内閣官房が“ダメ”と言ったIE6、でもなぜ消えずに残り続けているのか?
今日は、ブラウザの話を。Web業界を未だに悩ませるIE 6に関して、内閣官房情報セキュリティセンターから発表されたIE6からIE8への移行推奨の話題などをお届けします。
内閣官房情報セキュリティセンターがIE6からIE8への移行を推奨
少し古い話になってしまうのですが、そういえばWeb担で書いていなかった、ちゃんとお伝えしたい話題があります。
内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)は、各府省庁にIE6からIE8への移行を推奨したうえで、今後ウェブアプリを構築する際には最新のブラウザに対応する設計とすることを5月12日付けで指示したと6月17日に発表しました。
政府機関において未だIE 6が使われているが、IE6は旧型のブラウザであり、マイクロソフトがセキュリティ面でのリスクがあることなどを理由にIE6からIE8への移行を勧めていることを背景としたものです。
- 内閣官房情報セキュリティセンター IE6からIE8への移行を推奨
→ http://www.nisc.go.jp/press/pdf/browser_transition_press.pdf
IE6をなんとかして葬り去ろうとするWeb業界
IE6といえば、CSSの解釈やJavaScriptの動作に関してモダンブラウザ(Firefox、Opera、Chrome、Safari、IE8など)と異なる点が多く、WebデザイナやWeb担当者にとっては悩みの種。IE6に対応しなくていいなら、開発はもっとスムーズになるし、制作費も安く済むはずなのに、いつまでたってもIE6への対応を続けなければいけないため、Web業界にはIE6を親の敵のように憎んでいる人も多いようです(私もですが)。
そのため、ユーザーによってIE6の葬儀が行われたり、IE6撲滅キャンペーンが行われたり、あげくの果てには、豪マイクロソフトが「IE6は9年前の腐った牛乳」だとしたアップグレード呼びかけが行われたりしています。
- IE6の“葬儀”行われる Microsoftから献花も(ITmedia)
→ http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1003/08/news030.html - 「IE6はもういらない」――Web企業が撲滅キャンペーン(ITmedia)
→ http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/06/news031.html - 「IE6は9年前の腐った牛乳」――Microsoftがアップグレード呼び掛け
→ http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1005/17/news033.html
グーグルでは、すでにYouTube、Google Reader、Google DocsなどでIE6のサポートを打ち切っており、年内にはGmailでもIE6のサポートを打ち切る予定としています。
- Google ReaderでIE6のサポート終了(ITmedia)
→ http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1005/31/news067.html
そういった流れを表すように、欧米ではIE6の利用者シェアが5%を切って4.7%になり、日本でも8.43%と過去最低となったという発表があります。
- IE6のシェアが欧米で初めて5%を切る、日本では8%台(INTERNET Watch)
→ http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100602_371617.html
Web担でも2008年12月には26.3%あったIE6のシェアは2010年6月には11.2%まで下がっています。
実際にはオトナの事情でIE6を使わされている場合も
ところが、特にB2Bサイトでは未だIE6をサポートせざるを得ないのも事実です。というのも、各企業の企業内システムがIE6向けに作られているためIE7でもうまく動作しない場合があり、とはいえシステムをモダンブラウザ向けに改修する予算もとれないからです。
実際に、IE6の利用はビジネスアワー(平日昼間)にピークの13%を示し、就業時間後には6%にまで減少しているというレポートが、この事実を裏付けています。
- IE6、企業でまだまだ現役(スラッシュドット・ジャパン)
→ http://slashdot.jp/it/article.pl?sid=10/04/29/0150243
つまり、B2CとB2Bで状況が異なるのです。
B2C、つまり、YouTubeのようなエンドユーザー向けのサービスや家庭からのアクセスが大半を占めるサイトでは、IE6を切り捨ててもダメージが少なく、「最新のIE8にアップグレードしてください」とIE6ユーザーに呼びかけることは意味があります。
しかし、B2B、つまり、企業の人が業務の一環として利用するようなサイトやサービスでは、訪問者が好きでIE6を使っているわけでもなく、IE8などモダンブラウザに変えたくても変えられない事情があるのです。そうしたユーザーに対して「IE6は古いからアップグレードしてね」と言っても、ユーザーは「そんなことはわかってる! でも会社のルールだから仕方ないんだ」となるわけですね。
ではWeb担当者はどうすればいいのか?
では、Web担当者としてはどうするべきなのでしょうか。
B2Cサイトであれば、どこかのタイミングで内閣官房情報セキュリティセンターの発表などを武器に、思い切ってIE6のサポート停止を社内で通すべきでしょう。それがユーザーのためにもなります。
B2Bサイトであれば、残念ながらビジネスアワーのIE6利用率が高いようであれば、引き続き継続してサポートするしかないでしょう。潜在見込み客の企業に「社内システムをIE6依存から作り替えてください」とは言えませんからね。
本来ならば、IE6依存の社内システムを利用している企業では、IE6の利用は社内システムだけに留め、外部サイトの閲覧はセキュリティリスクの少ないIE7以降で行うべきなのですが、そうしてくれるとは限りません。
このご時世だと、経産省が大規模に予算を充ててくれるのでもない限り社内システム改修に踏み切れる企業は多くないでしょう。ここは、イントラネットゾーンのサイト(社内向けシステム)では自動的にエンジンから何かすべて“本物のIE6”が動作し、インターネットゾーンのサイト(社外のサイト)では最新のエンジンを使うIEをマイクロソフトが作って、強制的にWindows Updateで配布してくれるのが良いと思うのですが……。うーん。
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