きちんと読んでもらうためのカスタマイズ術――新聞・雑誌向けには紙のリリースを/リリースの書き方基礎講座#8
この連載では、主に企業の広報担当者に向けて、初めて書く人でもわかるリリースの書き方から、ネット時代に即したリリースの書き方など、明日から役立つ基礎情報をお届けします。
リリースの書き方については、前回の第7回までで詳細に解説しました。第8回となる今回は、リリースのカスタマイズです。テキストベースで制作したリリース文書ですが、それをきちんと読んでもうためには、配布・公開時の用途に合わせた手直しが必要になるのです。
ニュースリリースはかつて、マスコミ向けにFAXか郵送、あるいは直接手渡しするものでした。しかし、インターネット全盛の今日では、マスコミ向けにメールで送信するほか、WebサイトにHTML形式で掲載したり、PDFファイルをダウンロードできるようにするなど、さまざまな配布・公開の方法があります。一般消費者や株主などを含めた利害関係者※に直接見てもらえるようにするためです。そのため、だれ向けなのかによってそれぞれの特性を考慮してリリースをカスタマイズしなければなりません。今回は、テキストベースのリリース文書が出来上がっている状態を想定して、その後、紙に印刷して配布するケースを解説します。
新聞社へのリリース配布は“紙”が原則
結論から言うと、新聞社に送る際には、紙のリリースが必要になります。
インターネット全盛の時代でも、新聞社は紙のリリースが基本だと考えた方がいいでしょう。自社サイトに連絡先メールアドレスを掲載している新聞社も多いのですが、これはサイトを管理するデジタルメディア関係部署の連絡先です。ニュースリリースをメールで送っても、実際に記事を書く編集局に届けられることは経験上ほとんどありません。
一般紙の場合、企業の情報を扱うのは経済部で、内容によっては生活部や特集関連の部署が担当します。経済紙であれば産業部や消費経済部などです。経済紙では本社の各部署がメールで受け取るケースもありますが、今でもFAXや郵送の方が好まれるのが実態です。
また、特定の地域に特化したリリースであれば、その地域を管轄する地方支局に送ってもいいでしょう。その場合、記事が掲載されるのは地方面になります。一部の新聞社の支局はメールアドレスを公開しています。地方支局ならメールでリリースを送っても記者に届く場合もありますが、やはり本社の各部署に対しては紙での配布が原則です。
雑誌の場合もIT関連の媒体を除き、編集部宛ての郵送かFAXがベターでしょう。
紙のリリース、7つの基本カスタマイズ術
では具体的な作業に移りましょう。まず、出来上がったテキストベースのリリースを用意して下さい。今からこのリリースを紙で印刷して配布できるようにカスタマイズしていきます。
紙で送る場合のポイントは次の7つです。
- A4サイズ1枚を意識して、各要素を集める
- タイトルは目立つように、ヘッダー上部中央に配置
- 見出しは2~3行を目安に大きく太い文字で書く
- リードは350文字程度。本文とは区別して書く
- 本文は明朝体。文字サイズや図版で行間を調整
- 1枚目の末尾には問い合わせ先を明記
- 補足的な要素は別紙に記載。写真やCD-ROMの同封も効果的
では、それぞれの手順について説明していきます。
1.A4サイズ1枚を意識して、各要素を集める
まず、Wordなどワープロソフトに「見出し」「リード」「本文」「補足」の各文章をコピーします。最終的にA4用紙で印刷することを念頭に置きます。その状態で、ワープロソフトの編集機能を使って文字のサイズや字体を変えたり、図版を張り付けて、印刷したときに見やすい体裁となるように整えていきます。
リリースがA4で2枚以上にわたる場合でも2枚目以降の部分は補足の別紙扱いにして、1枚目だけで必要最低限の内容が網羅されているようにしなければなりません。
1枚目だけで完結できるように、文字の大小や図版の大きさを調整し、場合によっては本文を削ったり書き足したりする作業も必要になります。
2.タイトルは目立つように、ヘッダー上部中央に配置
連載の第4回で解説したように、1ページ目の最上部(ヘッダー)の中央に、タイトルとして「ニュースリリース」「News Release」「報道資料」などの文字を見出しやリードよりもやや大きめのサイズで書きます。四角い枠で囲むとよりわかりやすいでしょう。左右には会社のロゴマークやリリースで取り扱う商品・サービスブランドのマークを貼り付けます。その下に、リリースを発行する年月日と正式な会社名を右寄せで入れます。
