プレスリリース・ニュースリリースの書き方&活用基礎講座

3.リード見出しとリードでリリースの8割が決まる

3.リード
見出しとリードでリリースの8割が決まる

オリジナルのリード

株式会社イヌネコカンパニー(本社:長崎、社長:犬猫虎象)は、軽さと扱いやすさで定評があった同社の小型犬用ドッグカー『ワンワンエル』シリーズをリニューアルし、1才まで使える『マルワン』と3才まで使える『ワンワンエル マルスリー』の2タイプを5月15日より、全国のペット用品専門店を通じて発売する。
いずれも3カ月から使用でき、近年都市部を中心に使用者が増加しているセカンドドッグカーとして適している。同社は1980年の創業以来、『飼主の視点』を大事にしており、今回のリニューアルにあたっても使用者からの意見やアンケート結果を重視し、安全性の向上、不満点の解消、機能面の充実に努めた。発売を記念したプレゼント企画も実施。応募はウェブサイトで受け付ける。

書き出しが「株式会社イヌネコカンパニー(本社:長崎、社長:犬猫虎象)は」となっていますが、この連載の4回目で解説しているように、会社名の前にはその会社の業務を一言で表す言葉を添える必要があります。また、カッコの中が「本社:長崎」となっていますが、長崎県か長崎市を明確にするべきです。県庁所在地と政令指定都市は県名を省略し、政令指定都市は区まで書くのが原則ですので、この場合は「本社:長崎市」です。社長表記は問題ありません。

その次のイヌネコカンパニーのドッグカーが「軽さと使いやすさで定評があった」という表現は、誰かがそのように評価しているという事実を示しているようですが、第三者の評価をリリースで示す場合は、それなりのデータが必要です。このような表現は、逆に信ぴょう性を下げてしまう恐れがあるので、無理に他の評価を持ち出すのではなく、自社が訴える特長という形にした方がいいでしょう。「軽さと使いやすさが特長の~」とすれば、自社としてのアピール点ということになり、違和感がなくなります。

続く「同社の~」という書き方は、自社が出すリリースとしては不自然です。最初に、会社名の前に「ドッグカー開発・製造の」と書いておけば、ここで無理に「同社の」と入れる必要はありません。

「リニューアル」

「サイトをリニューアルしました」という見出しのリリースをよく見かけます。その会社にとっては頑張ってリニューアルしたことそのものがニュースなのかもしれませんが、会社関係者以外にとっては、はっきり言ってリニューアルの事実はどうでもいいことです。ポイントは内容です。たとえば、リニューアルしてサイトで商品を買えるようにしたのなら、サイトのリニューアルではなく、サイトで買い物できるようになったことが記者や消費者にとってニュースなのです。リリースを作る場合、常に読み手の目線で何がニュースなのかを考えなければなりません。

「リニューアルし~」と文章は続きますが、「リニューアル」という言葉はあいまいなので、具体的な特長を記すべきです。「リニューアル」の言葉を排し、見出しの3行目に書かれているような具体的な特長を入れて「開閉時の安全性と日差し対策を向上させた」にします。この場合、その前の文の「『ワンワンエル』シリーズを~」は「『ワンワンエル』シリーズで~」にする必要があります。二重かぎかっこはかぎかっこに改めます。

その次の「1才まで使える~、3才まで使える~」は、連載の3回目で説明したように用字用語を共同通信社の『記者ハンドブック』に準じる観点から「才」を「歳」の字に改めます。続く「5月15日より、全国の~発売する」ですが、これも連載の5回目で指摘したように、「発売」する日は1日だけのことなので「5月15日より」ではなく「5月15日に」に改めます。「発売する」ではなく「販売する」という文章なら、「5月15日より」でもいいのですが、ここも記者ハンドブック準拠で「より」ではなく「から」に直します。発売が各店舗で順次というケースなら、「5月15日から順次販売開始します」とします。

元のリリースは、である調の文章ですが、丁寧で柔らかい印象を与えられるように、ですます調にした方がいいでしょう。

添削後のリード(1文目)

ドッグカー開発・製造の株式会社イヌネコカンパニー(本社:長崎市、社長:犬猫虎象)は、軽さと使いやすさが特長の小型犬用ドッグカー「ワンワンエル」シリーズで、本体開閉時の安全性と日差し対策を向上させた1歳まで使える「マルワン」と3歳まで使える「ワンワンエル マルスリー」の2タイプを5月15日に全国のペット用品専門店で発売します。

リリースでは特に見出しとリードの1文目が大きなウエイトを占めます。記者が読んで記事にするかどうかを、この部分だけで判断する場合もあります。一般消費者がサイトで読む場合も、見出しとリードの1文目を読んで、このリリースを読み進めるかを決めるでしょう。リリースで伝えたいことがはっきりしていれば、あとは表現に気を使うだけで、しっかりとした見出しとリードの1文目ができるはずです。リリースで伝えたいこと・知りたいこと(=ニュース)は、リニューアルの例のように社内で考えるものと、記者や一般目線のものとでは微妙に違います。このあたりも注意したいものです。

