの処理は遅くなる一方だった。CMSがボトルネックとなって、重要な情報の更新が遅れたり、新しい販促施策を思いついても、サイト負荷への懸念やコストなどの問題で試すことができなかったりという日々が続いていた。
タワーレコードといえば、言わずと知れた「NO MUSIC, NO LIFE.」のキャッチフレーズでおなじみの、音楽エンタメ・小売り事業の大手だ。黄色に赤文字の印象的なロゴは、誰でも一度は見たことがあるのではないだろうか。全国に86店舗(2014年6月1日現在)を持つ同社だが、250万点もの商品を取り扱うオンラインショップ「TOWER RECORDS ONLINE」も運営している。
同社は、ずいぶん以前から、自社のCMSに不満を持っていた。社内からあがっていたのは、「取扱商品点数に制限があって困る」、「自分たちの望む施策を打てる機能がない」といった不満の声である。こういった要望を満たすため、タワーレコードでは2008年に従来利用してきたパッケージ版のCMSからスクラッチ開発のCMSへの入れ替えを計画し、2010年1月に構築を終えた。しかし、これが失敗だった。「リリース当初からレスポンスの問題が顕著となっていき、サイトが重くてまともに見られない状況が続いていた」と、タワーレコード ITサービス本部 情報システム1部 部長の小峰隆由貴氏は苦々しく振り返る。
EC領域(SSL領域)とメディア領域(非SSL領域)で別々にCMSを構築していたのですが、メディア領域には当時1日当たり100万強のPVがあり、22時から1時の夜のピーク時に耐えられないという事態が続いていました(小峰氏)
ピーク時のアクセスに対応すべく、サーバ増強などの対応を行っても大きな改善が見られない中で、CPU使用率やロードアベレージに異常値が多いことから調査を続けたタワーレコードでは、CMSとDBアクセスがボトルネックとなっていることに気づく。そのため、何度もチューニングを重ね、キャッシュも2時間かけ、アクセス集中前には手動でキャッシュを事前生成、保守するSEは常時システムを監視し続けるという状態がしばらく続いた。
こうした運用形態のため、更新は2時間ごとという制限ができてしまい、サイトの即時性が失われてしまった。メディア領域ではインストアライブの告知などを行っているが、万が一、日時などの情報を間違って公開した場合など、すぐに気付き修正したとしても、実際にアップされるのは最大で2時間後。これではユーザーに大きな迷惑がかかってしまう。また、人気グループのCDやDVD発売などの情報解禁は当日にいきなり知らされることが多く、サイトにアクセスが殺到する。これらの対応も非常に大変だったという。さらに、EC領域への誘導やO2Oなどを行わなければならないメディア領域では、試行錯誤しながらさまざまな施策を行っていく必要があるが、サイトに機能を付加したり、デザインを変更するたびに負荷テストなどを行わなければならず、コストがかかるだけでなく、施策の実現までに時間がかかることも課題となっていた。さらには、サイト負荷懸念で実施出来ない施策も多く出てきていた。
「CMS開発の償却を待っている場合ではない
」と考えた小峰氏は、2010年夏にはCMSの入れ替えを検討し始めた。
スクラッチ開発のCMSよりも、
パッケージなら新たな技術を素早く取り入れられる
- 店舗情報管理
- 検索管理
- ユーザーレコメンド機能
- ユーザーマイリスト機能
- 外部連携
- ランキング機能
- アンケート機能
- サジェスト機能
- コミュニティ機能
- テキスト・バナー告知
- プレゼント機能
小峰氏は、4つのパッケージを入れ替え候補として挙げ、それに「使用している独自CMSの改修」を加えた5つの案を比較検討したのだという。
自分達が必要な機能だけを作り込んできたスクラッチ開発のCMSを、導入後間もないのにパッケージに変更するという決断は勇気がいりましたが、当時はとにかく負荷懸念なしにサイトを運用することが先決でした。また、スタンダードなパッケージを導入し、運用をパッケージに合わせることで、新たな技術などをスクラッチよりも素早く取り入れることができると考えました(小峰氏)
検討時には、当時利用していた機能を要件として、600項目を超えるフィット&ギャップ分析を行い、「ランディングページ最適化(LPO)」、「クラウド対応」、「A/Bテスト」、「マーケティング機能」などの先進要素にどれだけ対応できるかに加え、「コスト」、「スケジュール」など多方面の要素から比較していった。また、1日当たり360万PVまで耐えられる仕様ということも要件に入れられた。
そして選ばれたのが、サイトコア社が提供するデジタルマーケティング機能が統合されたCMS 「Sitecore Experience Platform(旧製品名:Sitecore Customer Engagement Platform)」なのである。
他社を大きく引き離した高評価で選ばれた「Sitecore」