まれに「2009年3月吉日」のように日にちを特定しないで「吉日」とするリリースがありますが、日刊の新聞やニュースサイトは発表日を重視するので、必ず具体的な日付を書いてください。
3.見出しは2~3行を目安に大きく太い文字で書く
見出しは2~3行に収め、文章は本文より大きく太い文字で強調して中央に配置します。
「ゴシック体」「明朝体」「イタリック体」を組み合わせて目を引くように工夫してもいいでしょう。また、タイトルとサブタイトルのように、主見出しとサブ見出しに分けて、字の大きさや字体を変える方法もあります。
4.リードは350文字程度。本文とは区別して書く
見出しに続くリードは、350文字程度と、以前説明しました。文字の大きさや字体は本文と同じでも構わないのですが、リードであることを強調するために本文と区別する方法もあります。具体的には、本文より少し大きめの文字にしたり、本文が明朝体ならリードはゴシック体にします。リード部分だけを点線の枠で囲んでもいいでしょう。
5.本文は明朝体。文字サイズや図版で行間を調整
本文は、明朝体がベターです。落ち着いたイメージがあり、ゴシック体よりも信頼性があるように感じられるからです。また、リリースに限らず印刷物の場合は、本文に明朝体を使用し、見出しや強調したい箇所にゴシック体を使用するのが一般的です。小さい文字の場合はゴシック体に比べ明朝体の方が読みやすいといった特徴もあります。
文字の大きさは見出しが最も大きく、リード、本文、注釈の順で小さくなります。
本文はリリースの中で最も広いスペースを取るので、あまり行間を詰め過ぎないようにします。原稿をたくさん書いてしまったから、とにかく全文を詰め込みたいという状況に陥っても、適切な行間を取らなければなりません。字を少し小さくしたり、本文を削って対処し、本文が1ページ目で終わるように調整しましょう。逆に本文の分量が足りない場合は、文字をやや大きめにしたり行間を広げたり、関連する写真や図版を張り付ける方法を採ります。
6.1枚目の末尾には問い合わせ先を明記
リリースの1枚目の最後の部分には、そのリリース内容に関する問い合わせ先を入れます。問い合わせ先に入れる項目は連載の第6回で紹介しましたが、問い合わせを受ける部署、担当者名、電話番号、電子メールアドレスなどです。通常は、四角い枠で囲っておきます。
そして、別紙がある場合は、本文の最後や欄外に小さな字で以下のような注釈を加えます。
※製品の詳細なスペック、写真、会社概要は別紙をご参照ください
紙に印刷する場合は、メールやブラウザのように相手先の環境に左右されないので、文字の大きさや字体を自由に選べますから、できる限り見やすくなるよう工夫してください。
一度フォーマットを作ってしまえば、2回目からはその上にリリース文書のテキストを上書きすれば済むので、最初のレイアウトはしっかり作りたいものです。
7.補足的な要素は別紙に記載。写真やCD-ROMの同封も効果的
2枚目以降の別紙の内容に関しては第6回で説明していますが、別紙はわかりやすさと見栄えの良さを重視して、写真や図版を交えながら自由にレイアウトして構いません。ただし、ある程度1枚目とのバランスを考え、異様に文字が大きかったり、あまりに遊びの要素が多かったりするものは避けます。
写真や図版は、郵送する場合は印刷物を付けたり、データを入れたCD-ROMを同封すると親切です。商品やサービスのリリースならば、カタログやチラシを同封してもいいでしょう。
今回は、新聞や雑誌向けに、リリースを紙に印刷して郵送したりFAX送信したりするためのカスタマイズを紹介しました。次回は、Webサイトで公開したりメールで送信したりする場合について考えてみたいと思います。
- リリースには配布・公開時の用途に合わせたカスタマイズが不可欠。新聞社やIT関連以外の雑誌社に送るなら基本は紙のリリース
- すでにあるテキストベースの原稿を効果的に活用し、それぞれの特性に合ったカスタマイズを心がける
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