リードの2番目の文章ですが、「いずれも3カ月から使用でき~適している。」は、発売する商品の利用法が示されていて良いでしょう。ただし、ここには見出しの1行目で触れている「軽量・コンパクトで自立する実用性重視」を加えます。ただし、「軽量」はリードの1文目で「軽さと使いやすさが特長の」と触れているので省き「コンパクトで自立する実用性重視型」にします。

添削後のリード(2文目)

いずれも3ヵ月から使用できるコンパクトで自立する実用性重視型で、近年都市部を中心に使用者が増加しているセカンドドッグカーとして適しています。

その次の3番目の文章「同社は、1980年の創業以来~機能充実に努めた」は、いただけません。リード部分に入れる内容として、会社のこれまでの取り組み姿勢の説明は不要です。このような内容は、リリース本文の後半に入れるべきです。しかし、このリリースの場合、実は文章はリードだけで本文がなく、リードが終わるといきなり製品の特徴が個条書きになっているという問題があります。これについては後述します。

読み手としては3番目の文で、2タイプの商品の内容に触れてもらいたいものです。会社にどれだけ歴史があって、どんなモットーでビジネスに取り組んでいるかも結構ですが、それより先に、セカンドドッグカーに適しているこの2タイプの特長である(本体)開閉時の操作をより安全にして、日差し対策も充実させたのはどんなことなのかを具体的に知りたいのです。その点が、この商品のニュースの内容そのものになるからです。

3番目の文章では「使用者の意見やアンケート結果を重視し、安全性の向上、不満点の解消、機能面の充実に努めた」とありますが、具体的にはこれが何を指すのかを明確に示してもらいたいのです。見出しの3行目を説明する内容を記すべきです。リードの後にある「主な特徴」から拾って作ってみます。

添削後のリード(3文目)

どちらのタイプも、本体開閉時の指はさみ防止のため新しい部品を使用するとともに、日差しの方向に合わせて角度調節できる丸幌を採用しました。

4番目の文章「発売を記念したプレゼント企画も実施。」と5番目の「応募はウェブサイトで受け付ける。」は、リードの最後に入れる付け加えの項目としては、アリでしょう。ただし、ここでももう一言どんなプレゼントなのかを書くのが親切です。プレゼント企画の対象が購入者なのか不特定多数なのかもわかりません。このプレゼントに関しては、リリース全体を通じてどこを読んでも説明されていません。リードで触れた内容の詳細は、必ず本文で説明する必要があります。不明な部分を「●●●」にして手直しします。

添削後のリード(4、5文目)

発売を記念して●●●を対象に●●●を抽選でプレゼントする企画も実施します。応募は●月●日からウェブサイト(http://www.example.com/)で受け付けます。

ここまでをまとめると、リード全体は次のようになります。読み手が知りたいと思われる順に2文目と3文目を入れ替えます。

添削後のリード(全体)

ドッグカー開発・製造の株式会社イヌネコカンパニー(本社:長崎市、社長:犬猫虎象)は、軽さと使いやすさが特長の小型犬用ドッグカー「ワンワンエル」シリーズで、本体開閉時の安全性と日差し対策を向上させた1歳まで使える「マルワン」と3歳まで使える「ワンワンエル マルスリー」の2タイプを5月15日に全国のペット用品専門店で発売します。

いずれも3ヵ月から使用できるコンパクトで自立する実用性重視型で、近年都市部を中心に使用者が増加しているセカンドドッグカーとして適しています。どちらのタイプも、本体開閉時の指はさみ防止のため新しい部品を使用するとともに、日差しの方向に合わせて角度調節できる丸幌を採用しました。3ヵ月から使用できるコンパクトで自立する実用性重視型で、近年都市部を中心に使用者が増加しているセカンドドッグカーとして適しています。発売を記念して●●●を対象に●●●を抽選でプレゼントする企画も実施します。応募は●月●日からウェブサイト(http://www.example.com/)で受け付けます。

いかがでしょうか。リードとしては、段落を2つに分けることはややイレギュラーなのですが、オリジナルのリリースに途中で改行が入っていますので、それを踏襲しました。続く本文が個条書きのみという特殊なパターンでのリードなので、そうなってしまったのでしょう。改行する場合には読みやすくするために1行分空けます。

見出しとリードについて、詳細に解説してきましたが、リリースを作成するうえで、見出しとリードができれば、そのリリースは8割完成したと言えるでしょう。極論すると、本文や別紙は見出しやリードで触れたことを補足的に説明するだけの内容です。見出しやリードでそのリリースの方向性がしっかりと定まれば、本文以下に書くべきことはおのずと決まってきます。何よりもまず、見出しとリード作りに最大限の力を注ぎましょう

4.本文
伝えたい内容は必ず文章にして訴求する

オリジナルの本文

■主な特徴(2タイプ共通)

