中小企業にホームページが必要なたった1つの理由
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の弐百四十四
そろそろ……がはじめどき
師走に突入し、急がしさが加速し始めた昼下がり、事務所の電話が鳴ります。電話の主は近所の会社の社長です。30分にも及んだ緊急コンサルティングのテーマは「ホームページ」について。実はこの社長からは6年ほど前に同じテーマで相談を受けていました。相手先に何度も足を運び、さまざまな提案をするも、興味をなくしたのか話は自然消滅しました。こうした「過去」を忘れられるのは経営者にとって必要な能力の1つかもしれません。
社長はいいます。「そろそろホームページを用意しようかと」。いまさらと思うでしょうか。しかし、グーグルの調査によれば中小企業のホームページ開設割合は24%に過ぎません。さらに活用している企業に絞り込めば激減することでしょう。
そこで今回は「いまさら」ですが、中小企業における「ホームページが必要な理由」について語ります。Web担が上司を口説くための材料や、Web屋のセールストークに使えること請け合いです。
相手は必ず見る
ホームページが必要な最大の理由は、
相手は必ず見る
ということ。相手とは取引先やお客さんです。特にBtoB(企業間取引)なら絶対です。取引を検討している企業名でかならず検索します。このとき自社のホームページがなければ、スタートダッシュでつまずくということです。また、市場にはライバルも存在します。彼らがホームページを持っていれば、戦わずして負ける可能性すらでてきます。つまり、商品やサービスの質、企業の能力とはまったく関係がない、「ホームページの有無」で勝負が決まるということです。
ホームページの「必然性」を「ブラック・テキスト芸」で換言し、社長に説明しました。
ホームページとは名刺です
ジャパニーズビジネスマンなら、ほぼ100%「名刺」をもっています。ホームページとはインターネット上の「名刺」。だから「いる、いらない」という議論そのものがナンセンス。ちなみに社長はインターネットをできないと胸を張りますが、新しい取引の前には息子さんにお願いして相手企業を「検索」するといいます。
更新は不要
20世紀の営業マンは「名刺」からある程度の情報を得たものです。本社所在地、支所の数、相手の肩書きに、カラーや箔押しなどの印刷品質も重要な情報です。小さな会社ほど立派な名刺を作っていたのは、これを逆手にとったもので、いまはこの役割をホームページが担うようになりました。それはリアル社会においては、逆立ちしても勝てない大企業と中小企業が同じ土俵に立てるようになったことを意味します。ホームページを工夫することで、大企業を演出することは造作のないことです。
安定期の中小企業ならホームページに更新は不要です。ブログもツイッターもFacebookもいりません。安定期の中小企業の場合、業務内容が変わることはほとんどないからです。それは「名刺」のデザインを変えることがないようなものです。ましてや「更新しなければ」という強迫観念からホームページ開設し、二の足を踏んでいるとしたら本末転倒。ホームページは更新することが目的ではありません。もちろん「成長期」を目指すなら別の話ですが、まずはホームページを開設してからです。
斜陽産業こそ
iモードの登場から携帯コンテンツに群がり、ブログのブームから雨後の竹の子がにょきにょきと生え、いまはソーシャルメディアとスマホアプリと「新しい」を追いかけるWeb業界の無節操さの対極にあるとも言えるのが、中小企業のホームページです。ブームと対極にある「斜陽産業」のプレイヤーは中小企業が大半で、これらの業界はホームページの開設によって成功する確率が高いのです。
たとえば、安い中国製品に押され、廃業も考えていたという刺繍会社は、ホームページを見た客からの受注が伸び工場を新設しました。またマイカー離れから、受注量が減っていた自動車関連器具製造業者は、ホームページで全国からの注文が相次ぎ、売上減をカバーすることができています。
いわゆる斜陽産業では市区町村といった「足を運べる客の需要」だけでは生計を立てることが厳しくなっています。しかし、ホームページを使って商圏を拡げることで収益増を期待できるのです。これは「ニッチ」といわれる業界ほど顕著です。
ブルーオーシャンを見つける
経験則ですが、市区レベルで同業が10社を割り込む業界(少ないほど良い)は成功確率が高いといえるでしょう。こういった業界では先細る受注を前にしても、旧来の取引先に依存していることが多く、その「保守的」な業界ではホームページが活用されていないことが多いからです。つまり、インターネット上はライバルのいない「ブルーオーシャン」である可能性が高いということです。
ここでもう一度、冒頭の社長に登場いただきます。
日本橋の●●という会社が電話をかけてきて無料でホームページを作ってくれるといっている
なら、そこに頼めばという本音は飲み込み、こう回答します。
タダより高いものはないですよ
タダには必ず理由がある
見かけ上の無料をちらつかす業者のビジネスモデルは、無料にしても見合うだけの集金方法をもっているからです。日本橋の会社は無料でホームページを作る代わりに、新しい会社を立ち上げるので、そちらに資本参加してほしいとのこと。一般論として、見ず知らずの会社に電話をかけてきて出資を募る会社がまともなサービスを提供することはないでしょう。また、別の売り込みではホームページはタダで作成するが、月々のサーバーレンタル料を払えといわれたそうです。
無料について、社長にこう指摘します。
名刺はタダで作れません
自作するのなら無料も不可能ではありませんが、業者に頼む以上はいくばくかの費用が発生するのは当たり前の話だと告げると納得されました。
大切なことなので繰り返します。ホームページはインターネット上の名刺です。つまり、商売をするならもっているのが当たり前、という時代になっています。かなり前からですが。
今回のポイント
中小企業にホームページは絶対に必要
斜陽産業ほど旨味がある
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