コンテンツの将来:2014年の4つのトレンド(前編) ――FCBグリッド分析とKPI(B2B/B2Cそれぞれ)
この記事では、「コンテンツマーケターを待ち受けるトレンド」と「コンテンツマーケターが組織で果たす役割」を、役に立つ資料を参照しながら細かく見ていく。これからのトレンドを具体的に理解することは、組織におけるコンテンツの目標を明確にしてリソースの配分を決めるための基礎を構築する上での要となる。
今、デジタルマーケティングに取り組む絶好の機会がやってきていると言える。世界の全人口のほぼ半分がインターネットにアクセスし、消費者がコンテンツに向き合う形が急速に進化している今、刺激的な課題とチャンスが次々と到来しているのだ。
トレンド1:消費者の注目を集める競争が激化
独自のコンテンツで定期的にサイトを更新するだけでは不十分だ。インターネットには毎日約9万2000本の新しい記事が投稿されている。デジタルメディアのパブリッシャーは、大量のコンテンツを低価格で制作できるシステムを開発した。たとえば、Huffington Postは1日に最低でも1200本のコンテンツを作る。Forbesは(1000人の寄稿者を擁して)400本だ。そして、コンテンツを作るのはパブリッシャーだけではない。WordPress利用者は毎月、約3580万本の投稿を生み出している。
規模がそれほど大きくない企業は、量ではとうてい勝負にならない。ではどうすれば、この市場でウェブサイトを差別化できるのか。
ここで効果的なのがコンテンツ戦略の策定だ。企業独自のバリュープロポジション(価値提案)を理解することがきわめて有用だが、独自のバリュープロポジションがない場合、それを作り出すためには、チャンスが市場のどこにあるのかを理解することが役に立つ。
BtoC企業ならば、現在ターゲットとなっているオーディエンスを見極め、特定のライフスタイルを提唱するものとしてブランドを売り込むというやり方があるだろう。
BtoB企業ならば、特定の業界やニッチにおける最高の権威や情報源として自社のブランドを位置づけていく場合が多い。
コンテンツ戦略を策定する際には、その企業が販売している製品を評価することが大切だ。製品の評価とは、「製品の特徴を明らかにする」とか「単に長所を理解する」といったことではない。求められるのは製品の市場性を理解することだ。
たとえば、低関与・高関与の「関与度」と、指向型・感情型の「製品タイプ」の2軸で考える「FCBグリッド」(リチャード・ヴォーン氏が開発したものだ)の利用が有効だ。
その製品は、「思考型」の製品なのか「感情型」の製品なのか。消費者にとって関与度は高い製品なのか低い製品なのか。
- 製品タイプ
「思考型」の製品とは、消費者が購入前に十分に考慮する製品だ。このタイプの製品では通常、消費者は購入前にいろいろと調査してさまざまな取り組みを行う。
「感情型」の製品とは、購入のプロセスで感情がきわめて重要な役割を果たす製品だ。
- 関与度
「高関与度」の製品は、消費者が購入の決断にじっくりと取り組む製品だ。そのような製品は総じて高価な傾向にあるが、必ずしも金銭的な面だけの問題ではない。いったん購入すると変更に多くの時間がかかるものや、長期的に見た場合の影響が無視できない大きさとなるものもある。たとえば、個人退職基金口座(IRA)の開設は「関与度が高い」買い物だ。壁紙の購入も「関与度が高い」買い物にあたる。
「低関与度」の製品は、より衝動的に、とっさに購入される傾向がある。消費者は、欲しいと思ったらさほど調査に時間をかけない。判断が間違っていたとしても、たいしたリスクがないからだ。通常、低価格の製品が多い。
その企業が販売しているのが「高関与度」で「思考型」の製品なら、消費者は、レビューを読んだり観たり、特徴を見極めたり、費用に見合うかを考えたり、より多くの時間を使って製品を検討するだろう。そのため、このような製品に向けたコンテンツ戦略では、消費者が製品を見つけやすく探しやすいように、製品の特徴や利点に関する情報を多く盛り込んだり、製品とブランドの認知度を高めたりしなければならない。
販売する製品が「低関与度」で「感情型」の製品である場合は、消費者とつながって感情にアピールすることに多くの時間をかけるべきだ。またこうした製品は、繰り返し購入の傾向があるため、ブランド・ロイヤルティを構築し顧客を逃さない対策にも重点的に取り組む必要がある。
英国の広告代理店Bartle Bogle Hegarty社(BBH)でコミュニケーション・プランニングのトップを務めるジュリアン・コール氏が、「ビジネスの諸問題を解決する」と題したスライドでこのプロセスを詳細に分析しているので、参考になるだろう。
トレンド2:コンテンツの成功を測定する主要指標の決定がより重要に
これまでは、トラフィックとページビューが各コンテンツの成功を評価するための指標とされてきた。トラフィックの増加には明確なバリュープロポジション(ブランド認知の増加、パブリッシャーとブロガーの現在および将来の収益増加など)があるが、これらの指標だけに頼っていると判断を誤る危険性がある。
さらに問題なのは、成功の指標としてトラフィックとページビューにばかり取り組むと、意図しない行動や見当違いのやる気につながる恐れがある。たとえば、次のようなことだ。
- クリックされやすい見出しを重視しすぎる
- title要素にキーワードを使いすぎる
場合によっては、ユーザーのためのコンテンツ作り(長期的な開発)からページビューのためのコンテンツ作り(短期的な勝利)へと重点が移ってしまうこともある。
結局のところ、組織にとって適切な指標の決定は、コンテンツの目標次第だ。目指すのは、次のどれだろうか。
- 積極的に関与してくれるコミュニティの維持やブランド支持者の育成
- ブランド認知の構築
- ユーザーをお金を出してくれる顧客に変えること
あるいは、この3つすべてなのかもしれない。どれも答えるのが難しい問題だ。
Distilledでは現在、クライアントに協力してコンテンツ指標の明確化に力を入れている。ときには、分析して対象を絞りたい複数の指標を組み合わせて使うのが最良の選択肢となることもある。
クライアントによっては、主要指標が、次の4つを組み合わせたものになるかもしれない。
- オーガニックトラフィック
- リピート訪問の割合
- 直帰率
- サイト滞在時間の変化
たとえば、探していたそのものズバリが見つかったうえでの直帰なら、必ずしも悪いことではない。おそらく、理想的なランディングページにたどり着き、まさに探していた情報を見つけたのだ。それはすばらしいユーザー体験だし、ましてやその利用者がサイトに長く滞在し、リピート訪問者となったら、なおすばらしい。
どんな指標も、それだけをみているとたくさんの間違った仮定をしかねない。完璧な解決策というものは存在しなくても、いくつかの指標を組み合わせることで次善の策を得られるのだ。
また、ソーシャル関連の指標がコンテンツによるコンバージョンを測るすばらしい指標になる企業もあるだろう。
Facebookの「いいね!」とTwitterのリツイートは何らかの関心の存在を示すものであり、シェアやコメント、それからFacebookページの「ファン」になることは、潜在的なブランド支持者を示唆する。
シェアやFacebookページの新しい「ファン」の獲得の方が意味が大きいかもしれないが、ともかく、こういった行動はどれも、コンテンツがユーザーの注目を獲得できることを証明するものであり、認知を得ることにははなかなかの価値がある。
コンテント・マーケティング・インスティテュートが、BtoB企業とBtoC企業向けにコンテンツの効果測定に役立つ主要指標のすばらしいリストを作っているので紹介しておこう。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編では、今回に引き続き残る2つのトレンドを紹介する。→後編を読む
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