1 軽量ボディ
公共交通機関を利用する際の階段の上り下り、エレベーターのないマンションの2階以上のフロアへの移動にも、負担を感じない軽量設計。愛犬を抱いたままでも持ち運びやすいショルダー付き。

2 オートロック・オート自立スタンド(特許)
たたむと自動的にロックがかかり、そのまま自立する。

3 高い安全性
5点式シートベルトを採用し、走行時の安全性を確保。また、開閉時の指鋏みを防止するため、新たな部品を採用することで、さらに安全性を高めた。

4 簡単操作 コンパクト
開閉操作は簡単。たたむとコンパクトになるので、自宅での保管や外出先での食事等でも場所をとらない、軽自動車にも収まる。

5 角度調節できる丸幌
愛犬をつつむようにカバーする丸幌を採用。日差しの方向に合わせて角度も調節できる。マルスリーには後ろからの日差しを遮る布地も付けており、紫外線から愛犬を守る。

6 2way快適シート
シートカバー取り付け、取り外しの2通りでの使用が可能。暑い季節にはシートカバーを外せば通気性のよいメッシュシートに切り替わる。外したシートカバーは丸洗いができる。

7 足を傷めないカバー付き
たたむ時、靴のつま先がキズつくのを防ぐため、足で押す部分にプラスチック製のカバーを取り付けた。

まず、「特徴」ですが、『記者ハンドブック 第11版』では、P327~P328に特徴=特に目立つ点、特長=特に優れた点、と使い分けが記されています。このリリースの場合、特に目立つ点としての「特徴」でも間違いではないでしょうが、本来は特に優れた点としての「特長」を使った方がいいでしょう。

さて、今回何度も指摘していますが、このリリースには本来リードの次に来るべき本文の文章がありません。まずは、元のリリースにある個条書きを、文章としてまとめる必要があります。「1 軽量ボディ」から「7 足を傷めないカバー付き」まで7項目にわたって2タイプ共通の主な特徴が記されています。この1~7は、どのような意味を持つ順番なのでしょうか。リリースでは、途中で読むのを止められても大事なことが伝わるように、ニュース性のある重要な事柄から特長を示していくことが基本です。

この商品の特長に関して、これまでに見出しやリードで、安全性と日差し対策に触れています。見出しの最初には、軽量、コンパクト、自立可能、とあります。アピールすべき特長というのは、他社の商品や既存の自社商品にない優れた事柄です。会社としてこの新製品で最もアピールしたい点が軽量、コンパクト、自立可能なのか、安全性と日差し対策なのかにもよりますが、ここまでの流れとして特長の第1に安全性、第2に日差し対策を取り上げ、軽量、コンパクト、自立可能という順番がベターだと思われます。

それぞれを個条書きではなく文章にしてつなぐことで、読み手が特長を簡単に理解できるようにしたいものです。

添削後の本文

マルワンとワンワンエル マルスリーともに、5点式シートベルトを採用して走行時の安全性を確保するとともに、本体の開閉時の指はさみを防止するため新たな部品を使ってさらに安全性を高めた点が最大の特長です。愛犬をつつむようにカバーする丸幌を採用し、日差しの方向に合わせて角度の調節が可能。マルスリーには後ろからの日差しを遮る布地もあり、紫外線から愛犬を守ります。

公共交通機関を利用する際の階段の上り下りやエレベーターのないマンションの2階以上のフロアへの移動にも負担を感じない軽量設計を施しました。愛犬を抱いたままでも持ち運びやすいショルダー付きです。本体の開閉操作は簡単で、たたむとコンパクトになるので自宅での保管や外出先での食事等でも場所をとりません。軽自動車にも収まります。たたむと自動的にロックがかかり、そのまま自立します。

さらに、シートカバー取り付け、取り外しの2通りでの使用が可能な2way快適シートを採用しました。暑い季節にはシートカバーを外せば通気性のよいメッシュシートに切り替わります。外したシートカバーは丸洗いできます。たたむ時につま先がキズつくのを防ぐため、足で押す部分にはプラスチック製のカバーも取り付けました。

イヌネコカンパニーは1980年の創業以来「飼主の視点」を大切にして、今回のリニューアルにあたっても使用者からの意見やアンケート結果を重視し、安全性の向上、不満点の解消、機能面の充実に努めました。

●●●の方を対象に、発売を記念したキャンペーン企画を実施します。賞品は●●●、●●●、●●●で、それぞれ●人、●人、●人に抽選でプレゼントします。応募は●月●日からウェブサイト(http://www.example.com/)で受け付けます。

個条書きは、宣伝チラシやプレゼンテーション資料には有効ですが、リリースでの基本は文章です。個条書きでの説明は、別紙に入れるべき性格の内容です。インターネット時代で、マスコミ関係者だけでなく一般消費者もリリースを直接読めるようになった今、リリースには客観的な読み物記事ふうな感覚が求められるのです。

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