Facebookのガイドライン以前に守らなければいけない3つの法律/Facebookマーケティングの教科書#2-2後編
この記事は、書籍 『現場のプロがやさしく書いた Facebookマーケティングの教科書』 の内容の一部を、Web担向けに特別にオンラインで公開しているものです。
ガイドライン以前に守らなければいけない3つの法律
企業やブランドがFacebookを使ったキャンペーンを行う際には、Facebookが定めるプロモーション・ガイドラインを守らなければならないことは、お分かりいただけたと思いますが、このプロモーションガイドラインの冒頭で、
Facebookを使ってプロモーションの告知および運営を行う場合、公式ルールや提供条件や資格(年齢や居住地などの条件)、プロモーションに関連して提供される賞品や賞金に適用される規定の遵守(登録や法で求められる承認の取得など)など、プロモーションの合法的な運営に責任を負います。本ガイドラインへの準拠がプロモーションの合法性を意味するわけではありませんので、ご注意ください。プロモーションには各種法規が適用されます。運営するプロモーションが当該法規を遵守しているかどうか確かでない場合は、専門家にご相談ください。
と記載があるように、法令及び社会規範や倫理を順守すること、すなわちコンプライアンスの順守を求めている点にも注意すべきです。企業がFacebookでプロモーションを行う際に、具体的に抵触する可能性がある法律とはどのようなものなのでしょうか? Facebookキャンペーンに特に関係深く、必ず確認しておくべき法律は次の3つです。
個人情報保護法 ※
※個人情報保護に関する詳細については、消費者庁の「個人情報の保護」を参照ください。
個人情報保護法とは、正式名称を「個人情報の保護に関する法律」といい、個人の権利と利益を保護するために、個人情報を取扱う事業者に対して個人情報の取り扱い方法を定めた法律で、2005年4月1日に全面施行されました。
個人情報とは、生存する個人に関し、氏名、住所、電話番号などを含む特定の個人を識別可能な情報、並びに特定の個人と結びついて使用されるメールアドレス、パスワード、クレジットカードなどの情報及びそれらと一体となった購入取引に関する情報、趣味、家族構成、年齢その他の個人に関する属性情報を指します。
現在、および過去6か月以内に5,000人分を超える個人情報を扱っている場合は、個人情報取扱事業者であると見なされ、どのような個人情報を何のために利用するか(プライバシーポリシー)を公表しておく必要があります。(営利事業だけでなく、非営利法人や個人でも個人情報を継続的に扱う場合は個人情報取扱事業者となります。)また、取得した個人情報の「保護」と「活用」に関して、「安全管理」を行う義務が発生します。
Facebookキャンペーンの実施内容を考えると、参加時のアプリ承認時にFacebookアカウントから取得するデータ(名前・年齢・生年月日・居住地など)の他、
- プレゼント・賞品配送のために登録してもらう住所情報
- 当選通知のために登録してもらう連絡先情報
- 参加条件として課したアンケートなどの回答情報
- Facebookユーザーが投稿した日記、写真、動画
などが個人情報に該当すると考えられます。自社の業務で既に個人情報取扱事業者に該当する場合は、対策を講じられているかと思いますが、通常の業務では個人情報取扱事業者に該当しない小規模の事業者でも、Facebookのキャンペーンやアプリの活用で、5,000人以上の個人情報を入手する可能性がある場合には、事前の準備が必要となりますので注意してください。
知的財産基本法 ※
※知的財産権についてはこちらのページが分かりやすくまとまっています。
知的財産権とは、人間の知的創造活動によって生み出される、表現、アイディア、技術など実体のないものを保護するために、その考案者に与えられる権利のことで「無体財産権」 とも呼ばれます。芸術活動により生み出されるものを保護する著作権、産業に関わる権利である産業財産権(工業所有権)、その他の権利に分けられます。それらの権利を守る個別の保護法が多数存在します。
- 著作物を保護する著作者の権利
- 音楽の演奏など、著作物の実演を行う者を保護する著作隣接権
- 発明を保護する特許権
- アイディアなど考案を保護する実用新案権
- 物品の外見的なデザインを保護する意匠権
- 営業上の商標(業務上の信用力)を保護する商標権
- IC(集積回路)の設計など半導体の回路配置を保護する回路配置権
- 新たに品種改良された植物を保護する育成者権
- 企業の営業上のノウハウ、企業秘密などを保護する営業秘密権
- インターネットのドメイン名を保護する権利
- 肖像が持ちうる、人格権にかかわる権利
- 肖像が持ちうる、財産権にかかわる権利
- 商人が名称を商号として利用する表示
適用範囲が広く関連法も多いため、厳密な遵守は難しいですが、Facebookキャンペーンに関して、最低限以下のポイントはチェックしておきましょう。
設定している賞品が自社の製品でない場合、使用に関して問題がないか?
購入した商品の使用方法を規制した法律はありませんが、「著名な人が持つ知名度による経済的利益、価値を排他的に支配する権利」は、「パブリシティ権」として保護されていますので、製品やブランドに関しても慎重であるべきです。また、プレゼント紹介で使う写真や商標は著作権や商標権を有する場合があり、勝手に使うことはできません。例えば、Apple社ではブランド保護の観点から他社のプレゼントキャンペーンでの利用を制限していますし、Amazonもまた、Amazonギフト券のロゴ、商標の利用には「法人プログラム」の導入を必要としています。
ブランド認知の高い商品をプレゼントキャンペーンの賞品にする場合は、事前に確認を取った方が賢明です。
ユーザーの投稿コンテンツに問題は無いか?
