この連載では、主に企業の広報担当者に向けて、初めて書く人でもわかるリリースの書き方から、ネット時代に即したリリースの書き方など、明日から役立つ基礎情報をお届けします。リリースを構成する見出しやリードまでは前回、前々回に解説しました。今回はリリース本文の書き方やリリースに加える要素について取り上げます。
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第5回までの連載で、見出しやリードの書き方は理解できたと思います。今回はいよいよ「本文」についてです。
連載の第3回でリリースを構成する重要な要素として「見出し」「リード」「本文」をあげ、逆三角形文体を説明しました(図1)。これらの要素の重要度は読み手の目に触れる順に、次のようになります
- 見出し
- リード
- 本文
本文は重要度では3番目にきていますが、リリースの内容を詳細に書き記さなければならない本文は、書く側にとっては最も手間がかかる部分になります。おさらいですが、本文では、まずはリードで書いた内容を詳細に述べ、次にそれに関する最重要の補足、重要な補足、補足とつなげていくのです。
リリースは最後まで読まれるとは限らない
今までの連載内で指摘しましたが、見出しとリードがそれなりにできていても本文に入ると突然レベルダウンするリリースが多く見受けられます。見出しやリードと違って書くべきことがたくさんある本文は、何から書き始めればいいのかわからないという状況に陥っていることが原因だと考えられます。しかし、ここで改めて念頭に置かなければならないことは、リリースは最後まで読んでもらえる訳ではないという事実です。最後まで読んでもらうことが当然だと考えているから、本文の始めに何を書こうか悩んでしまうのです。
どこで読むのを止められるかわからないことを前提にすれば、本文の最初に書くべき事柄はおのずと決まります。それはリリースの中で最も大事なポイントです。そもそも逆三角形文体は、読み手側に立ったときに途中で読むのを止めても重要なことが理解できるためのスタイルです。ですから、リリースの本文でいきなり会社説明や会社の現況、その製品・サービスの開発の背景や苦労話を書くのは間の抜けた話なのです。
本文ではまずリードの2番目の文を詳細に
新製品・サービスの発表であれば、リリースの中で最も重要な事柄はその新製品・サービスの最大の特徴です。競合製品にない独自の機能やその製品・サービスで一番アピールしたいポイントを訴求するのです。ですから本文では第5回の記事で説明した、誰が、何を、いつ、どこで、どうしたのか、といったリリースのポイントをリードの冒頭で伝えた後に書く、最もアピールしたい内容となります。つまりリードの2番目の文に関して詳細に書いていくことになります。
リードの2番目の文とは、たとえば次に示すような、最も訴求したい特徴を簡潔に記した部分にあたります。
△△は、従来になかった○○の機能を搭載したことが最大の特徴です
▽▽は、□□円の低価格を実現しました
そのリードを踏まえ、本文ではもう一歩踏み込んだ説明を補足します。前者なら「従来になかった○○の機能」について、その内容やメリット、活用法などを詳しく記します。後者なら、一般的な相場や同様機能を持つ他の製品と比べ、どの程度低価格なのかを訴えるのです。
さらに特徴がある内容があればそこに続いて
製品にいくつもの特徴があるのならばリードで3番目の文を書いているかもしれません。その場合は、その詳しい説明を本文に続けて記します。リードの3番目の文には、その新製品・サービスで2番目に強調したい特徴を書いておくことが一般的です。「見出し」「リード」「本文」を通じて、リリースで訴えたい大切な事項を徐々に詳細に書き記していくと考えればわかりやすいでしょう。訴求点について、短い言葉の見出し、簡潔な文章のリード、そして本文で詳細な説明を施す、という一連のパターンで考えるのです。
繰り返しますが、本文の最初に会社概要や開発の背景などを書くのはNGです。重要な事柄を型にはまったスタイルで書き記すことが最も効果的なリリースになります。
補足説明などは最も訴求したい特徴のあとで