先進機能とコストで大きくリード
Sitecoreが選ばれた理由はひとつではない。前述した先進機能にすべて対応していただけでなく、将来性やEC側との親和性も含めた比較検討の結果、総合評価が群を抜いて高かったのだ。また、ハードウェアや構築も含めたイニシャルコストが他製品の半分以下であったこともSitecoreを採用した大きな理由の1つだと言えよう。
また、メディア領域のCMSは内部検索エンジンやレコメンドエンジンなど多数のシステムと連動させなければならないし、EC領域との連携も欠かすことができないが、Sitecore Experience Platformはこれらの連携や拡張にもしっかり対応している。その他、Sitecore Experience PlatformがEC領域で使われているCMSと同じ.NET Frameworkを使っており、基盤を統一できて開発しやすいという判断もあったという。
将来的には、CMSのアクセス解析・分析機能を利用し、難しい分析知識を持たずともオンライン商材を作るMDチームやマーケティングチームにて施策やマーケティングをスムーズに行えるようにしたいという期待から、Sitecore Experience Platformの持つ分析機能の高さも評価の対象となった。
Sitecore導入で安定稼働、利便性も向上
マルチデバイスにも対応
2011年8月、タワーレコードはSitecore Experience Platformでのサイト構築を完了した。同サイトでは現在、250万点を越える膨大な点数の商品を取り扱っているが、チューニング終了後、サイトは快適に動作している。2010年当時に1日当たり100万強だったPVは、2014年4月時点で205万強まで倍増しているが、十分なパフォーマンスが出ているという。5分ごとのクロールで、情報をほぼリアルタイムに更新できるようになったことも大きなメリットだ。
現在、サイトへアクセスするデバイスの割合はおおよそPCが50%、スマートフォンが25%、フィーチャーフォンが25%となっており、それぞれのデバイスに対応したページをCMSが自動生成している。スマートフォンに関しては、現在はコンバータを使って変換しているが、今後はしっかりとテンプレートを作成して対応していく計画だという。
また、インストアイベントや店舗ごとのキャンペーンなどの情報を更新するために、店舗の販売スタッフもCMSを利用する。そのため、不慣れなスタッフが関係のないページやテンプレートを誤って変更してしまわないよう、権限を細かく設定した。店舗スタッフが利用する機能だけに絞り込んでコンテンツエディタの画面を表示できるため、販売スタッフが迷ったり、誤った操作を行ったりするリスクを抑えられる。
運用上の利便性も格段に向上した。例えば、従来のCMSは、素材管理機能が乏しく、運用側も記事を書くたびに同じ画像をアップするような状況があったが、メディアライブラリによって素材を一元管理できるようになった。また、バージョン管理機能も好評だ。以前は、公開したコンテンツを修正する場合、記事を一度非公開状態にし、下書きから作り直す必要があったが、バージョン管理機能によって、修正した新バージョンを旧バージョンと差し替える方法ですぐに修正が行えるようになった。
自由かつ積極的に施策やキャンペーンを行うことで、さらなる成長を
前述したような細かい利便性の向上はもちろんだが、もっとも大きな効果は、Sitecore Experience Platformの導入によってサイトが安定稼動することで、例えば、マルチバイ(2枚買ったら10%引きなど)、ポイント5倍・10倍キャンペーン、クーポンの配布など、現場が計画したさまざまな施策に対して、速やかに着手、実装、実施できるようになり、オンライン事業の成長を大きく支えたことだろう。タワーレコードは導入後、負荷テストなどの手間をかけず、積極的に施策やキャンペーンを展開し、2012年には大幅なUIの改善を行うなどして集客を増やし続けた。これにより、2010年度から2013年度までの3年間で、同社のEC売り上げは倍以上にまで増加した。その負荷にサイトが耐えられたことで、売上増加に貢献できたと言ってもよい。
今後は、Sitecore Experience Platformのデジタルマーケティング機能を活用して、マーケティングや分析にさらに力を入れていきたいですね。バナーのA/Bテストなども行って、よりお客様を誘導できるようにするほか、パーソナライゼーション機能などの機能も活用していきます(小峰氏)
タワーレコードは、Sitecore Experience Platformの持つ豊富なマーケティング機能や分析機能を活用することで、今後もさまざまなサービスやキャンペーンを展開し、音楽をユーザーの手元に届けることで、「NO MUSIC, NO LIFE.」を体現していくことだろう。
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