「この商品いいね」の気持ちを引き出す「表現エンジン」 Adobe Scene7徹底解剖
ECサイトに効く! Adobe Scene7
Adobe Scene7(以下、「Scene7」と記述)とはどんなサービスなのか。それをひと言で表現するのは、なかなか難しい。簡潔ではないが、わかりやすく表現するとなると、次のような表現が適切だろうか。
Scene7は、サイトに来た人に「この商品いいね!」と思わせるリッチコンテンツの生成と配信を自動化することで、売上と顧客ロイヤルティをアップさせて、運営コストを下げる、クラウド型サービス。
あいまいな表現で申し訳ないが、簡単には説明しきれないぐらい多機能なサービスなのだ。
もしかすると、「導入するとどんな効果が得られるのか」を知るほうがわかりやすいかもしれない。既存のScene7利用サイトがScene7を導入することで得ているという効果から、いくつか数値で事例を紹介しよう:
- コンバージョンレートが最大2倍
- 制作にかかる時間と費用が最大80%削減
どうだろう。興味がわいてきたのではないだろうか。
Scene7の機能のほとんどは、ECサイトでより顧客にアピールして売上をアップさせ、運用を自動化してコストを削減するためのものだ。具体的には、次のような機能や特徴を備えている。
Adobe Scene7の全体像
- リッチコンテンツの表現/配信
ダイナミックイメージング ―― ビューアライブラリに用意された、カスタマイズ可能な110種類以上の複合メディアビューアを使用して、最適化されたリッチ画像を自在に表示(サイズ変更、編集、インタラクティブズーム、カラー見本、複数画像表示、360度回転など)
ダイナミックバナー ―― テンプレート画像とFlashコンテンツを使用したプロモーションバナー上に、対象顧客にマッチしたメッセージをリアルタイムに配信
eカタログ ―― 印刷用素材を元に、インタラクティブなオンラインカタログを作成
eビデオ ―― 高品質でインタラクティブなビデオ体験を提供するための、エンドツーエンドのビデオ公開ソリューション
マルチメディアビューア ―― 1つのビューアであらゆるタイプのメディアを表示(ズーム、画像セット、回転、カラー見本)
ビジュアルコンフィグレーション ―― 動的な画像レンダリングにより、商品とオプションを目で確認しながらカスタマイズすることで、サイト訪問者の選択を元に無限のバリエーションを表示
ウェブtoプリント ―― 印刷商品のパーソナライズやマーケティング素材の多言語対応をテンプレートベースで行うことで、ブランドの一貫性を保持
- リッチコンテンツの管理
Scene7パブリッシングシステム ―― すべてのクロスメディアワークフローを直感的に操作できるシステムで、ダイナミックコンテンツを管理、拡張および公開
メディアポータル ―― セキュアな制作管理システム上で、制作したコンテンツおよびOfficeファイルを蓄積、管理、共有および提供
- リッチコンテンツの配信
ウェブ&ソーシャル ―― あらゆるクロスメディアソリューションをウェブページ、ソーシャルサイトおよびアプリケーションに配信
電子メール&プリント ―― キャンペーンをパーソナライズし、対象顧客にマッチしたリッチな画像が掲載された電子メールや印刷媒体を配信
モバイル&マルチスクリーン ―― スマートフォンやモバイルを含むさまざまな画面サイズの情報機器に向けて、最適化されたリッチなクロスメディア体験を配信
CS5(Creative Suites 5)との統合
SiteCatalystやTest&Targetとの統合
Scene7は、アドビが2007年5月と比較的最近に買収したサービスだが、実はその歴史は古く、1999年からサービスを提供している。
アドビというと、多くの人が想像するのがPhotoshopやIllustratorのようなデザインツール、DreamweaverやFlashのようなウェブオーサリングツール、そしてPDFツールのAcrobatだろう。しかし、Scene7はそうしたデザインツールやビジネスツールとは、次のような点で趣を異にする。
Scene7は、主にECサイトを中心としたサイト管理や運営のためのサービスである
Scene7は、クリエイターが直接デザイン作業を行う際に使うツールではなく、作ったクリエイティブをWebサイト上でさまざまなスタイルで表示するための仕組みである
Scene7は、手元のパソコンやWebサーバーにインストールして使うソフトウェアではなく、オンラインで機能を利用するクラウド(SaaS)型サービスである