本文で最も訴求したい特徴の説明が終わったら、さらにその次にアピールしたい点や補足説明を書きます。ここで開発の背景や苦労話を入れてもいいでしょう。その新製品・サービス開発に至るまでの経緯や、新製品・サービスのベースになった従来製品・サービスの説明など、リリースの主役である製品・サービスに関わるサイドストーリーを付け加えるのです。
ビジネスで人を紹介するケースに置き換えて考えてみて下さい。通常、誰かに人を紹介するときは、まずその人の仕事の内容や役職、これまでの職務経歴などを重要な順に伝えますよね。これがその人のビジネスに関する特徴として訴えるべきポイントです。年齢、出身校、趣味、出身地というサイドストーリーはその後になります。
リリースの分量はA4の紙1枚程度
第4回の記事で、リリースはWordをはじめとしたワープロソフトで1ページ分、A4の紙1枚として書くと解説しました。分量の制限なくダラダラと長くなってしまう事態を避けるためです。冗長なリリースは読み手に嫌われ、もちろん最後まで読んでもらえません。リリース本文で書きたいことがたくさんあっても、そこは我慢です。多少文字を小さくして文字数を調節してもいいので、とにかくA4の紙1枚程度を厳守するように心掛けましょう。誰もが苦痛なく自然に読めるようにコンパクトにする目的に加えて、そのリリースを印刷する可能性も考えられるからです。
A4の紙1枚程度というと当然伝え足りない事柄も出てくるでしょう。その場合は「別紙」という形でリリース本文を補足する内容や書き切れなかったことをまとめる方法を採ります。紙で考えると「別紙」になりますが、Webベースだと「別項」や「別ページ」という表現を用います。リリースで取り上げた製品・サービスの写真や説明用の図版、詳細な料金表、スペック、本文で使った専門用語の解説文、関連する製品・サービスの紹介などの補足事項をまとめます。
リリースの1枚目は見出し、リード、本文といった文章中心のキッチリとしたフォーマットにまとめますが、2枚目以降の別紙や別項は図版を交えて自由にレイアウトしても問題ありません。伝えたい項目が多数ある場合は、別紙や別項が増えてもいいでしょう。ただし、その場合でも重要な項目は別紙や別項の前の方に入れるようにするべきです。また、リリースの本文の最後や欄外に「製品の詳細なスペック、写真、会社概要は別紙をご参照ください
」などと注釈を入れておくと、そのリリースに別紙・別項が存在することがわかって読み手にとって親切です。
リリースの本文は読み物風の体裁で
PowerPointなどのプレゼンテーションソフトで作った資料をそのままコピーしたかのような箇条書きと、その項目に対応する説明が淡々と書かれているリリースをを見たことはないでしょうか。たとえば、次のようなものです。
この製品の特徴は以下の通りです。
- ○○に対応した
- □□の機能を加えた
- △△の低価格を実現した
(1)については~~~~。(2)については~~~~。(3)については~~~~となっています。
確かにその製品の特徴はわかります。この(1)(2)(3)が訴えたい順番だとするならば、重要なことから書くというリリース本文の書き方の原則にもかなっています。
このような手法が不可かと問われれば、必ずしもそうだとは言い切れません。しかし、内部のプレゼンテーション資料をそのまま転用したことが明らかですし、一般的な文章に直した方が読み手にとってもわかりやすいリリースになります。
記事にしてもらうためにマスコミにだけ向けたリリースなら問題ないかもしれません。しかし、一般消費者にも向けてWebサイトやメールで幅広く情報発信するのなら、リリースは読み物のような体裁を採った方が効果的だと考えられます。本文は文章にして書き、プレゼンテーションの資料のような内容は別紙や別項に設けるという方法もありでしょう。
見落としやすい会社概要や問い合わせ
リリースで必ず入れておかなければならない要素として、会社概要があげられます。リードの書き始めに会社名と簡単な本社所在地、代表者の氏名は書きますが、それとは別に一目でその会社の概要がわかるように項目別にまとめます。
- 正式な会社名
- 所在地
- 代表者氏名
- 事業内容
- 資本金
- 従業員数
- 電話番号
- FAX番号
- 電子メールアドレス
- WebサイトのURL
