スマホで復権ジャパニーズチラシの実力。「Shufoo!」と「チラシ部」を勝手に検証
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
※「Shufoo!」の料金説明に誤りがありましたので修正いたしました(19:25)。
心得其の弐百四十壱
いまさらチラシ
七色それぞれの衣装に身を包んだ7人の女の子が「ち~ら~し♪ぶーぶーぶー」と踊り歌うテレビCMがヘビーローテーションで放送されたのは今年の秋の始まりでした。韓国人女性アイドルグループ「RaNia(ラニア)」による、リクルートが始めた電子チラシ配信サービス「チラシ部」のCMです。電子チラシ配信サービスとは、指定した地域のチラシをネットで閲覧できるものです。
いまさらチラシ? 見ないよ。古いふるい
と思われるかもしれませんが、同様のサービス「Shufoo!」もあり、こちらは凸版印刷によって運営され、今年で10周年を迎えました。つまり、チラシはいまだ健在です。住宅街の宅配新聞では、土曜日や祝日になると新聞本紙より分厚くなる枚数のチラシが届けられています。そしてチラシ市場にスマホが加わり、新たなチャネルとなる可能性が生まれました。
商売はインターネットだけでは完結しません。検索連動型広告よりもリアルのチラシの方が効果的な場合もあります。というわけで今回は「チラシ」が拓く可能性と「Shufoo!」と「チラシ部」について。
ジャパニーズオリジナルメディア
「チラシ」とは、日本独自の広告メディアです。紙切れ一枚に情報をまとめる「チラシ」は世界中にありますが、宅配されるところが日本オリジナルです。それを支えるのが新聞戸別宅配制度で、明治の後期にはすでに確立していたといわれています。早くから戸別宅配制度が普及したのは2つの理由からです。人口が密集していたことで宅配コストが低かったことと、日本人の「識字率」の高さが理由です。当時から文章(もちろんチラシも)を理解できる国民の割合が日本はとても高かったのです。
以来、100年を超える歴史を持ち、生活に溶け込んでいる広告媒体がチラシ。さらにスマホの登場によって訪れる「ローカルの時代」にチラシ復権……については後ほど。
PV課金の「Shufoo!」
まずは先輩格の「Shufoo!」の料金から見ていきましょう。月額基本料金は1,000円で、チラシ閲覧101回目から10円が課金されるのでチラシ1PVあたり10円のPV従量制ということです。ただし、101回目以降の課金が2ヶ月後の月額料金に反映されるとあるため、1ヶ月目が101PVなら、3ヶ月目は合計1,010円が月額料金となります。店舗当たりの上限月額はチラシの種類を問わずに20万円となっているので、閲覧者がこれを越えればPV単価は下がります。
これは経験則からのつぶやきに過ぎませんが、新聞折込業界には「いろんな料金」が存在します。「Shufoo!」に出稿する際の窓口は有力な新聞折込広告取次会社です。サービスを利用する際には、提示された料金「以外」の価格がないかと尋ねてみてもよいでしょう。
ピンポイントで狙える「チラシ部」
一方の「チラシ部」は、登録会員へのメルマガの発行数で課金されます。店舗からの距離などで集計する仕組みで、ある店舗で見積もりを取った場合の単価は8円強でした。地域や配信数で単価は変動するようで、さらに小さいエリアでの見積もり単価は10円でした。「チラシ部」の利点は「○○町」と、新聞折込よりも精密な配信エリアを指定できることです。ちなみに新聞折込で「○○町重点配布」という指定はできない地域も多く、できたとしても「お願い」程度で実現精度は高くありません。単純な比較では1閲覧あたり20円のShufoo!よりチラシ部が安価ですが、こちらはメルマガの永遠の課題でもある「精読率」と「開封率」が低ければ、実質単価は上昇します。
キャッシュフローでみると、「Shufoo!」が2ヶ月後からの支払いで、「チラシ部」も締め後、翌月払いから翌々月指定日払いとのことですからほぼ同じです。これらを踏まえて一般論として結論づけると、2万PVを越えれば定額となる「Shufoo!」は大規模店、ご近所などをピンポイントで狙える「チラシ部」は小規模店向けとなります。
地域広告チャネルが開いた
これはWeb担当社Forumの執筆者としてはタブーかもしれませんが、「ご近所」というローカルにおいては、ソーシャルメディアよりチラシのほうが強いでしょう。ソーシャルメディアは、日本全国津々浦々の地域で活用されるまでには至っていないからです。渋谷や六本木など、IT企業が集中している地域で求められる情報は、HTML5の最新情報や津田大介氏のツイートかもしれませんが、足立区舎人の住民にとっては近所の「スーパーベルクス」の特売情報のほうが重要です。
特にSEOが不発で自社メルマガの読者数が少なく、なにより、
Twitterでつぶやいているけど客が来ない
店舗なら積極的にチラシの導入を検討してください。集客はそれぞれのサービスがしてくれ、どちらも「近所」に情報を届けてくれますし、「リアルチラシ=新聞折込チラシ」よりは小規模で少額から実験できますので。地域限定広告とみれば検索連動型広告より広告効果を期待できるかもしれません。
スマホでチェックするGoogleの野望
そしてスマホが登場しました。通信機能付き小型パソコンともいえるスマホにとっては、電子チラシをスクリーンに表示することなど造作のないことです。するとホームページ、携帯・スマホ版に続いて、「チラシ」が商売用ホームページの第4のインターフェイスになる可能性もなきにしもあらず。また、かねてよりGoogleは積極的に地域情報を収集しており、来年あたり「Googleローカルアド(筆者命名)」として、Google Mapsと連動したチラシ閲覧サービスを開始などした日には……と、これは妄想。
ついでに妄想をもう1つ。
共働きのキャリアウーマン、朝子が帰りの地下鉄に乗る前の習慣は、自宅近くのマーケットのチラシをスマホでダウンロードすること。地下鉄の車内は今夜の献立を考えるキッチンスタジアム。最寄り駅に近づいたとき、朝子は焦りを覚えた。チラシには午後7時からのタイムセールとあり、愛するダーリンの好きな納豆の特売があったのだ。いまは5分前。駅からダッシュすれば間に合う。自動改札は競馬のゲートにかわり、いまファンファーレが鳴り響く。
テキスト重視のメルマガや、HTMLメールとは違う「チラシ」ならではのレイアウトや視認性というよりも、帰宅前にチラシをチェックするという「習慣」がスマホによって、いつでもどこでもといったように活性化され、活用が進むのではないかと。
それでは「チラシ」をどう作るか。これについては、以前「チラシのレイアウト」で紹介しましたが、次回はチラシを作る上ですぐに役立つ実戦技を紹介します。
今回のポイント
チャネルとしてのチラシは侮れない
小規模店なら電子チラシ配信サービスは要検討
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