ビジネス目的別企業Webサイト成功の法則

投資家×IRサイト―企業の情報を正しく伝えるための法則

個人投資家はあなたの会社のファンになる大切な人たちなのです。

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ビジネス目的別企業Webサイト成功の法則

この記事では、企業のWebサイトが持つ役割を、対象とするユーザー(ステークホルダー)とサイトのビジネス目標の2軸に分け、それぞれのケースに合った事例と対策を具体的に紹介していきます。各記事の最後には、チートシート形式としてまとめたPDFファイルを掲載しています。全17パターンの業務に直結する実践的なノウハウの中から、あなたのサイトに合ったものをぜひ活用してください。

この記事の進め方
背景 背景 テーマごとのWebサイトの現状を説明
課題 課題 そのテーマに関して、Web担当者の多くが抱える問題を提起
サイト構築のポイント ポイント データ全体を通しての重要ポイントを解説
コンテンツの具体例 コンテンツ 数ある具体的なコンテンツの例を提示
リスクと解決策 リスク 陥りやすい間違いやそれらをうまく回避するためのヒントなど
サイトの要素 要素 サイトに必要な要素の洗い出し
サイト構造図 構造図 サイトの構造図や位置づけなど
成果の判定指標 判定指標 サイトの成果を判定するために確認する指標
補足事項 補足事項 その他補足事項

対象ユーザーとサイトの目的ごとにまとめた全17パターンの記事一覧はこちらからどうぞ。

「投資家×IRサイト」成功の法則(1)

今回は、投資家に対するIRサイトのあり方について考えていきます。企業にとってIR活動が重要であることは言うまでもありません。しかし、IRに関する専用の部署や担当者がいる・いないにかかわらず、IRサイトで何をしたらいいのかわからないというWeb担当者は多いことでしょう。今回と次回に分けて「企業の情報を正しく伝える」「総会以外のコミュニケーションツール」というテーマでIRサイトについてお話したいと思います。

背景企業のIR活動とIRサイトのユーザー

「IR(インベスター・リレーションズ)」とは、企業が資金を得るために、資金を提供してくれる「投資家」をターゲットとした企業活動のことです。Webサイト上での情報提供にとどまらず、総会や説明会の開催、製品や工場の見学会、印刷物の刊行など、その活動内容は企業によってさまざまです。企業がIR活動に力点をおくようになった背景としては、企業が株式市場で資金調達をする比重が高まったことがあげられます。IR活動の主な対象は、機関投資家と呼ばれる投資を専門に行う企業や団体(たとえば生命保険会社や信託銀行など)ですが、1990年代の終わりに爆発的に増えたインターネットトレーダーも重要な位置付けになります。投資に対する個人の意識が変わったこともあり、IR活動の対象が「個人投資家」にまで広がり、企業のIR活動の考え方に影響を与えているのです。

企業にとってなぜ個人投資家が重要かといえば、それは彼らがその企業の「ファン」であるからです。投資を始めた個人の中には単に利益を追求するのではなく、自分が好きなものや好きな企業の株を購入して長く持っていようとする人たちがいます。その企業の商品を購入するだけでなく、その企業の事業に賛同し投資をする人々は、企業にとって最もロイヤリティの高いユーザーなのです。

旧来の投資専門家は、企業のWebサイトで情報を入手するよりは、ブルームバーグやモーニングスターといった専門機関から効率よく情報を入手できるため、正直なところ企業のIRサイトにはあまり注目していませんでした。ところが、専門家ではない個人投資家の登場によって、企業のIRサイトの役割が重要になってきたのです。

課題IRサイトはPDFファイルのインデックスでOK?