Webサイトの会社概要に書かれている内容の簡易版だともいえます。特に忘れてはいけないのが事業内容です。会社概要に事業内容を書いていないリリースも少なくありませんが、事業内容は必ず入れるべきです。事業内容をしっかり記しておかないと、何をしている会社なのか読み手にわかってもらえませんし、マスコミが記事にするときにもどんな会社かがわからず取り上げてもらえなくなる可能性があります。会社概要は、別紙や別項に枠を作って織り込むといいでしょう。
もう1つリリースに必須な要素が、報道関係者からの問い合わせ先です。そのリリースを読んだマスコミ関係者が内容についての質問や問い合わせをする場合の連絡先です。
- 問い合わせを受ける部署
- 担当者名
- 電話番号
- FAX番号
- 電子メールアドレス
- 受付時間
- 一般消費者向けの問い合わせ先情報
最近では、連絡先として電子メールアドレスだけを記したリリースもありますが、電話番号は必ず入れるようにしましょう。回答がすぐにほしいマスコミ関係者からの問い合わせは、基本的に電話対応になるからです。
また、マスコミ向けとは別に、一般からの問い合わせ先も書いておく必要があります。マスコミが記事として取り上げる際に一般向けの問い合わせ先を掲載してくれるケースがあるほか、サイトでリリースを読んだ一般消費者が問い合わせしたい場合に利用しやすいからです。問い合わせ先は、会社概要とは異なり、別紙や別項ではなくリリース1枚目の最後に別枠で記載すると目に付きやすく効果的です。
リリース作成時の具体的ノウハウはここまでです。これでリリースのフォーマットは完成するのですが、発信方法によってはこれらのリリースのカスタマイズも必要になります。次回はその活用法に関して説明します。
- リリース本文はどの部分で読み捨てられても要点が掴めるように、常に重要な項目を先に書く
- A4の紙1枚を目安に自然に読める文章量を心がける。読み物風の体裁が効果的
- 会社概要や問い合わせ先は読者やマスコミをつなぎとめる重要なポイント。記載漏れがないように注意する
ここまで「ニュースリリースの書き方&活用基礎講座」を読み進め、リリース作成の基本は一通り掴めてきたところだと思います。ただし、それでも気になるのが「本当にこのリリース文で大丈夫なのか?」という点ではないでしょうか。そこで、本コーナーの著者である山川氏協力のもと、リリースを添削してほしいという方を募集します。今回は、これまでの連載で触れた基本であるA4用紙のリリースを想定して募集します(分量に制限はありません。別紙・別項が付いていても構いません)。
添削をご希望の方は、今までの記事を参考に作成したWord形式などのリリースを、下記にある応募方法を参照のうえ、実際にリリースを配信するのと同じようにメールにてお送りください。リリースは過去に発表したものでも、今回の応募にあわせて作成するものでも構いません。
以下の必要事項を明記したメールに、WordやPDFなどの添削用リリース原稿を添付して応募先のメールアドレス宛てにお送りください。
・会社名:
・メールアドレス:
・リリース内の社名、製品・サービスの実名公開の可否:
宛先:web-tan@impressrd.jp(メーラーが起動します)
件名:「リリースの書き方基礎講座 リリース添削係」
添削希望リリースの応募は締め切らせていただきました。後日、連載内で添削記事として公開する予定ですのでお楽しみに。皆さまのご公募ありがとうございました。(編集部)
※リリース添削に関する注意事項
- 応募多数の場合は編集部・著者が判断したものを採用させていただきます。
- 特に指定がない場合、添削したリリースは社名やサービス名を伏せた状態で連載内の記事として活用させていただきます。
- Web担編集部による添削内容の個別対応・コンサルティングは致しかねます。
- いただいた個人情報はインプレスビジネスメディアにて管理し、リリース添削の問い合わせにのみ利用させていただきます。ただし、リリース内に記載のある情報に関しては添削作業の関係上、著者である山川氏とも共有させていただきます。
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