Adobe Scene7徹底解剖

Scene7の全体像を知る ――リッチコンテンツの管理と配信

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Scene7の全体像を知る ――リッチコンテンツの管理と配信

Scene7の管制塔「SPS(Scene7パブリッシングシステム)」

これまで説明したように、Scene7には非常に多くのリッチコンテンツ配信機能がある。しかし、それぞれがまったく別のシステムとして存在するわけではなく、「Scene7」という1つのプラットフォームで動作している機能たちだ。

そして、そうした機能の元締め・管制塔となるのが、Scene7の心臓部分である「SPS(Scene7パブリッシングシステム)」だ。SPSは、次のような役割を担っている。

  • マスターとなるデジタル素材のScene7クラウドサービスへのアップロードを行う(アップロードはSPS デスクトップアプリケーションからでもFTPでも可能)

  • デジタル素材をフォルダで分類したり、画像にAdobe XMPなどのメタデータを付けたりして管理する

  • 各種機能を利用した表示のプレビューを行う

  • サイト上で各種機能を利用した表示をするためのURLを発行する

  • 各種リッチコンテンツの公開スケジュールを設定して管理する

  • コンテンツ配信ネットワーク(CDN)を管理する

  • Adobe Creative Suite 5やAdobe Online Marketing Suiteとの連携を行う

デジタルアセットの管理画面
各素材にメタデータを追加できる

素材データの再利用や共有を実現する「メディアポータル」

序章の「『の商品いいね』の気持ちを引き出す『表現エンジン』」で、Scene7は「最終的にサイト訪問者に見せるコンテンツを表示するためのもの」であり、「責任者によって公開してOKと承認された最終アセットの配信とユーザーに対する表示の部分を担うもの」だと述べた。


マスターとなる画像や動画などの素材を、事前にScene7サーバーにアップロードして、表示スタイルなどを設定しておく
CMSがページ表示のHTMLを生成する際に、Scene7のコンテンツを呼び出すJavaScript命令をHTMLに追加しておく
サイト閲覧時に、ページのなかにScene7サーバーからのコンテンツが併せて表示される
Scene7と既存のWebサーバーやCMSサーバーとの関係(Scene7導入時の構成の例)

この表現は厳密には正確ではない。というのも、Scene7は、管理しているリッチコンテンツを、社内のスタッフや外部パートナー、フランチャイズ先など、関係者に対して提供する「素材ライブラリ」として使うこともできるからだ。この機能は「メディアポータル」と呼ばれている。

もちろんScene7は細かいバージョン管理などの機能を備えていないため「外部向けに使ってよいと承認された素材」を対象とするのが原則なのだが、利用ユーザーごとにアクセス権を設定して、グループ共通のDAM(デジタルアセット管理システム)として利用することもできるのだ。

Scene7をメディアポータルとして利用するユーザーも、画像や動画を変換したり加工したりといったScene7の機能を利用できるので、必要な素材を統一してScene7で管理しておけば、代理店やパートナーもそのマスター素材をベースに自由にリッチコンテンツを利用できるようになるのだ。

そうすることで、関係者の作業時間や素材管理にかかるコストを大幅に削減できる。ある企業はScene7の素材管理システムで、作業時間とコストを最大60%削減した。また、マスター画像からオンデマンドですべての派生画像を動的に生成することで、全体の画像管理コストを最大90%削減した企業もあるという。

メディアポータルの画面は、自社のロゴやブランドカラーを設定してカスタマイズできる
メディアポータルの画面は、自社のロゴやブランドカラーを設定してカスタマイズできるので、代理店や制作会社には自社のシステムのように見せ、管理画面でもブランド感を統一できる。

表示パフォーマンスは? 価格は?

クラウド型のサービスというと、気になるのが価格と動作速度だ。

インストール型ソフトウェアのように「利用権」を購入するのと違って、Scene7のようなクラウド型サービスは「提供される機能」への対価を支払う形になるため、コストの見積もりが難しくなる傾向がある。

また、サーバーの反応速度が遅いとサイト全体が重いように感じられるし、リッチコンテンツは重量級のデータになる場合があるためネットワーク性能もユーザーエクスペリエンスに影響する。

「表示が遅ければ、だれも使ってくれませんから」

シーラ・ダルグレン氏
シーラ・ダルグレン氏(米アドビ システムズ社)

米アドビ システムズ社でScene7を担当するシーラ・ダルグレン氏によると、Scene7は「表示パフォーマンスを非常に重要視している」のだという。

そもそも、Scene7サーバー側にキャッシュシステムを組み込んだうえでCDN(コンテンツ配信ネットワーク)を利用しているという、サーバー側とネットワーク通信のどちらでも速度を考慮したシステム構成になっています。

マルチメディアビューアの動作でも、ユーザーエクスペリエンスを損なわないように、速度には気を配っています。たとえば拡大画像を表示する場合にも拡大画像全体を転送するようなことはしていません。(Googleマップで地図を拡大するときのように)拡大表示する部分のデータだけをサーバーから転送する仕組みになっているため、ムダがなく表示パフォーマンスは快適になっています。

そもそもScene7は、10年前に56Kbpsのインターネット接続の環境で高解像度の画像を提供していました。ネットワーク環境が良くなっている今は、さらに表示パフォーマンスは良くなっているはずですよ」(ダルグレン氏)

そもそもScene7は「リッチコンテンツを表示するシステム」ではなく、「良いユーザーエクスペリエンスを提供するシステム」だ。そのため、速度が遅くなることは根本的な思想からして許されないのだという。「表示が遅ければ、だれも使ってくれませんから」(ダルグレン氏)。

利用料は従量課金制

Scene7の価格は、コンテンツ配信量(コンテンツがどれくらい訪問者に見られたか)によって決められる。同様のクラウドサービスであるSiteCatalystはサイトのPV数(に応じたサーバーコール数)によって利用料が決定されるが、Scene7の場合はScene7サーバーに対する呼び出しの回数によって利用料が決定される。

残念ながら利用料金のメニューは一般に公開されていないためにここでは紹介できない。Scene7のサイトで利用料金(サブスクリプション)の情報を調べたうえで、問い合わせてほしい(以下に利用料金に関するページを示す)。

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