アニュアルレポート

年次報告書。上場企業が情報開示(ディスクロージャー)の観点から、経営状況や財務諸表などを年度末に報告書としてまとめ発表する。

財務情報や業績情報がPDFファイルになっていて、ただ単に年度別に並んでいる……。あなたが担当するIRサイトは、そんなPDFファイルで埋め尽くされたものになってはいませんか? もし、そうなっていても前任者やIR部門を責めてはいけません。多くの企業が、「IR活動のユーザー=機関投資家」と定義していたため、IRサイトのコンテンツはアニュアルレポートのPDFデータがWebサイトから入手できれば十分だろう(というより他のサービスメニューが思いつかない)といった事情が背景となっているのです。

しかし、投資の専門家でない個人投資家にとって、IRの情報がアニュアルレポート(英語版であることが多い)だけでは「その企業がどういう状態にあるか」を読み取ることは困難だといえます。

ポイントとにかくユーザーに自社のことを理解してもらう

ファンである個人投資家を大切にする企業が、IR活動として個人投資家限定のコンサートをしたり、株主総会で新しいゲームの体験ができたり、株主優待でビールやレアモノミニカーがもらえたりといったさまざまな取り組みをしています。

それでは、IRサイトはどうあればいいでしょう。ゲームを提供し、おもしろいコンテンツを作ればOKでしょうか? それも悪くはありませんが、第一部の一章で述べたように、ユーザーにとってIRサイトはあくまでチャネルの1つだという考えを忘れてはなりません。総会や印刷物などを含めた総合的な対応でそれぞれの企業の特性を活かしてこそ、初めてユーザーに満足してもらえるのです。

企業のIRサイトにおいてWebサイトが担うべき役割は、やはり詳細でわかりやすい情報提供であると言えます。イベントや紙面など、時間やスペースが限られたツールでは実現できないその企業がどんなことをしている会社なのかを理解してもらうことが求められていると言えるでしょう。

コンテンツ企業への理解を深めてもらうために

それでは、ユーザーに理解を深めてもらうための具体例をあげていきましょう。

  1. 投資や経営に関する知識がなくても理解してもらう

    個人投資家が必ずしも財務情報や投資に関する知識レベルが高いとは限りません。なるべく投資や経営の知識がなくても理解できる言葉で説明するのがいいでしょう。企業の現状や状況が簡潔にわかるサマリーやレビューを掲載したり、投資初心者向けにどんな内容が書いてあるものなのかを少し補足したりすることも有効です。場合によっては企業の取引先企業が閲覧することも想定されるため、「個人投資家の皆様へ」といったように、コンテンツを分けて専用の入り口を設けることも効果的です。

  2. データだけでなく想いや志を理解してもらう

    個人投資家に対するIR活動の本質がファンの育成やロイヤリティの向上であるなら、企業がプレゼンテーションすべきなのは財務指標といったデータよりも、その企業の「想い」や「志」です。なぜそのような事業を展開しているのか、どのような想いで商品開発や市場開拓をしているのか、将来どのような世の中を実現したいと考えているのかを語りましょう。そこに共感を得てこそ、利益追求志向ですぐに株を売買してしまうデイトレーダーでなく、長く株を持ち続けてくれる個人投資家を得ることができるのです。必ずしも社長やトップメッセージだけが有効というわけではなく企業の一方的な思い込みではなく、共感を得るメッセージを伝えることが肝心です。

  3. 企業の存在意義や貢献度について理解してもらう

    世の中には、何をしている企業だろうと思われる企業があります。そもそもコンシューマ向けのビジネスでなければ企業名や商品名を知られていなかったり、認知はされていても一部の事業分野のみだけしか理解されていなかったりという企業もあります。綿棒やベビーオイルで知られるジョンソンエンドジョンソンが、実は医療薬品の分野で世界的に有名な企業であったり、フイルムで身近なフジフイルムが医療検査機器の分野で活躍していたりと、意外と知られていないが、なくてはならない活動は多いものです。

    一般に広く知られていない企業であっても、取得している特許やそれらが使われている日常の身近な製品やテクノロジーを説明することで、その会社が世の中にどれぐらい貢献しているのか、その存在意義を伝えることができるでしょう。企業が担っている事柄を「事業紹介」や「商品紹介」としてWebサイトに掲載するだけではなく、IRサイトを訪れる個人投資家にもわかるように加工して掲載するのがベストです。

  4. 新鮮な情報を提供し理解してもらう

    「What’s New」「News」「プレスリリース」は比較的実装されている企業サイトが多いのではないでしょうか。これらの「最新情報」は、キャンペーンなどの販促や報道発表、Webサイトの更新告知、システムメンテナンスなど目的はいろいろです。いろいろな人向けの情報が錯綜すると、せっかく鮮度の高い情報を提供しても「気がつかない・探せない=閲覧してもらえない」原因となります。そのため、IRサイトではIRに関する内容のみをコンテンツとして設けることが理想的です。