PhotoshopやAcrobatのようなソフトウェアというよりは、Web担の読者にはなじみ深いSiteCatalystのような感じで利用するサービスだというとわかりやすいだろう。
日本では、2009年9月からアドビとしてScene7のシステムやサポートドキュメントまで日本語化して正式にサービスを提供している。クラウド型サービスとして稼働するデータセンターも、北米やヨーロッパに加えて、アジアにデータセンターを備えてサービスを提供している。
ECサイトを裏方として支えるサービスなのであまり表には見えないが、全世界で数多くのサイトで利用されていて、オンライン小売業のトップ10社のうち8社が導入しているという。
Scene7導入企業の例を海外の有名どころでいうと、Amazon、リーバイス、ラルフローレン、イヴ・サンローラン、フィリップス、オフィスデポ、Macy's(百貨店)、QVCなどがある。日本でも、ピーチ・ジョン、フェリシモ、光文社JJショッピングサイトJJmodeなどで導入されている。
リッチメディアの「編集」と「配信」を最適化
改めてScene7の方向性と得られる効果を整理すると、Scene7が実現するのは、企業サイトやECサイトにおけるリッチメディアの「作成」と「配信」を自動化・最適化すること。
Scene7のミッションは、リッチエクスペリエンスをどこででも、自社メディアであれFacebookなどのソーシャルメディアであれ、PCの画面であれ、モバイルの画面であれ、どこででも提供することだという。
そして、ビジネス面では、次の3つの効果を発揮するためのシステムとして作られている。
コンバージョン率を向上させることにより、売上をアップさせる
画像の編集や更新の作業を自動化することで、作業量を減らして時間を短縮し、コストを削減する
サイトにおけるカスタマーエクスペリエンスを向上することで、顧客(サイト訪問者)の再訪頻度を高めたりロイヤリティを高めたりする
なぜこうした効果が得られるのか? それは、Scene7はECサイトにおける高解像度の画像など、「ユーザーにとって望ましい情報」を伝えるためのリッチメディアの生成と配信を自動化できからだ。
Scene7があればEC用システムやCMSは不要になる?
Scene7がリッチコンテンツの生成と配信を担うシステムなのだとしたら、Scene7を導入すれば、既存のECシステムやコンテンツ管理システムは不要になるのだろうか?
そういうわけではない。Scene7はマルチメディア素材を管理する機能はもっているが、本質的にはCMSではない。Scene7はあくまでも、最終的にサイト訪問者に見せるコンテンツを表示するためのものであって、商品管理、画像のバージョン管理、掲載ワークフロー管理などの機能は備えていない。そのため、Scene7は、既存のECシステムやCMSのページ表示部分に組み込んで使うものだと考えるべきだ。
つまりScene7は、責任者によって「公開して良い」と承認された最終アセットの配信とユーザーに対する表示の部分を担うものなのだ。すべてのデジタルアセット(画像などの素材)を管理するシステムがバックエンドにあり、そのフロントエンドとしてScene7があるイメージで考えるといいだろう。
次回から、Scene7の各機能について、具体的に解説していこう。
- 「この商品いいね」の気持ちを引き出す「表現エンジン」 Adobe Scene7徹底解剖
- 商品の拡大画像、色バリエーション、360度画像などを見せる“ダイナミックイメージング”機能
- 画像やFlashにメッセージやマークを動的に付けて表示する“ダイナミックバナー”機能
- 紙カタログの素材からウェブ用のオンラインカタログを作る“eカタログ”機能
- 商品動画をプレイヤー付きで簡単に掲載できる“eビデオ”機能でYouTubeに頼る必要なし
- 商品を魅力的に見せるリッチコンテンツの表示パーツを揃えた“マルチメディアビューア”機能
- 商品の個別カスタマイズをWeb上で試せる“ビジュアルコンフィグレーション”機能
- テンプレに名入れや店舗ごとカスタマイズしたPDFを生成する“ウェブtoプリント”機能
- スマホもタブレットもFacebookでも、どこでもリッチな表現を一貫して提供
●Adobe Scene7製品サイト
→ http://www.scene7.com/jp/
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