日本においては著作物は創作した段階で著作権が発生し、申請や登録を必ずしも必要としないため、実際の著作権権利者が誰であるかを特定することが難しい場合があります。また、著作権が発生する可能性のあるコンテンツの範囲はかなり広く、しかもそれらに実際に著作権が認められるかどうかを判断するのも極めて難しい問題です。例えば、人物や何気ない風景を撮影したスナップ写真であっても、著作権侵害にあたるとした判例もあります。ユーザーからの投稿に関しては、基本的に事前の許諾を取るようにしたほうがよいでしょう。
また、容貌がはっきり写っていて特定の個人がわかる写真画像は、肖像権侵害になる可能性が高いため、被写体となった人の許諾が必要となります(撮影された写真の一部にたまたま特定の個人が写り込んだ場合や、不特定多数の者の姿を全体的に撮影した場合は除く)。同様に他社製品が映り込んでいる画像も場合によっては、著作権や商標権の侵害となることもありますので注意が必要です。
景品表示法
ソーシャルゲームの「コンプガチャ」問題で注目された景品表示法(景表法)ですが、そもそもは「過大な景品類の提供及び不当な表示について規制した法律」であり、企業のプロモーションやキャンペーンにおいても非常に注意すべき法律です。
(1)景品類の提供に関する規制※
※景品規制に関する詳細は、消費者庁の表示対策に記載された「景品規制の概要」を参照ください。
商品・サービスの利用者や来店者を対象として金品などを提供する場合は、「取引に付随して提供するもの」とみなされ景品表示法に基づく景品規制が適用されます。新聞・テレビ・雑誌・ウェブサイトなどで企画内容を広く告知し、商品・サービスの購入や来店を条件とせずに申し込むことができ、抽選で金品などが提供される企画は「オープン懸賞」といい、景品規制は適用されません。
消費者庁の見解としては、商品の購入や来店を条件とせず、Facebookページでの「いいね!」のみで参加できるプレゼントキャンペーンは、ほとんどがこの「オープン懸賞」に該当するとのことです。ただし、次のような場合は注意が必要です。
自社の製品および割引券以外の賞品が全員に提供されるもの、および商品・サービスの購入申し込み順又は来店の先着順により金品が提供されるもの ⇒「総付景品(そうづけけいひん)」「ベタ付け景品」に該当するため、景品類の最高額が規制されます。
例えば、Facebookキャンペーンの当選者に賞品の引換券を提供し、来店での受取を必須にした場合、引換券をもって来店した人は全員が賞品を受け取れるため、「総付景品」の規制が適用されると思われます。また、引き換え店舗が特定のチェーン店であった場合は、一般懸賞と判断される可能性が高く、景品規制の適用を受けることになります。
業界によっては、慣例や校正な競争環境維持のため、一般の景品規制とは異なる規制が設けられている場合がありますので、自社の属する業界団体の自主規制ルールも確認が必要です。
(2)不当表示に関する規制※
※不当表示の規制に関する詳細は、消費者庁の表示対策に記載された「表示規制の概要」を参照ください。
一般消費者に実際のもの又は競争業者が提供するものよりも、著しく優良または有利であると誤認されるような表示は規制されています。キャンペーン賞品の紹介だけでなく、キャンペーン内容において商品紹介をする場合も注意が必要です。
商品・サービスの品質、規格その他の内容について、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為が優良誤認表示に該当します。 また、客観的なデータによって実証することができない場合は、「ナンバーワン」や「世界一」、「最高級」といった、最上級表現は使えません。
商品・サービスの取引において、価格その他の取引条件が、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為が有利誤認表示に該当します。例えば、「今なら半額!」と表示しているのに、元々の価格が販売実績のない価格だったり、送料や手数料を含めると実質的にはそれほどの割引率にならない場合も問題になります。
用語や解釈が難しく、敬遠してしまいがちな「法律」対応ですが、もしも抵触すれば事業規模や知名度に関わらず、Facebook上でのプロモーションだけに留まらない大きなリスクとなります。ここで紹介したものだけでなく、ぜひ「法律に触れるところはないか?」という危機感を持って、企画内容を確認してください。
この記事は、書籍 『現場のプロがやさしく書いた Facebookマーケティングの教科書』 の内容の一部を、Web担向けに特別にオンラインで公開しているものです。
本書は、アライドアーキテクツで約2年間に渡りブログメディア「ソーシャルメディアマーケティングラボ」を運営しながら、実際にFacebookマーケティングに携わってきた担当者2名が、これまでに培った経験や知見を最大限に活かし「企業のFacebookページ運営担当者」に向けて執筆した、Facebookマーケティング指南書の決定版です。
ターゲットを法人利用に絞り、Facebook広告の効果的な運用やFacebookキャンペーンの実施といった実用的な情報に加え、「どんな投稿がファンの心を引きつけるのか」といったテクニックや国内企業約35社のFacebook活用事例など、実際の業務で役立つ豊富なノウハウや情報を惜しげなく公開しています。
本書は、マーケティングやデジタル、WEBは専門だがソーシャルメディアはよくわからないという方、全く違う領域からいきなりFacebookページの担当になられた方、そして「Facebookって何?」という方でも、読み進めながら実践していただける内容を目指しました。
企業のFacebook活用の本質的な意義から、実務面の手順を追った解説、実例紹介まで、即戦力として役立つことを願っています。
ナビゲーターは新人マーケター「あゆみ」ちゃんと、マーケティング部の先輩である「小田先輩」。
図解やイラストを多用し、親しみやすい文章と誌面で、Facebookやマーケティングに詳しくない人でも、ある程度知っていて「一歩先の」知識を手に入れたい人にも、役立つ内容となっています。
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