    IRサイトで株価チャートや株価をほぼリアルタイムに提供している企業Webサイトがあります。掲載できるに越したことはありませんが、これまで述べてきたように、「プロの投資家はいくらでも情報入手の手段をもっている」「個人株主対応はあくまでファン育成であり、デイトレーダー対応ではない」といったことから、必ずしも株価を掲載する必要はないでしょう。

  5. 日本語以外の言語ユーザーにも理解してもらう

    海外の投資家は機関投資家がほとんどだという企業は多いと思います。英語版のアニュアルレポートの提供で完結するか、英語版のIRサイトからアニュアルレポートの内容が閲覧できるようにするのが基本的な対処法になると思います。ただし、英語やその他の言語での問い合わせに満足に対応できないようであれば、逆にユーザーを不快にさせてしまうだけなので無理に公開する必要はないでしょう。

    ここでの判断の基準は、誰がターゲットになるのかということです。グローバルビジネスを行っていて海外にも大勢の個人投資家を抱えているのであれば、英語のIRサイトについても、これまで述べた日本語のIRサイトと同様に捉えるといいでしょう。ただし、その際に注意すべき点は、日本国内の人々には認知されている事柄や企業背景が必ずしも海外からみて同様ではないかもしれないということです。事業分野や取扱製品分野、業界での位置付けなどは、日本で日本人に説明するのとは違った視点で説明できると理想的です。

リスクIRサイトの失敗がもたらす悲劇

上記にあげたような有効なコンテンツを用意すればすべてうまくいくかというと、そんなに簡単ではありません。必ずどこかに落とし穴が潜んでいるものです。コンテンツ制作と運用面で陥りやすい問題点を2つほどあげてみました。個別に詳しくみていきましょう。

IR部署との連携を

すでに繰り返し述べていますが、IRサイトはあくまで企業のIR活動の一端を担っているに過ぎません。ユーザーにとっては他のツールやチャネルを含めた全体としてのIR活動が重要なのです。ということは、IRサイトの運用においてもIR担当部署とWebサイト担当との連携が必須となります。総会で述べるメッセージとIRサイトのメッセージが異なっていたり、郵便物やその他の資料で告知されている内容がWebサイトには未反映だったりと、そんな不手際を繰り返していてはファンの育成どころか企業の信用が失墜してしまいます。そのようなリスクを避けるためには、リソース状況が許されるのであれば、更新頻度が高い情報はIR担当チームでも作業できるように、あらかじめ設計しておくといいでしょう。

企業のIR活動については、業務として他の部署と連携していることが少ない分野ともいえます。もし、あなたが総務や広報の所属でなければ、IR担当部署は普段接点のない部署になるかもしれません。IR担当部署の人も「Webサイトに掲載できるのはアニュアルレポートぐらいだ」と思っているかもしれません。しかし、IR活動の一端としてWebサイトで成果を挙げるにはIR担当部署とWebサイト担当の連携が不可欠です。自社のIR活動の在り方を検証し、Webサイトが何を担うべきかを定めて一歩一歩進めていくといいでしょう。

年度毎などの定期更新を前提に

IR情報というのは、四半期や上期・下期、年度といった一定期間で更新される情報です。財務情報など多量の情報が公開されることになりますが、定期的な更新(特に年度の切り替わり)が効率的に行えるようにWebサイトの構造が設計されていないと、一番忙しい時期に余計な時間を取られて運用負荷が高まった結果、社内の協力が得られなくなるという悪循環に陥ります。

IRに関わる数字は、年単位・四半期単位など多様な期間で比較できるようにしたり、過去のデータをライブラリ化したりといった掲載方法になります。ライブラリに移行する際に、ナビゲーションをわざわざ作り直したりWebサイト内のリンクを変更したりということでは非効率です。また、HTMLやPDFファイルのディレクトリ構造も、年度が重なるにつれて煩雑になり管理できなくなるケースも見受けられます。更新と管理について、先を見据えた設計を怠ってはなりません。

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